【指導参考事項】
寒冷地畑作物の生育促進に関する試験成績
D. 小豆
(昭和43〜45)

・ 目 的
 小豆のマルチ栽培法を確立する。

・ 試験方法
  昭43 昭44 昭45
マルチ資材の
選定と処理期間
ポリマルチ…処理期間
        第3本葉展開まで
        開花始  〃
        成熟期  〃
液体マルチ
    エンキャップ 第3本葉展開
    エルビ−ル     〃
A. ポリマルチ


透明
黒色



×


無孔
有孔
スリット



 液体マルチ モビニ−ルM165
   同DM10   同#100
   カルボキラメチルセルロ−ズ
B. ポリマルチ


透明
黒色



×


本葉3葉
開花始
成熟期



 
ポリマルチ(透明)
モビニ−ルDM10 5kg/a
モビニ−ル#100
        5kg/a  25cm巾
        2.5kg/a   〃
        2.5kg/a 125cm巾
        2.5kg/a +カ−ボン 〃       
マルチと
播種期



無マルチ
マルチ






5月上旬播種
 〃 中 〃
 〃 下 〃






無マルチ
透明マルチ
黒色マルチ



×


5月上旬播種
 〃 中 〃
 〃 下 〃






5月上旬播種
 〃 中 〃
 〃 下 〃






無マルチ
マルチ






無防除
タチガレン2kg/a



マルチと
施肥法
標肥    作條施肥  株間
5割増肥  全面全層  20cm、15cm
同 左  
マルチと
除草剤
MCC、リニュロン、DCMu
MCC混入
リニュロン、プロメトリン
黒色マルチ
リニュロン、プロメトリン
RH-315T

・ 試験成果の概要
 1. 地温上昇効果  透明マルチ≫液体マルチ>黒色ポリマルチの順であるが、透明ポリマルチは処理後日数が経つと効果は低下してくる。
 2. 土壌水分保持効果  黒色ポリマルチ>透明ポリマルチ>液体マルチ
 3. N流亡防止効果  透明ポリマルチ≫液体マルチ
 4. 播種期と処理  各播種期の透明ポリマルチはいづれも無処理に対する増収効果が高いが、収量からみて5月中、下旬の播種期における処理が多収を示している。
 5. 処理期間  本葉第3葉展開期、開花始、成熟期までの各処理でいづれも増収効果に大差がなく、第3葉展開期処理までで初期生育の促進と生育量の増大をはかればよい。
 6. 施肥、栽植密度、無マルチの施肥量、施肥法、株間による収量の変動は殆どなく、5割増肥、全面施肥、株間15cm、マルチ処理によって多数を示すことはマルチ処理のみの効果と考えられる。
 7. マルチと除草剤  マルチ下除草剤としてはプロメトリンがリニュロンにまさって効果を示す。
 8. 液体マルチについては資材、処理量について更に継続検討の必要がある。
 9. 排水不良地における立枯症はマルチ、無マルチ共に発生し、マルチ条件でやや多発の傾向がある。この対策については更に検討の必要があると考える。

・ 試験成果の具体的デ−タ
 無マルチの5cm深平均地温(℃)に対するマルチの地温較差(℃)
年次 区別 5月中旬 5.下 6.上 6.中 6.下 7.上 7.下
昭44 無マルチ 11.8 8.8 9.9 15.9 18.4 18.4 20.1
ポリマルチ(透) +4.0 +3.3 +2.3 +3.3 +2.4 +2.2 △0.2
M#100 +2.2 +2.4 +1.2 +1.2 +1.2 +0.9 +2.3
昭45 無マルチ 14.2 16.7 18.0 18.1 20.2 19.1
ポリマルチ(透) +3.5 +4.0 +2.3 +1.7 +0.8 +0.9
M#100 +1.5 +1.8 +0.8 +0.9 +0.6 △0.1

 Tat−N mg/100g乾土(昭45)
  6月6日 6月23日 8月13日
無マルチ 5.79 3.80 0.70
ポリマルチ(透) 7.78 10.82 4.74
M#100 6.27 5.29 0.68

小項目 区  別 発芽期
(月日)
開花始
(月日)
成熟期
(月日)
草丈
(cm)
莢数
(コ)
a当り
子実重
(kg)
同比
(%)
備 考
マルチ資材
の選定
無マルチ 6.14 7.29 9.12 41.4 26.9 18.1 100 昭44〜45
2ヶ年平均
(光小豆)
ポリマルチ(透) 6. 1 7.22 9. 5 45.7 38.4 28.8 154
M#100 6.10 7.26 9.10 37.7 38.2 25.7 142
マルチの
処理期間
無マルチ 6.18 8. 1 9.20 45.2 41.2 22.7 100 昭43〜44
2ヶ年平均
(光小豆)
マルチ第3本葉 6. 6 7.25 9.10 52.8 46.7 32.1 141
 〃  開花始 6. 6 7.25 9.10 58.2 47.4 33.6 148
 〃  成熟期 6. 6 7.25 9. 9 58.4 43.7 34.4 151
マルチと
播種期
5.上無マルチ 6.11 7.29 9.13 37.1 26.6 18.5 100 昭43〜45
3ヶ年平均
*昭45ヘト
により減収
(光小豆)
 〃  マルチ 5.28 7.23 9. 5 48.9 34.6 19.3* 104*
5.中無マルチ 6.14 7.31 9.15 41.1 27.2 18.8 100
 〃  マルチ 6. 3 7.25 9. 8 46.4 30.9 23.4 124
5.下無マルチ 6.17 8. 1 9.15 43.2 23.8 18.5 100
 〃  マルチ 6.11 7.30 9.11 48.2 34.4 22.7 122
マルチと施肥 標作條×20×1.5標×1.5 6.18 8. 1 9.19 49.3 39.8 28.7 100 昭43〜44
2ヶ年平均
(光小豆)
全面マルチ 6. 8 7.24 9.13 57.7 34.1 34.6 121

マルチと
除草剤
  昭44 昭45
雑草重
(g)
対マルチ比
(%)
雑草重
(g)
対マルチ比
(%)
リニュロン 246 32 561 96
プロメトリン 71 9 404 69


雑草重:マルチ1m2当り
対マルチ比:マルチ無散布区対比

・ 指導普及上の注意事項
 1. 施肥は慣行の5割増とし、全面全層施肥が望ましい。
 2. 砕土、整地をていねいにし、除草剤を散布後マルチを設置する。マルチ資材としてはポリシ−ト(9215)がよい。
 3. マルチ後、ホ−ル部に播種する。
 4. マルチ、播種の時期は慣行の播種期に準じてよく、処理期間は第3本葉展開期まででよい。
 5. マルチ設置はマルチャ−により省力化できる。
 6. 排水不良地での小豆のマルチ栽培はさける。