【指導参考事項】
てん菜生育特性と多収要因解析試験
(てん菜移植栽培における土壌条件と生育解析)
(昭和43〜45年)
道立中央農試畑作部2科 (北村 亨)

・ 目 的
 てん菜の生育に関係する土壌条件について、とくに土壌水分の効果に重点を置いて解析し、効果的な水分調整法を明らかにするとともに、高畦栽培について、その好適土壌条件を知り、普遍的増収技術として確立するための資料を得る。

・ 試験方法
 畦 型−平畦、高畦
 被 覆−無処理、マルチ
 土壌水分条件−多湿区(pF1.5〜2.0)、標準区(pF2.1〜2.5)
            乾燥区(pF2.6〜3.2)
 面積および区制−1区10.8m2、枠試験1区制
 試験操作−枠の周囲地下40cmをビニ−ルで囲い、降雨はビニ−ルトンネルで防止する


・ 試験成果の概要
 (1) てん菜好適土壌水分域は、生育初期ではpF2.4(10〜15cm)中期でpF7、後期でpF2.3前後であった。
 (2) 土壌水分の調節は、初期で表層をpF2.4(マルチ下ではpF2.1)として、その後は、30cm位置でpF2.1程度に保持すれば増収効果を期待出来る。
 (3) 土壌水分のほかに、地温、土壌孔隙等の各要素が、生育量、養分収量におよぼす効果が認められ、高畦で土壌水分を好適条件に保持すれば、平畦に比べ14%の増収効果が得られた。

・ 主要成果の具体的デ−タ
月 日 7月8日 10月16日 7月8日 10月16日
項 目/
区 別








 平畦標準区 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100
 高畦多湿区 61 58 77 91 85 98 67 61 89 91 91 92
  〃 標準区 96 86 161 101 92 110 107 92 165 106 96 112
  〃 乾燥区 50 44 86 71 61 82 61 52 96 82 69 90
  〃 多湿マルチ 81 75 115 90 80 102 102 95 132 97 91 101
  〃 標準マルチ 89 74 178 98 82 115 117 93 211 106 94 114


 図1. 土壌水分と根重



 図2. 初期生育と土壌水分



 図3. 生育量と地温



 図4. 土壌孔隙と生育量

・ 指導上の注意事項
 (1) 土壌水分の管理は排水を十分にして、下層60cmまでの水分をpF2.0附近に保持するようにし、pF1.5以下にならないように留意する。
 (2) 多湿条件では高畦栽培した、土壌の物理性改善をはかるため、有機物等を導入し、地温上昇と孔隙量の増大をはかる。
 (3) かんがい栽培の場合は初期生育の地温低下に注意するとともに、必要以上の潅水はさける。