【指導参考事項】
道南地方の水稲に対する9号台風の影響とその被害籾の発芽、苗立について
道立道南農試 作物科

・ 目 的
 出穂直後、潮風害を受けた籾の品質並びに発芽、苗立に及ぼした影響とその効果

・ 試験方法
 供試材料  潮風害を比較的強く受けた場所より採取(海岸よりの距離別)
         出穂期 8月10日前後と推作される南栄
 品質に及ぼした影響の調査 登熟歩号、等級、米質
 発芽・苗立  〃        苗代で発芽、苗立について調査
    ハウス(暖房、熱線使用)利用 12月4日播種
    試験区別 比重選別(5) 場所別(海岸からの距離8) 種子の洗条(2)
           催芽の程度(2) 育苗中の温度(2) 45年産採種圃(21点)

・ 試験成果の概要
 被害の概況  潮風害(9号台風)は外面的には籾の白化、黒変籾を増加させ葉身に白化
           黒変裂傷害を与え、登熟歩号を阻害し品質を低下させた。叉種籾としては
           発芽能力を低下させた。 
 1. 品質に及ぼした影響
    黒変籾は1.5km、白化籾は3kmまで強く影響し、登熟歩号、千粒重を低下させ、着色米を増加させ品質の低下をまねいた。その程度は海岸より4〜5kmまで影響し、海に近い程被害程度は強かった。
 2. 発芽、苗立に及ぼした影響
    潮風害を受けた籾は発芽、苗立が若干低下した。
 3. 潮風害を受けた種籾の発芽、苗立の向上
  1) 白化籾の発芽は悪く、黒変籾はその影響が少ない。
  2) 水選程度の粒選では発芽は悪く、比重1.06以上必要と思われた。
  3) 種子面の洗条効果は認められなかった。
  4) 種子の催芽は必要である。
  5) 育苗中(発芽当時)は出来るだけ高温(30℃)にすべきである。
従って次年度の潮風害を受けた種子の育苗は比重選を強く、催芽を充分を行って、高温で育苗する必要がある。   

・ 主要成果の具体的デ−タ
 品質に及ぼした影響
NO 海岸から
の距離
(km)
白化籾
(%)
黒変籾
(%)
登熟
歩号
屑米
歩号
着色
(紅)
黒変 奇型 玄米
等級
搗精
歩号
白米
等級
1 1.0 4.0 96.0 55.9 3.5 7.2 0.4 2.5 等 外 88.9 規格外
2 1.5 46.0 54.0 55.9 2.9 57.6 5.0 5.2 規格外 69.6
3 1.5 70.0 10.0 58.3 2.7 63.4 2.9 4.6 88.6
4 2.0 67.0 3.0 60.1 4.7 11.4 1.1 1.7 88.5
5 3.0 60.0 2.0 76.2 5.0 8.9 0. 2.0 89.0
6 4.0 19.0 7.0 81.1 3.2 7.5 0.4 2.7 5下 90.0 2
7 5.0 12.0 5.0 88.4 4.1 5.9 0 0.8 89.1 2
8 7.0 3.0 0 79.0 3.4 2.9 0 0.8 4中 89.1 2

 比較による効果(苗立割合)
NO 〜1.00 〜1.06 〜1.08 〜1.10
1 57.1 85.0 94.0 94.9
2 73.0 91.0 92.0 95.0
3 58.0 84.0 86.0 70.0
4 58.0 96.9 95.9 96.0
5 77.0 88.0 88.0 90.0
6 85.0 82.0 81.0 80.0
7 62.0 94.9 89.9 98.0
8 97.0 95.9 97.0 98.0
2-A 82.8 91.0 91.0 90.0
2-B 69.0 100.0 95.9 96.8

 育苗中の温度と催芽程度
  催芽
程度
NO/項目 苗立歩号 草丈 乾物重



2-A 86.9 15.5 2.50
2-B 98.0 16.2 2.52
8 95.0 16.2 2.63

2-A 95.0 16.2 2.37
2-B 96.0 15.1 2.50
8 98.0 15.8 2.51



2-A 61.0 8.0 2.10
2-B 83.5 10.5 2.50
8 92.5 9.0 2.29

2-A 71.0 8.2 1.76
2-B 85.4 7.8 1.90
8 71.1 7.5 2.16
  (備考) NO海からの距離 2-A(白化籾)  2-B(黒変籾)

・ 普及上の注意事項
 1. 潮風害を受けた種籾は予め発芽試験を行うこと。
 2. 比重選を充分(1.08以上)に行い、確実に催芽を計ること。
 3. 育苗中、特に発芽揃までは高温(30℃)にする。− 二重被覆の利用 −晴天高温日は二重被覆の除去