【指導参考事項】
秋ひなの性成熟に関する試験
(昭和43〜45年)
滝川畜試 家きん科

・ 目 的
 近年、周年ふ化が一般化されているが、秋から冬にかけてふ化したひな(秋ひな、寒ひな)は、自然環境下で育成すると、日長時間の漸増する時期に当たるので、早熟となり、そのため小卵期間が長く、産卵持続性が劣るなど、生産性が低いことが認められている。本試験は、秋ひなに対し、育成期に光線処理、制限給餌を行ない、性成熟を遅延調整し、その後の生産性向上への効果を調査したもので、44年度「寒ひなの性成熟調整試験」(普及奨励事項)の関連試験である。

・ 試験方法
 1. 試験期間:餌付より500日間(43.10.12〜45.2.23)
 2. 供試鶏:外国コマーシャル鶏 200羽
 3. 試験区分:
区  分 開始羽数
(羽)
処理 備  考
LC RF
試験区 LC.RF 50 LC:光線処理
RF:制限給餌
○:処理実施
LC 50
RF 50
対照区 Cont 50
 4. 光線処理と制限給餌の方法
  光線処理:70日令まで16時間一定、71〜140日令は、140日会の自然日長時間に移行するよう漸減
  制限給餌:64〜147日令に予想採食量の75%給与を目標

・ 試験成果の概要
 1. 育成率、生存率に、処理の悪影響はなかった。
 2. 制限給餌は、育成時の体重を軽くしたが、成熟時以後に影響は認められなかった。
 3. 性成熟を平均初産日令で比較すると、併用区、光線処理区、制限給餌苦の順で遅延し、対象区との差は、それぞれ31.4日、21.4日、11.6日となった。
 4. 産卵率は処理により、やや低下する傾向にあり、とくに併用区は著るしかった。
 5. 卵重は、処理により重くなる効果がみられ、併用区、光線処理がとくに重い傾向であった。
 6. 総産卵数、総産卵重量は、いずれも制限給餌区、光線処理区が良好であった。
 7. 飼料摂取量は、育成期の制限給餌により、1羽当り約2〜2.5kg節減できた。
 8. 資料要求率は、制限給餌区、光線処理区が良好であった。
 9. 粗収益は各試験区とも対照区より良好で、制限給餌区が最もよかった。
  以上の結果から、寒ひなの場合とは異なり、併用処理を行なうよりも制限給餌、あるいは光線処理を単独で行なうのが有効であり、とくに制限給餌が最もその効果の大きいことを認めた。

・ 主要成果の具体的データ
区分 性成熟
(平均初
産日令)
(日)
148〜500日令産卵成績 平均初
産卵重
(g)
飼料摂取量 1) 飼料要求率 粗収益
(鶏卵代
一飼料代)
(円)
hen-day
産卵率
(%)
総産卵
重量
(g)
平均
卵重
(g)
育成期
(g)
成鶏期
(g)
148〜
500
日令
全期間
LC.RF 187.3 56.53 418.331 60.98 48.55 7.837 37.831 3.11 4.06 22.476
LC 177.3 62.00 427.945 60.18 46.71 10.213 36.922 2.80 3.93 24.698
RF 167.5 62.85 439.032 56.99 44.14 7.964 35.265 2.79 3.69 27.145
Cont 155.9 66.28 375.982 55.84 43.00 10.221 37.061 2.85 4.13 18.950
  1): 1羽当たり

・ 普及指導上の注意事項
 1. 飼料の摂取量は、鶏の品種、系統、季節等により異なるので、あらかじめ自由摂取量を調査し、制限量を誤らないよう注意する。
 2. 制限給餌期間中の飼料給与は、すべての鶏が平均に採食できるようにする。
 3. デビークは、制限給餌実施以前(8週令)に行なう。
 4. 制限給餌期間中は、とくに観察を充分に行ない、衛生管理に注意する。