【指導参考事項】
小豆の銅過剰障害に関する試験成績
(昭和43年〜45年)
道立中央農業試験場 化学部土壌改良科

・ 目 的
 胆振支庁管内有珠地方に発生していた小豆の生育障害の原因を明らかにし、当面の対策法を樹立する。また、これと同質の生育障害が他地域に発生しているかどうか併せて検討する。

・ 試験方法
 (1) 種々の土壌処理の影響調査
 (2) 生育障害小豆の各組織のマイクロプロ−プ 線アナライザ−による微小分析
 (3) 現地およびポットによる品種間差異の検討
 (4) 水耕栽培による症状の再現

・ 試験成果の概要
 (1) 生育障害発生土壌に対する銅キレ−ト剤、または未発生土壌による希釈症状軽減となる。
 (2) 生育障害発生地は旧果樹園跡で著しく土壌の銅含有量が高い。ヒ素、ホウ素は分析の結果否定された。
 (3) 微小分析の結果、根部木質部に多量の銅が集積し、葉身斑点部には鉄、マンガン、アルミニウムの集積はあっても銅の集積はない。
 (4) この障害は品種間差異が大きく、白または淡褐の熟莢色の品種は抵抗力が強く、褐また黒褐の品種は弱い。宝小豆、茶殻早生、円葉1号は弱い。早生大納言、早生大粒1号は強く、中育2号は褐であるが強い(この品種のみ例外)。
 (5) 水耕栽培の結果、銅5ppm程度で明らかに同様な症状を呈し、品種間差も土耕と同様に現れる。
 (6) 宝小豆はだいたい0.1N塩酸可溶銅8ppm以上で発現し、12ppm以上では全滅する。
 (7) 小豆の銅過剰症は現実に他の地域の果樹園跡地などでも発生している。
 (8) 果樹土壌(余市、仁木町の70%)は可溶性銅含量が10ppm以上に達し、中には145ppmの銅含量に達するものもあり、また馬鈴薯地帯の銅含量も10ppmを越えるものが見い出された。
 (9) 0.1NHCI、可溶銅が8から12ppm程度の場合は抵抗性品種の選択によって被害を軽減することができる。
 (10) 植物体の銅は根部に集積するため、地上部の分析で差が出ない。

・ 主要成果の具体的デ−タ−

         銅含量と子実収量の関係(宝小豆)

 50年生以上りんご園の0.1NHCI可溶CuZn含量ppm
  作土
Cu Zn Cu Zn


1 13.0 26.5 1.5 7.2
2 22.5 38.5 4.2 16.5
3 17.5 38.5 2.0 6.6
4 50.0 56.0 7.3 31.5
5 34.5 81.0 8.5 17.5


6 2.3 90.0 0.2 5.0
7 13.5 33.0 1.2 3.8
8 15.3 33.0 2.0 6.7
9 1.8 26.0 1.0 8.7
10 4.3 45.0 1.6 13.5



            品種による収量減少率の差異  
  注) 長沼:正常土
     壮瞥:銅過剰土

・ 普及指導上の注意事項
 (1) 果樹園土壌および馬鈴薯地帯は宝小豆、円葉1号、高橋早生などの栽培に銅過剰の被害が大きいと考えられるからこれらの地帯では早生大納言(初霧の早い地帯不適)、光小豆などの抵抗性品種を栽培することが望ましい。