【指導参考事項】
キュウリの駒ヶ岳火山礫培地による養液育苗法試験
(苗生産安定に関する試験)
昭和43〜45年)
道立道南農試 園芸科

・ 目 的
北海道に広く分布する火山礫を養液育苗の培地として、果菜特にキュウリを中心とした瓜類の育苗に使用し苗生産安定に資する。

・ 試験方法
 1. 土耕との比較試験
  (試験1)
略 号 方法 培地温 培地
1. 土 20 土耕 20℃ 慣行床土
2. 火 15 養液 15 火山礫
3. ウ 15 ウレタンブロック
4. 火 20 20 火山礫
5. ウ 20 ウレタンブロック
  注) 播種3月16日 仮値3月23日 定植4月21日

  (試験2)
略 号 育苗場所 方法 培地 水地温
1. G 土 温室 土耕 慣行床土 20℃
2. G 火 養液 火山礫
3. V 土  ビニ−ルハウス 土耕 慣行床土
4. V 火 養液 火山礫
  播種3月3日 仮値3月10日 定植4月8日

 2. 育苗日数試験
略 号 方法 日数 培地
1. W 30 養液育苗 30 火山礫
2. W 25 25
3. W 20 20
4. S 30 土耕育苗 30 農試床土
5. S 25 25
6. S 20 20
7. STA 30 30 農家床土(高橋氏)
8. STu 30 30  〃    (対馬氏)
  播種   仮植   定植   密床
  3月1日  3. 6   3. 31  80×40
  3.  6   3. 11    〃    〃
  施肥(各試験共通)
   養液 1鉢当り培養液500cc(標準培養液)
   土耕(3.3m2)硫安100g 尿素40g
           過石200g 硫加80g


・ 試験成果の概要
 1. 火山礫(径1cm以内)を培地とした養液育苗の苗と土耕苗とを比較すると、やや葉色が黄色を呈し、表現型では、軟弱徒長気味な感じを受けるが、素質的には土耕苗よりすぐれている。
 2.  育苗日数を30日程度で本葉2.5〜3.0枚の苗とすると土耕苗に比べ5〜6日早まる。
 3. 養液育苗の苗は節成性が高く、収量も土耕苗と比べ高かった。この原因として定植時苗の体内成分の濃度が低いこと等があげられる。

・ 試験成果の具体的デ−タ
 1. 土耕との比較試験
  (試験1)生育と収量
項 目/
区 別
4月13日 4月21日(定植時) 5月9日(定植後18日目) 収量調査(11/5〜10/7)10株
草丈
(cm)
葉数
(枚)
草丈割合
(%)
草丈
(cm)
葉数
(枚)
地上部
重量
(g)
同割合
(%)
草丈
(cm)
同生長量
(cm)
個数
(ヶ)
重量
(kg)
重量割合
(%)
1果重
(g)
1. 土 20 7.7 1.6 100 10.1 2.4 6.4 100 107 100.6 78.5 11.3 100 144
2. 火 15 5.6 1.2 73 12.6 2.9 8.7 135 68.1 55.5 121.0 16.4 145 126
3. ウ 15 5.7 1.1 74 10.4 2.2 4.7 73 50.5 40.1 123.3 16.4 145 133
4. 火 20 8.2 2.0 106 29.7 3.8 17.2 270 90.0 60.3 168.1 20.6 182 122
5. ウ 20 8.2 2.0 106 25.7 3.1 10.6 166 75.8 50.1 118.2 16.7 148 141

  (試験2)生育と収量
項 目/
区 別
4月8日(定植時) 4月18日(10日目) 開花始 収量調査(11/5〜10/7)
草丈
(cm)
葉数
(枚)
地上部
重量
(g)
同割合
(%)
草丈
(cm)
葉数
(枚)
草丈
生長量
(cm)
♀花
(月日)
♂花
(月日)
個数
(ヶ)
重量
(kg)
重量割合
(%)
1果重
(g)
1. G 土 13.0 3.0 15.5 100 21.2 4.6 8.2 5. 4 4.28 103.3 13.1 100 127
2. G 火 25.0 4.0 21.5 138 32.9 5.4 7.9 5. 6 4.28 101.4 13.3 102 132
3. V 土  6.5 2.0 5.0 32 14.1 3.4 7.6 5. 8 5. 7 104.0 13.6 104 130
4. V 火 10.5 3.0 12.0 84 17.7 4.2 7.2 5. 8 5. 9 105.7 14.4 110 136

 2. 育苗日数試験
  生育と収量
項 目/
区 別
3月31日(定植時) 定植時苗生草100g 開花始


(%)
収量調査(11/5〜10/7)
草丈
(cm)
葉数
(枚)
地上部
重量
(g)
同割合
(%)
N P2O5 K2O ♀花
(月日)
♂花
(月日)
個数
(ヶ)
重量
(kg)
重量割合
(%)
1果重
(g)
1. W 30 7.2 2.5 10.0 204 0.24 0.13 0.17 5. 1 4.27 76 148.9 21.2 103 143
2. W 25 3.7 2.0 7.3 150 0.37 0.28 0.34 5. 7 5. 5 66 136.9 21.2 103 152
3. W 20 1.0 1.3 2.6 53 0.45 0.47 0.57 5.13 5.11 48 112.8 16.3 82 146
4. S 30 3.0 2.0 4.9 100 0.49 0.22 0.54 5. 8 5. 4 65 126.0 19.9 100 158
5. S 25 1.0 1.3 2.7 55 0.57 0.46 0.12 5.13 5.10 49 118.5 20.8 102 175
6. S 20 0.5 1.0 1.3 27 0.64 5.18 5.13 37 122.2 20.2 101 165
7. STA 30 3.3 2.2 6.1 122 0.40 0.14 1.87 5. 7 5. 4 65 97.7 16.6 83 169
8. STu 30 0.9 1.1 1.6 33 0.06 0.33 5.19 5.20 28 71.7 10.7 54 150
  注) 節成率は主枝20節までの雌花着生率

・ 普及指導上の注意事項
 1. 本畑にれきが混入するので網鉢等のれき耕用ポットを使用するとよい。
 2. 鉄欠が発見しやすいので標準培養液より3〜5ppm多めにキレ−ト鉄を使用する。但し標準培養液とは全国共通で使用されているもの(例:礫耕標準培養液1例同乙例、ハウス液肥1・2号)
 3. ベット内に病原菌のついた土を混入しないように注意する。