【指導参考事項】
てん菜の多収要因解析と生産改良に関する試験
(昭和43〜45年)
天北農試

・ 目 的
 てん菜生育経過を追跡して、気象と生育、糖分蓄積の関係を究明し、また、牧草跡地における高糖栽培技術を確立するため、耕鋤時期、施肥量を検討し、さらに、前作牧草の栽培条件に対する跡作てん菜の生育ならびてん菜根の非糖分について検討すると同時に育苗法の差異が本圃の生育に与える影響についても検討する。

・ 試験方法
  試験1. 直播、移植栽培におkる品種の生育特性(昭43)
    供試品種:てんけん1号、KWS-E(比較)
    供試圃場:普通地(直播)、牧草跡地(移植)
    調査方法:葉重、根重、根中糖分を8月19日より10日ごとに10月20日まで調査
  試験2. 移植栽培における土壌条件と生育(昭44・45)
   昭和44年
    供試品種:KWS-E(移植)
    供試圃場:造成後9年目の採草用草地で生産力は中位、植生も比較的良好
    試験区  :耕鋤時期843年9月、10月、44年4月)、牧草根切断処理(有無)、施肥量(無肥、標肥、培肥)
   昭和45年
    供試品種:KWS-E(移植)
    供施品種:アカクロ−バ、オ−チャ−ドグラス、チモシ−の各3品種を標肥、多肥の条件で3年間栽培した跡地を利用
    試験区  :てん菜栽培条件として、無肥、標肥区を設定
  試験3. 育苗法と本圃環境条件との関係(昭43〜45年)
    供試品種:KWS-Mono polybeta
    試験区  :(1) 慣行育苗(ビニ−ルトンネル育苗)……標準、晩植、晩播晩植
           (2) 簡易育苗(紙筒の播種面にビニ−ルを被覆、発芽後除去)……標準、晩植、晩播晩植
           (3) 直播


・ 試験成果の概要
 試験1. 直播 移植栽培における品種の生育特性
  ① 直播 移植ともてんけん1号の収量はKWS-Eより劣る傾向にあった。
  ② 根部重の増加は平均気温が平年値を下回った8月下旬から9月上旬にかけて根部の肥大は停滞気味となり、増加量は少なかった。
  ③ 根中糖分の蓄積は日照と深い関係にあり、品種の特性は十分な日照条件下で発現された。
  ④ てんけん1号はKWS-Eにくらべ移植区において根重増加に伴う糖分増加の高いことが示された。
 試験2. 移植栽培における土壌条件と生育
  44年:
  ① 牧草跡地の耕鋤時期が異なることによって、移植時における牧草根の露出程度は異なり、前年9月の耕起でもっとも少なかった。生育および収量は施肥量と平行的な関係にあったが、耕鋤時期との関係は判然としなかった。
  45年:
  ① 牧草跡地の土壌分析の結果、加里、ナトリウムについては差は認められなかったが、無機態−NおよびP2O5はマメ科跡地で多く、イ:イネ科跡地で少なかった。
  ② てん菜栽培時の無肥区においては前作の影響が顕著で草丈、葉重、根重はマメ科跡地がイネ科跡地よりまさった。
  ③ てん菜根の非糖分のうち有害性−Nおよびナトリウムはマメ科跡地で多く、イネ科跡地では少なく、その差はてん菜栽培時の標肥区で顕著であった。
 試験3. 育苗法と本圃環境条件との関係
  ① 移植時における簡易育苗区の苗は、慣行区の苗にくらべ、葉身長、葉柄長、根長は劣ったが、乾物率、葉身長/葉柄長、地上部乾物重/草丈などはまさった。
  ② 活着および生育状況は簡易育苗の苗が活着は平均4日早く、植え傷みも全くなかった。
  ③ 移植後における乾物率の推移をみると、慣行区の苗では移植後の萎凋が甚しく、乾物率の上昇は簡易育苗の苗より大きかった。

・ 主要成果の具体的デ−タ
 試験2. (昭45)
項目/
跡地
収量 (kg/a) 非糖分 (mg/100g)
葉重 根重 有害性−N Na
無肥 標肥 無肥 標肥 無肥 標肥 無肥 標肥
マメ科 227 440 279 408 8.45 28.29 13.5 34.5
イネ科 121 338 219 406 5.85 13.85 7.5 16.3

 試験3. 3(3ヶ年平均)
項目/
処理
収量 (kg/a) 根中糖分
(%)
葉重 根重
慣行育苗 382 408 16.9
簡易育苗 365 388 17.0
直  播 321 329 16.9

・ 指導参考上の注意事項