【指導参考事項】
いちごウイルスフリ−処理苗による生産性実証試験
(昭和44年〜)
道南農試 園芸科

・ 目 的
 生産力低下と産地移動を栽培改善と病害虫防除の両面より究明して解決をはかる。

・ 試験方法
 1. 現地苗とウイスルフリ−苗の栽培型別生産力検定
 2. 品種適応性検定
 3. 土壌改良効果査定
  設計
 環境③  裸地、ポロマルチ、ポリマルチ+トンネル
 苗  ②  現地苗(一般的に栽培されているもの)
        ウイルスフリ−苗(43年 園試盛岡支場で作土し、1年間道南農試で寒冷紗ハウスで隔離増殖したもの)
 3×2=6区
 8.1m23区制
 品種    幸玉
 施肥量(a当/kg)N2.25、K2.25、堆肥300、苦石15
 定植期  (グレ−ト555)
 畦巾×株間  1.8m巾×0.7m2条×0.3m(a当 370本植)

・ 試験成果の概要
 越冬前の生育− ウイルスフリ−苗が葉数、葉の大きさともに良好である。収穫始における生育−葉数においてはウイルスフリ−苗が各環境にともに、6〜7葉多く葉柄長においても各々9cm程度長い、叉葉も大きく、葉長×葉巾では裸地で183%、ポリマルチで215%、トンネルで160%とそれぞれ大差を示した。なお花房数についてもウイルスフリ−苗が各環境ともに大きくまさっている。
 収量− 前期収量−現地苗のトンネルによる早熟効果は裸地に比し、190%の高収が得られるが、株生育そのものが不良のために早熟化により小果が多くポリマルチに劣る。しかしウイルスフリ−苗は生育良好でありトンネル効果は大きくポリマルチに127%、裸地に217%の早熟収量を示した。叉苗種類による収量差はトンネルで220%、ポリマルチで167%、裸地で19.2%といずれの環境においてもウイルスフリ−苗がきわめて高収である。
 全期収量− 現地苗、ウイルスフリ−苗ともにポリマルチがもっとも高収を示し、トンネル、裸地と順次したがそれぞれの環境内ではトンネルで251%、ポリマルチで196%、裸地で245%の高収でウイルスフリ−苗がまさった。
 平均/果重− どの環境においてもウイスルフリ−苗が良好であり早期ほどその差は大きい。

・ 主要成果の具体的デ−タ
苗の種類 現地苗 ウイルスフリ−苗
定植時の苗素質 葉数
6枚
クラウン
11ミリ
苗重
15g
葉数
6枚
クラウン
10ミリ
苗重
18g
環      境 裸地 ポリマルチ ポリマルチ
トンネル
裸地 ポリマルチ ポリマルチ
トンネル
停職後32日目
における調査
(10月6日)
葉数 (枚) 6.0     7.2       
葉長 (cm) 7.3     8.5     
葉巾 (cm) 5.4     6.7     
葉柄長(cm) 12.8     14.6     
クラウン径(ミリ) 13.8     14.2     
収穫始における
調   査
葉数 (枚) 13.3 20.7 24.7 19.7 27.3  30.7
葉長 (cm) 7.2 7.3 8.2 9.7 10.3 10.0
葉巾 (cm) 5.9 5.9 6.2 8.0 9.0 8.3
葉柄長(cm) 18.3 19.7 21.0 27.0 28.7 29.7
花房数(本) 3.7 4.7 4.7 5.7 6.0 7.0
生育期節
(月日)
開始始 5.17 5.15 5.7 5.17 5.15 5.6
収穫始 6.19 6.14 6.9 6.20 6.17 6.11
収穫終 7.26 7.26 7.26 7.26 7.26 7.26
収  量
(ア−ル当/kg)
前期 20.67 40.42 39.26 39.59 67.53 86.23
全期 54.60 82.10 63.73 133.58 161.32 160.19
苗収量比 前期 (%) 100 100 100 192 167 220
全期 (%) 100 100 100 245 196 251
環境収量比 前期 (%) 100 195 190 100 170 217
全期 (%) 100 150 117 100 121 120
粗収入
(ア−ル当/円)
前期 6.408 12.530 12.171 12.273 20.934 26.731
全期 14.755 22.783 18.191 35.395 44.006 44.925
摘  要 資材費 (円) 0 343 2.620 0 343 2.620

