【普及奨励事項】
りんごの凍害防止に関する試験成績
−「ミツバカイドウ」台における接木部位の高低と凍害発生に関する試験−
昭和37〜45年
道立中央農試園芸部

・ 目 的
 空知以北地方において、りんご幼木主幹地際部が凍害によって裂傷剥皮され枯死するものが多く、増殖不振ならびに生産不安定の要因となっているので、その防止法を明らかにする。

・ 試験方法
 Ⅰ 凍害の実態調査
 Ⅱ 幼木管理方法と凍害発生に関する試験
  1) 植付法と2〜3の処理試験
    供試品種と樹令「旭」および「デリシャス」の各2年生
    試験区 (1)対照区(水平植)  (2)高植区(15cm)  (3)低植区(15cm)  (4)主幹被覆区
          (5)主幹にホワイトウオッシュ  (6)樹冠にホルモン剤散布(a-ナフタリン酢散ナトリウム200PPM)
  2) 主幹下部の保護試験
    供試品種と樹令「祝」および「旭」の各3年生
    試験区 (1)主幹地際部え土盛り  (2)主幹地際をもみ殻で保護  (3)主幹地際をもみ殻と土盛りで保護
          (4)対照区
 Ⅲ 中間台としての高耐凍性台木利用試験
  1) 台   木  ミツバカイドウ
  2) 中間台木  (1)「バ−ジニアクラブ」  (2)「エゾノコリンゴ」  (3)「ドルゴクラブ」の3種
  3) 穂品種    「旭」
  4) 方   法  ミツバカイドウ台木に中間台木を接ぎ、翌春伸長した中間台木を地上30cmの所で切り捨て「旭」を接木。
 Ⅳ 「ミツバカイドウ」台における接木部位の高低と凍害発生に関する試験
  1) 台   木  「ミツバカイドウ」
  2) 穂品種    「旭」
  3) 接木部位  (1)30cm高接  (2)60cm高接  (3)90cm高接  (4)対照(5cm接ぎ)

・ 試験成果の概要
 1. 主幹地際部の凍害発生の多少は園によって若干の差がみられたが、何れの園においても「旭」の被害が最も多かった。ついで「デリシャス」であり、「レッドゴ−ルド」の被害は少なかった。平均して「旭」48%、「デリシャス」39%、「レッドゴ−ルド」12%であった。
 2. 植付方法、主幹地際部の被覆、あるいは主幹下部の保護試験を試しみたが、何れの方法でも主幹地際部の凍害発生防止の効果は少なく、実用性がないものと考えられた。
 3. 中間台木としての高耐凍性台木の利用の結果について、「ドルゴクラブ」は凍害の発生はなかったが、ネクロシスの発生による樹の不揃、枯死が多く不適当と判断された。「エゾノコリンゴ」は凍害をうけ、さらにネクロシスの発生によって枯死するのもあり、実用性がないと考えられた。「バ−ジニアクラブ」は樹の発育、揃いも良好であり、穂品種(旭)の結果樹令への到達も早く、収量も多いとことなどを考慮した場合には利用の可能性も考えられるが、「ミツバカイドウ」と中間台の接木部位の材部の表面にピテングの発生が認められ、今後樹体にいかなる影響を与えるかについて検討する必要がある。
 4. 「ミツバカイドウ」の台は接木部位を30cm以上にすることによって凍害の被害は極めて少なく、しかも樹の生育、揃いも良好であることが明らかとなった。また接木部位を60cm以上にすると結果樹令への到達も早く早期多収が期待され、実用価値は高いものと判断された。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 中間台木として高耐凍性台木利用
中間台


(5
年)




(本)




(本)
調



(本)
地上
30cm

幹周
(cm)
接木部位


(cm)
開張  一※




(kg)
備考
10cmの下の
幹周(cm)
10cmの上の
幹周(cm)
東西 南北
バ−ジニアクラブ 5 9 1 8 22.0 21.0 16.6 35.9 254 319 4.6 ピテング
エゾノコリンゴ 5 9 2 7 17.9 17.1 16.4 34.0 239 239 1.2
ドルゴクラブ 5 9 6 3 15.2 15.6 13.3 31.0 200 208 0.6
対    照 5 9 0 9 17.5 20.7 18.0 32.2 261 241 0.6  
  対照区はミツバカイドウ30cmの高さに接木    ※ 樹令6年までの積算収量

 ミツバカイドウにおける接木部位の高低と生育凍害の関係
区 別


(5
年)




(本)
凍害樹


(本)
凍害の
被害度
調



(本)
地上
30cm

幹周
(cm)
接木部位


(cm)
開張  一※




(kg)




10cmの下の
幹周(cm)
10cmの上の
幹周(cm)
東西
(cm)
南北
(cm)
対  照 7 9 7 2 0 713.98 2 36.8 465 500 455 24.2
30cm高接 7 9 0 2 7 0.97 9 30.5 34.1 442 442 411 396 28.4
60cm高接 7 9 0 4 5 2.77 9 26.8 26.9 429 429 373 380 73.0
90cm高接 7 9 0 1 8 0.96 9 26.3 26.8 418 418 368 371 56.0

  主幹地際部から90cm上部までの主幹被害表面積  
被害度=
×100
主幹地際部から90cmまでの主幹全表面積
        ※ 樹令7年までの積算収量

・ 普及指導上の注意事項
 1. 凍害を受けやすい地帯では地上30cm以下に生じやすいので、凍害をさけさせるためには、「ミツバカイドウ」台の接木部位は地上30cm程度とする。
 2. 接木後に穂品種が風によって接木部位から折損のおそれがあるので、支柱などして苗木の動揺を防ぐ処置を行うこと。
 3. 適用品種は「旭」を主体とするが「旭」以外でも凍害に弱い品種に適用できる。