【指導参考事項】
公共用草地の技術確定のための調査並びに現地実証試験
　　−十勝地域における公共育成牧場の実態分析−
(昭43〜45)
道立新得畜産試験場　　研究部
　　草地飼料作物科　　衛　　生　　科
　　飼　　養　　科　　　　経　　営　　科

・　目　的
　公共用草地(育成牧場)の技術的･経営的構造を明らかにし､その効率的管理方式作定の資料をえようとする。

・　試験方法
　1.　試験期間　昭和43年4月〜46年3月
　2.　調査対象　十勝支庁管内幕別町営乳牛育成牧場および補足調査対象として鹿追町､芽室町､忠類村の各育成牧場を選定した。
　3.　調査計画
　　(1)　調査対象の性格と位置づけ
　　(2)　育成牧場の実態分析
　　　　　　草地の造成･維持管理技術
　　　　　　家畜の集団管理技術
　　　　　　管理運営の実態
　　(3)　預託需要の実態分析

・　試験成果の概要
　1.　草地造成･維持管理
　　(1)　草地改造については､特に大きな問題はないが､傾斜地の工法として蹄耕法の活用を検討すべきである。
　　(2)　早生の維持と追肥追播の関連を検討する必要がある。
　2.　家畜飼養衛生
　　(1)　ha当牧養力は､300頭前後､増体日量は700gである。
　　(2)　放牧期間の延長の望まれるところがある。(幕別町)
　　(3)　各牧場とも趾間腐爛が最も多く､対策を講ずる必要がある。
　3.　運営管理
　　(1)　放牧原価は75円(幕別)程度で預託料と概ね均衡している。
　　(2)　預託農家年は各年25〜30%程度で農家の交替が激しい。

・　主要成果の具体的データー
　(1)　各育成牧場の施肥量
牧場名 第1回 第2回 計
N P2O5 K2O N P2O5 K2O N P2O5 K2O
幕　別 70 28 33 32 3 37 52 31 70
鹿　追 45 15 30 31 7 27 76 22 57
芽　室 18 31 31 24 8 35 42 39 66
忠　類 38 29 36 30 16 32 68 45 68
平　均 30 25 33 30 8 33 60 33 66

　(2)　各育成牧場の牧養力(頭/ha)　日増体量(g)
区　分 幕　別 鹿　追 芽　室 忠類
42 43 44 45 平均 44 44 44
放牧期間 141 149 144 148 146 156 154 171
入牧頭数 336 543 560 664 526 420 356 454
牧養力 227 272 296 309 281 243 291 306
日増体重 731 705 723 642 700 750 656 653

　(3)　各育成牧場の事故発生状況(主要疾病)
区　分 幕　別 鹿　追 芽室 忠類
43 44 45 43 44 44 43 44
趾間腐爛 118 101 196 26 46 23 37 55
乳房炎 21 34 35 − − − 1 −
鼓腸症 64 13 3 3 2 − − −
禿　匐 36 10 − 32 5 − 33 30
外　傷 15 12 12 − 3 − 1 3

　(4)　各育成牧場の放牧原価
区　分 幕　別 鹿　追 芽　室 忠　類 平均
43 44 45 43 44 43 44 43 44 44
平
均
一
頭		 人件費 4.970 3.307 4.178 4.803 4.405 4.825 3.808 4.645 3.993 8.878
物財費 5.562 5.339 5.548 6.269 9.064 8.748 8.748 10.361 8.093 7.811
償却費 1.488 2.369 1.949 1.525 2.087 1.655 1.655 1.828 1.775 1.972
計 12.020 11.015 10.823 12.597 15.557 14.211 14.211 16.834 13.861 13.661
1日1頭当 77.7 25.2 73.6 83.6 99.7 94.3 92.3 108.6 75.7 85.7

・　普及指導上の注意
　(1)　冬期合飼については別途検討を要する。
　(2)　なお､放牧原価が高く､さらに改善を続けることが必要である。
　(3)　草地の長期的(半永久的)生産力維持の可能性を､今後､実証的に確認する必要がある。