・ 普及指導上の注意事項
 1. 採苗体系の早期確立

・ (参考資料)
 いちごウイルスフリ−処理苗による生産性実証試験
 いちごウイルスフリ−株による府県の試験例 (44年成績より)
  1. イチゴ品種「ダナ−」のウイルスフリ−株の生産力検定試験 (福島園試)
   (1) 供試苗 ウイルスフリ−ダナ− (園試盛岡支場よりS42年導入)
           対照ダナ− (福島園試在来)
   (2) 成績
     開花期における生育調査 (20株平均)
   草丈 草巾 展開葉数 葉柄長 中心
小葉長
中心
小葉巾
全葉巾 開花数 ランコ−
発生数
(8月20日)
採苗数
ウイルスフリ− 18.6 32.4 10.5 11.1 10.6 7.6 17.7 19.9 23.0 48.5 259
対   照 14.8 2.70 9.5 9.6 8.8 6.4 15.1 23.1 7.8 18.7 100

     120株当り収穫時期別収量 (g)


正常果


小果奇形果
  5月下旬 6上 6中 6下 10a当り 1果重量 (g)
ウイルスフリ− 5.675 6.272 1.893 38 13.878 130 481.9 76
対   照 3.320 5.634 1.693 5 10.652 100 369.9 66
ウイルスフリ− 95 69 17 9 190 37    
対   照 171 182 156 5 514 100    
   (3) 考察
    生育状況は明らかに旺盛である(開花数で劣るのはフリ−株が晩塾型となっているためと思われる)
   収量はウイルスフリ−株が高く30%の増収となり、品質別で正常果割合が高く、大果となった。またランナ−発生数も多く採苗数においては259%も著しく多い。
  2. いちごウイルス病防除に関する試験 (千葉農試 そ菜研究室)
   (1) ダナ−かくり苗(園試盛岡支場で、米国より輸入、42年秋千農に導入。オ−プンで43年秋採苗、44年春ハウス半促成栽培)
    ダナ−一般苗(盛岡で一般栽培されていたものを42年導入同様管理により栽培した)
   (2) 成績
     1株当り収穫時期別収量 (g)


正常果


変形果
  4中 4下 5上 5中 5下 合計 同比 1果重量
かくり 22.4 56.4 43.3 100.4 58.7 281.2 172 11.8
一般 21.8 34.3 23.7 43.6 40.1 163.5 100 9.7
かくり 1.7 17.0 9.9 6.0 1.8 35.7 168  
一般 3.7 10.5 6.6 0.5 0.4 21.7 100  

   (3) 考察
    正常果収量はかくり苗が72%増となり、ウイルスフリ−導入苗の収量増加は著しい。ウイルスフリ−株の実用上の汚染度とフリ−株による栽培法を検討することが必要である。
  3. いちご自苗の草勢および収量低下の要因解析 (宮城農試)
   (1) 供試苗  1. ダナ− 1965年埼玉県より導入オ−プンで採苗し−1968年定植(導入4年目)
            2.  〃   1965年盛岡園試支場より導入オ−プンで採苗し 〃  (   〃  )
            3.  〃   1968年盛岡園試支場より導入したもの          (導入初年目)
   (2) 成績
    20株当り収穫量 (g)
  〜5.31 〜6.20 比(%) 1果重量
1 508 1.060 1.568 100 7.7
2 1.842 1.212 3.054 195 9.4
3 922 3.099 4.021 257 8.7

    生育状況
  5月23日 6月30日
定植時葉数 葉高 葉巾 葉数 ランナ−数
1 5.3 15.2 31.3 11.5 6.9
2 5.7 19.8 38.3 13.7 12.6
3 5.8 25.1 37.3 19.7 12.6


   (3) 考察
    埼玉導入4年目の草勢低下及び収量低下が著しく認められた盛岡より導入4年目のものは前者よりは良いが、導入初年目に比べると劣っていて導入後径年数により明らかに差が生じた。
 道内におけるウイルスフリ−処理苗の栽培例
   生産低下のためのフリ−処理株を増殖している例
    木古内町、増毛町、夕張市、赤井川村
   フリ−処理株の生育を見て導入をはかりつつある例
    共和村、芦別市、広島村、当麻町、森、大野、七飯、上磯、松前