【指導参考事項】
天北地帯泥炭地における不耕起造成放牧草地への客土の効果に関する試験
(昭和42〜45年)
北海道立天北農試天塩支場

・　目　的
　従来泥炭地に客土を行う場合は土壌との混和が前提となっている。しかし､泥炭地の放牧草地造成に際し耕起作業は泥炭の表層組織を破壊することになり耐蹄踏圧性を著しく低下させる最大の要因と考えられる。よって不耕起草地造成方を採用するが､更に置土方式による客土を行って地帯力の向上を計ろうとする。

・　試験方法
　1.　試験場所:天塩町字東ウブン　　中間泥炭地　末墾地
　2.　処理区分

　　　　＜排水々位＞ ＜播種床処理＞ ＜利用法＞
　　　　　90㎝調節

　　　　　45㎝調節		 ┐
│
│
│
┘		 × ┌
│
│
│
└		 無客土　　不耕起
砂客土　　不耕起
粘土客土　不耕起
無客土　　耕　起		 ┐
│
│
│
┘		 × ┌
│
│
│
└		 禁牧区

放牧区
　3.　供試草種:ＯＧ､ＭＦ､ＫＢＧ､ＬＣ､ＷＣの5種混播
　4.　1区面積:120㎡(放牧区90㎡､禁牧区30 ㎡)
　5.　放牧方法:体重300〜600㎏の牡　を水位ごとに2〜3頭宛1〜2日間放牧､年5回
　6.　平均地下水位:90㎝区　昭42−36㎝､昭43−48㎝､昭44−31㎝､昭45−34㎝
　　　　(放牧区)　 　45㎝区　　〃−29　､　〃−38　､　〃−19　､　〃−26　

・　試験成果の概要
　1.　砂客土は地耐力が高く放牧に際しては蹄没の発生が少なく､特に高水位条件下でその効果が高い傾向にある。
　2.　粘土客土は多雨および高水位条件下で放牧を行うと蹄没の発生が著しく､減収および草地の裸地化の原因となり易く､圃場は凹凸が激しくなる。
　3.　よって泥炭地(高位泥炭地を除く)における不耕起草地造成法による放牧地で､地耐力を高めるため客土を行う場合には砂客土がよいであろう。

・　主要成果の具体的データ
　表1.　地耐力調査(㎏/cm2) (%)
　 昭42 昭43 昭44 昭45
7.5以下 7.6〜12.5 12.5以上 7.5以下 7.6〜12.5 12.6以上 7.5以下 7.6〜12.5 12.6以上 7.5以下 7.6〜12.5 12.6以上
90
cm		 不耕 4 32 64 0 16 84 0 29 71 3 60 37
砂土 6 36 58 2 33 65 0 40 60 2 62 36
粘土 4 58 38 5 40 55 14 64 22 17 65 18
耕起 58 30 12 6 57 37 9 62 29 17 68 15
45
cm		 不耕 12 46 42 6 56 38 11 53 36 13 70 17
砂土 10 54 36 4 61 35 2 59 39 3 68 29
粘土 20 46 34 13 47 40 32 55 13 37 59 4
耕起 40 48 12 10 52 38 19 60 21 17 70 13
　　(注)　ＳＲⅡ型土壌抵抗測定器4cm2による。

　表2.　蹄没発生状況(個/100cm2当)
　　 昭42 昭43 昭44 昭45
＞2cm 2-6 6-10 10＜ ＞2cm 2-6 6-10 10＜ ＞2cm 2-6 6-10 10＜ ＞2cm 2-6 6-10 10＜
90
cm		 不耕 80 40 − − − 66 − − − − − − 67 100 66 33
砂土 140 80 − − − − − − − − − − 100 133 133 67
粘土 160 80 − − − 198 132 − − 633 233 67 333 600 433 333
耕起 − 400 440 − − 165 198 − − 267 100 33 333 269 367 300
45
cm		 不耕 80 − 20 − − − − − − 233 134 − 333 67 367 867
砂土 − 100 − − − 33 99 − − 367 − − 333 333 233 400
粘土 80 20 − − 462 825 99 − − 600 533 433 333 400 1100 333
耕起 100 140 − − − − 231 − − 200 333 733 700 267 367 267
　　(注)　放牧終了後15ｍライン上で調査

　表3.　収量調査(㎏/10a)　(放牧区)
　 昭42 昭43 昭44 昭45 4ヶ年合計
乾物重 まめ科率(%) 乾物重 まめ科率(%) 乾物重 まめ科率(%) 乾物重 まめ科率(%) 乾物重 まめ科率(%)
90
cm		 不耕 95 46 779 19 901 17 897 39 2671 27
砂土 38 26 875 33 956 26 955 52 2825 33
粘土 77 39 926 48 832 30 795 56 2630 45
耕起 107 50 987 33 877 20 752 31 1723 29
45
cm		 不耕 120 47 1001 33 782 16 − − − −
砂土 61 39 1010 41 703 20 − − − −
粘土 95 38 993 58 657 38 − − − −
耕起 96 36 995 36 563 13 − − − −
　　(注)　昭45､45㎝区は早春の停滞水のため欠様多発により収量調査中止

・　普及指導上の注意事項
　砂客土は乾燥が著しく牧草の発芽活着状況が不良となり易いため牧草播種にあたっては湿潤時を選ぶべきである。