【指導参考事項】
牧草収穫機械体系の青刈とうもろこし収穫への応用試験
(昭和44〜45年)
道立新得畜産試験場  種畜部 馬産科

・ 目 的
 近年、道東地域においては、畑酪経営から酪畑経営に移行する傾向が強くなりつつある。これらの経営形態の中で、特に重要なことの1つに作業機械の汎用性の検討がある。そこで、酪畑経営において飼料用の青刈とうもろこしの収穫に、牧草用のモア−、及びハ−ベスタ−を用いる応用方法について比較検討する。

・ 試験方法
 1. 試験年次  昭和44〜45年(2ヵ年)
 2. 試験場所 道立新得畜試及び付近農家の圃場
 3. 作業体系 (○−−○は同時作業を示す)
年 次 処  理 刈  取 集 草 細  断 積  込 運  搬 備   考
初年目

2年目
1. 慣行法 ○−−
      人

−−−


−−○−−
ロ−クロップ
ハ−ベスタ−
−−○
43馬力トラクタ−
1台
 ○2台
普通ダンプ

 
2. 応用法 ○−−
      人

−−○


 ○−−

ピックアップ
−−○
30馬力トラック
ハ−ベスタ−
 ○3台
小型ダンプ

 
3.  〃  ○−−
      人

−−○


○−−
     〃

−−○
30馬力トラクタ−
2台


 
4.  〃 ○−−
      人

−−○


○−−
     〃

−−○
50馬力トラクタ−
1台

 
5.  〃  ○
レシプロモア−
○*
  **
○−−
  〃
−−○
  〃

* 初年目人力
**2年目アタッチメント考案
初年目 6.  〃  ○
デスクモア−


○−−
  〃
−−○
 〃

 
 4. 試験期間の気象
 気象の中で、本試験に影響がある降水量は、平年の54㎜に比して初年目は約2/1で26㎜とすくなかったが、2年目には59.5㎜を記録し、初年目に比して圃場作業は極めて困難であった。

・ 試験成果の概要
 (1) 所要経費を慣行法と比較した場合、応用法がいづれも安く、特に、モア−を使えばさらに、低廉かつ容易である。
 (2) 刈取損失量は、慣行法ならびにデスクモア−ハ−ベスタ−法が多かった。
 (3) 応用法のピックアップハ−ベスタ−を牽引するトラクタ−は45馬力以上が必要である。
 (4) 倒伏率が10%以上の場合は、デスクモア−は不適である。
 (5) ha当たり労働調査では、慣行法・モ−ア−ハ−ベスタ−法が極めて省力的であった。
 (6) 応用法における手刈労力は、1ha当たり全面刈10名で8時間を要した。
  以上の結果レシプロモ−ア−・ピックアップハ−ベスタ−方式が省力的であり、経済的であった。

・ 主要成果の具体的データー
年次 処  理 作業時間 ha当り 労  力
人時/ha
刈 取
損失率



%




(円)
人 員 機 械
時間 原動機 作業機 (人員×時間) %


1. 慣行法 3 10:48 10:48 5:00 16:36 3.1 0 640
2. 応用法 4 12 14:26 6:26 2:30 97:38 14.1 15 494
3.   〃 5 12 13:14 5:10 1:14 94:64 22.5 545
4.   〃 4 12 12:58 4:58 4:58 93:14 505
5.   〃 5 4 7:55 6:35 6:35 17:55 13.4 30 268
6.   〃 5 4 8:40 6:50 6:50 19:10 24.0 286
2

1. 慣行法 3 11:30 11:30 5:20 17:40 20.4 0 775
2. 応用法 4 12 14:50 6:50 2:45 100:30 10.3 18.5 665
3.   〃 5 12 13:08 5:48 1:26 91:50    0 635
4.   〃 4 12 13:27 5:27 1:10 96:21 11.7 0 627
5.   〃 5 2 8:41 8:41 4:16 21:24 12.3 0 434

・ 普及指導上の注意事項
 応用体系における刈取りと集草の方法について、
  (1) 先ず、全圃場を2等分して、片側を手前向きに刈倒し集草すること。すなわち、ハ−ベスタ−は穂の方向から拾い上げるようにすべきであり、モア−で刈取る場合もこれに準ずる。
  (2) デスクモア−の場合は倒伏の程度が作業能率及び刈取損傷にも影響が大きいので、倒伏率が10%以上となった場合には市ようしない方が良いであろう。
                     刈取りの方向図

  (3) ロ−クロップハ−ベスターによる場合は畦巾は90㎝程度にすること、軽い培土を実施することによって収穫歩溜まりを高め得る。
  (4) 手刈りならびにモア−刈りの場合は刈取高さ、拾い上げの点から、ほとんど培土の必要性が認められない。