【指導参考事項】
(総)てん菜の多収要因解析と生産改良に関する試験
(1) 生育期間延長による増収技術の確立試験
(てん菜の秋施肥による早播栽培に関する試験)
(昭和41〜45年)
北見農試・網走中部農改・ホクレン(中斜里)、南網走農協

・ 目 的
 春の作業の競合を緩和し、可能な限り早播する一つの手段として年間初冬(11月)に施肥した場合のてん菜生育、慣行の春施肥と比較検討して秋施肥による早播の効果をみる。

・ 試験方法
 1) 秋施肥による早播栽培
  (1) 農試ほ場試験 41、44、45年
      慣行春施肥標播と秋施肥早播の比較 r=4〜2
  (2) 現地試験〜1 45年 1ヵ所 3戸 1区10a 反復なし
  (3)   〃   〜2 40〜42年 1ヵ所 1区10a   〃
 2) 秋施肥と春施肥の比較
  (1) 農試ほ場試験 41〜44年 5処理 r=4  45年3×3処理 r=3
  (2) 現地試験〜1  43〜44年 6処理 r=4
 3) 秋施肥の施肥位置 肥料要素の移動(現地ほ場で44〜45年)

・ 試験成果の概要
 (1) 秋施肥早播
  農試ほ場では5〜8日の早播ができて収量は慣行春施肥と同じか5%程度多く、根中糖分も同じかやや高かった。現地では8〜13日の早播で7〜20%増収、3〜4日の早播と2割増肥で10%の増収であった。
 (2) 秋施肥と慣行施肥の比較
  播種期を同じにした農試ほ場では全量秋施肥が5%以内の減収現地ほ場では3〜4割増肥で7〜8割初冬、2〜3割の春施用がよかった。
 (3) 秋施肥の施肥位置と肥料要素の移動
  肥料要素の移動はNとK2Oが大きいが、化成肥料は翌春まで約半量が施肥した深さに残存し、残りもほとんど30cm以内にとどまった。また、単肥より化成肥料の移動少なく、施肥位置は深さ10cm程度がよい。
  以上のことから春の農作業競合による播種おくれを少なくし、風害軽減にも役立ち秋施肥による早播は収量も慣行春施肥より、多収傾向があるので網走市南網走農協区域とこれに類似の斜網栽培に適用して良いと考える。

・ 主要成果の具体的デ−タ
 1) 秋施肥による早播栽培法試験(農試ほ場 昭41・44・45年)
区 別 昭41 昭44 昭45
播種 菜根重 播種 菜根重 糖分 播種 菜根重 糖分
春施肥標播 5.1 3259 (100) 16.4 5.6 4043 (100) 16.2
秋施肥早播(平畦) 5.2 3922 4.28 3248 (100) 16.6 4.27 4323 (107) 16.6
   〃   (高畦) 4.26 3618 (112) 16.6
   〃標播 5.10 3651 5.6 3875 (90) 16.3
  注) 施肥量各区同じ 播種は月日、菜根重はkg/10a、糖分は根中糖分(冷浸法)

 2) 秋施肥早播栽培(現地〜1、網走市音根内 農家ほ場3戸45年)
区 別 施肥量 kg/10a
N-P2O5-K2O
播種期 菜根重 kg/10a 根重比
A B C A B C
直播慣行 春 14.6-24.4-14.6 4.26〜4.27 4716 5103 4600 (100) (100) (100)
秋施肥早播 秋 9.8-17.8-10.2 4.23〜4.25 5031 5616 5094 107 110 111
春 8-8-7.5

 3) 秋施肥、肥料要素の深さ別残存割合(%)
深さ
(cm)
単肥区 S242号区 S104号区
N
NH4+NO3
可給態
P2O5
置換性
K2O
N
NH4+NO3
可給態
P2O5
置換性
K2O
N
NH4+NO3
可給態
P2O5
置換性
K2O
0〜5 0.3 0.0 0.0 0.4 0.0 15.4 1.3 0.0 0.0
5〜10 0.5 1.9 0.0 0.3 4.0 18.3 1.3 2.6 5.2
*10〜15 20.2 131.8 55.2 60.0 101.8 180.3 52.3 426.1 127.4
15〜20 35.6 0.0 67.4 29.0 0.0 35.4 25.7 0.0 51.1
20〜25 22.1 1.1 31.5 21.0 1.0 0.0 23.5 1.5 27.2
25〜30 26.9 0.7 5.8 16.0 1.6 0.0 16.9 0.0 0.0
105.8 135.5 159.9 126.8 108.2 249.5 121.0 430.2 210.8
  注) *施肥層を示す

・ 普及指導上の注意
 1) 網走南網走農協区域と類似の斜網地帯に適応する。
 2) 春施肥融雪水の流れるほ場はさけ融雪の早い平坦地であること。
 3) 初冬施肥の時期は11月中旬以降、使う肥料は硝酸態窒素を原料としない化成肥料を用いることとし、施肥位置は深さ10cm程度であって実際の作業は慣行の条施の方法でよい。
 4) 施肥量は20〜30%増とし標準量を秋に、増肥分を春施用するが、全量を初冬に施用する。ただしチリ硝石は間列後分施とする。
 5) 播種は可能な限り早くする。