【普及奨励事項】
水稲「空育87号」に関する試験成績
昭和39年〜45年
中央農試稲作部 育種科
担当責任者 森脇良三郎

・ 来 歴
 組合せ:ユ−カラ×ささなみB1
 中央農試稲作部において昭和39年度交配以後同所において世代促進法集団育種法により養成F5以降系統栽培に移して選抜育成された。

・ 特 性
 長所
  1. 早生、良質で中晩生種並の収量性がある。
  2. 初期分けつ力旺盛で、穂数の確保が容易である。
  3. 倒伏抵抗性およびいもち病耐病性が優れている。
 短所
  1. 耐冷性障害型が中程度である。
  2. 多肥栽培で登熟が低下しやすい。
品  種  名
/形  質
空育87号 対象
ひめほなみ
比較
そらち
比較
ほうりゅう
比較
栄 光
早 晩 生 中生の早 中生の晩 中生の中 中生の中 中生の中
草    型 短 稈 短 稈 ヤ短稈 中 稈 中 稈
穂数型 穂数型 穂数型 穂数型 偏穂数型
出 穂 期 8月7日 8月12日 8月11日 8月9日 8月11日
稈    長 62cm 67cm 69cm 74cm 74cm
穂    長 16.9cm 15.4cm 17.4cm 16.7cm 17.1cm
穂    数 22本 24本 23本 21本 20本
茎の多少・長短 極稀極短 7短
ふ 先 色 黄 白 黄 白 黄 白 暗 褐 黄 白
脱 粒 性
耐倒伏性 ヤ強 ヤ弱 ヤ弱
葉いもち病耐病性 ヤ強 ヤ弱 ヤ弱
穂いもち病耐病性 ヤ強 ヤ強 ヤ弱
耐冷性(障害型) ヤ弱 ヤ弱
a当り玄米重 54.1kg 51.9kg 52.4kg 52.7kg 50.7kg
玄米千粒重 23.3g 20.8g 22.4g 21.7g 21.1g
玄米品質 上下 上下 上下 上下 上下
食    味 ヤ良 ヤ良 ヤ良 ヤ良 ヤ良
調査地および調査年次 中央農業試験場稲作部 昭和43年〜45年の3ヶ年

空育87号
の特記す
べき特徴
 品質・食味が「ほうりゅう」並に良好であり、いもち病耐病性と倒伏抵抗性も強い部類に属する。
 熟期は中生の早であるが収量性が高く、同熟期の品種に対して多収であるばかりでなく、道央
地帯の中晩生種と比較しても、普通肥条件で同等以上の収量性を示す。
 草姿は短稈穂数型、初期分けつ力が旺盛で穂数の確保が容易である。
適応地帯
ならびに
普及見込
内訳面積
 熟期、耐冷性、品質および収量性などの特性からみて、空知・石狩・後志・胆振・日高の各地域
における中生種として適し、これらの地帯において約2000haを見込む。
 ・ひめほなみ−(昭和45年度作付面積15.000ha)対象15.000ha
 ・ そらち   −(昭和45年度作付面積23.600ha)対象5000ha
道央部に
奨励する
理由
 道央部には「ひめほなみ」「そらち」などの中晩生種の作付けが多い。
 質の向上が望まれている近年、特に生育遅延年におけるこれら中晩生種の品質の低下が問題
視されている。
 空育87号は熟期が早く品質良好、さらに中晩生種並の収量を期待できるので、問題の多い中晩
生種に代えて作付けすることにより、当該の向上と稲作の安定化を図ることが有能である。
栽培上の
注意
 空育87号は普通肥条件で穂数、籾数を十分確保する能力があり、中晩生種並の収量を上げて品
質面でも優れているが、多肥栽培では登熟が低下し、ひいては品質にも悪影響を与える。
 また障害型冷害に対しても十分な抵抗力を有していないので、施肥量については十分な注意が必
要である。
 空育87号は初期分けつが旺盛であるが、疎植多肥栽培では本品種の特徴が発揮されないから、
栽植密度についても配慮が必要であり、分けつ力に頼らないことが肝要である。