【指導参考事項】
ゴボウ根部黒変症状の発生要因と防除に関する試験
中央農試病虫部
北農試虫害第2研究室

・ 目 的
 北海道の各地に発生するゴボウ根部黒変症状の発生要因の解明と防除法を知る

・ 試験方法
 1. 発生要因の解明
  1) 土壌消毒(蒸気、殺菌剤、殺線虫剤、殺菌殺線虫剤)と発現
  2) 病変部からの線虫、菌の分離
  3) 分離された線虫、菌の単独および混合接種
 2. 防除法
  殺線虫剤、殺菌殺線虫剤の施用

・ 試験成果の概要
 1. 発生要因の解明
  1) 無処理区では黒変が甚しかったが、高圧蒸気消毒(20LB、40分)クロ−ルピクリン(10a当り30L)、D-D(10a当り80L)で激減した。また、これらの処理でネグサレセンチュウが減少しており本線虫が主因と考えられた。また、時にフザリウム菌も分離されるので、これも関与している疑がもたれた。
  2) ネグサレセンチュウは各地ゴボウ圃より共通して検出された。また、フザリウム菌の分離頻度が高かった。
  3) ゴボウ圃から検出される主要線虫の内で主要なもの3種、ノコギリネグサレセンチュウ、ニセネグサレセンチュウ、クキセンチュウと単独に接種したところ、黒変症状を呈したのは、ノコギリネグサレセンチュウのみであった。分離された菌類の内でフザルウム菌を主体として接種試験を数回にわたり実施したが、いずれの場合も明確な病微を示さなかった。
 線虫として3種、キタネグサレセンチュウ、ニセネグサレセンチュウ、クキセンチュウ糸状菌としてフザリウム2菌株、リゾトニア1菌株を供試して、線虫、菌単独および線虫と菌の混合接種したところ、その割合は糸状菌との混合接種で増加する傾向が見られた。他の線虫では単独および線虫と菌の混合接種での黒変出現率の変動が大きく、また症状も疑似病変と思われるものが多かった。以上から本症状はネグサレセンチュウの寄生によって生じ、糸状菌(特にフザリウム菌)他の外寄生線虫(ニセネグセセンチュウが重要)によって助長されるものと考えられた。
 2. 防除法
  殺線虫剤、殺菌線虫剤の施用により黒変症状は軽減され品質が向上し、収量も増加した。薬剤、薬量は線虫密度、土性の相違等から一般に云えないが実用に供し得るものはつぎのとおりである。
  D-D/クロ−ルピクリン剤20L(10a)
  クロ−ルピクリン(99%、80%) 20L(10a)
  D-D               40L(10a)

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 ゴボウ収量(商品価値の高いもの、黒変階級値0〜2まで)
薬剤名 成分 施用量
(10a当り)
昭和37年
(132m2当り)
昭和37年
(132m2当り)
昭和37年
(132m2当り)
根重(kg) 同比 根重(kg) 同比 根重(kg) 同比
1. 標準無処理 2.14 100 0.27 100 239 100
2. クロ−ルピクリン 99% 20L ※※
15.25
713     ※※
7.50
314
3.     〃 80% 20L     ※※
3.67
1.356    
4. D-D   20L         3.39 142
5.  〃   40L ※※
6.29
294 ※※
3.10
1.145 ※※
7.48
313
6. D-D/クロ−ル
ピクリン混合前(99%)
1:1
(重量比)
20L         ※※
7.46
312
7.     〃   40L         ※※
8.12
340
8. ソイルシン粉 Hg1.9% 3kg 3.89 182        
9. D-D+ソイルシン粉   D-D40L
ソイルシン3kg
※5.01 234        
LSD1%
   5%
   ※※対無処理1%
    ※   〃  5%
3.42
2.47
札幌市白石
砂壌土
0.78
0.47
札幌市琴似
植土
2.57
1.81
栗山町角田
植壌土

・ 注意事項
 1) DBCP剤はゴボウに顕著な薬害を出すので使用しないこと。
 2) 殺線虫剤の一般的な使用法に充分留意して使用すること。
 3) 石灰又は石灰を含む肥料はガス抜き後に施用のこと。