【指導参考事項】
1. 課題の分類
2. 課題名  寒冷期におけるハウス内育苗床の温度と保温資材の効果に関する試験
3. 期 間  昭和45年
4. 担 当  北農試作物科第2部
5. 予算区分
6. 協力分担

7. 目 的
 促成トマト、キュウリの育苗期は極めて寒冷の時期に当たるが、この時期ハウス内育苗床ならびに保温資材を調査し、育苗床の温度管理についての資料を得る。

8. 試験方法
 育苗ハウス(間口4.5m、長さ23.4m、高さ3.5mの耐雪性円形パイプハウス)内に設置した幅1.8m、面積28.6m2育苗床(3.3m2

当り22.5w電熱)を用いた。保温資材の効果を調査するために、この育苗床を5等分の5区とし、3期に分け各期5日間、5処理の比較を行った。ハウス内の位置の差を打ち消すためにラテン方格法処理区を配置した。温度測定は電子自記録温度計を用い、戸外、ハウス内気温は1mの高さ温床内は20cmの高さ温度、地温はすべて地下10cmの温度で、温床地温は電熱配線の中間点で測定した。

9. 試験成果の概要
 戸外の最低気温とハウス内、育苗床内最低気温との間には直接的な関係が認められた。この回帰係数は約0.5で戸外の温度2℃の低下に対してハウス内の温度低下は1℃という関係にあり寒冷になるほど戸外とハウス内の温度較差は大きくなる。
 温度資材の効果はコモ1重被覆っでは通電時で平均5℃、通電停止時3.5℃であった。シルバ−ポリトウの1重被覆では資材の厚さによる差は小さく通電時で平均3.5℃あった。コモ1重被覆と同程度の保温効果をだすためには、シルバ−ポリトウの2重、あるいはビニ−ルとの間に空間をもたせた1重被覆とする必要があることが認められた。
以上の調査結果により外気温が−20℃を越えるような厳寒期でも地中加温とコモあるいあはそれに相当する被覆法により、トマトの乱形果発生の危険温度とされる8℃以上に床内温度を保つことができ、さらに外気温が、−10℃以上であれば、夜間通電を停止しても適当な保温法により同様の温度を保つことができることが明らかになった。
 本試験では実際にトマトを育苗し、第1回移植後ほとんど夜間通電を停止してみたが、乱形果は第1花房の1番半花にかなり発生したが、他には正常果がほとんどであった。

10. 試験成果の具体的デ−タ−
 第1図 戸外最低気温とハウス内、床内最低気温との関係











(℃)
  注) 戸外ハウスは1m、床内は20cmの高さの気温。
     床は22.5w/3.3m2の配線で裸地

 第2図 コモならびにシルバ−ポリトウのハウス内育苗床に対する保温効果

                  ビニ−ルのみ区との温度差(℃)
  注) A、A':2月26日〜3月3日 (夜間通電)
     B、B':3月4日〜9日 (夜間2にt通電停止、3日通電)
     C、C':3月9日〜14日 (夜間通電停止)
     床内温度(20cm高)

11. 普及指導上の注意事項
 1. 外気最低気温が-10℃以上であれば、夜間(17時〜8時)通電を停止しても、コモ1重被覆かそれに相当する保温資材の利用により床温を維持できるので育苗中期以降は条件の許す限り夜間通電を停止し、夜冷育苗を心がける。
 2. 夜間通電を停止するときは、その前後の朝・夕は床内地温25℃を目標に通電を行う。