【普及奨励事項】
二条大麦「訓系16号」に試験成績
道立北見農試土 普通作物科
(昭和37年〜46年)

・ 育種目標
 良質、強稈、多収品種の育成

・ 来 歴
 交配年次  :  昭和37年
 交配場所  :  北見農試土
 交配組合せ:  春星×女系8号
 育種方法  :  F2〜F4集団育種、F5〜F7派生系統、F8以降系統育種
 育種経過  :  昭和41年生産力検定予備試験  系統名「62B5-40」
 昭和42年以降、生産力検定試験、現地試験  系統名「訓系16号」
 昭和43年以降 生検、現地、特検
 昭和46年 醸造試験(原料は昭和45年産)
 世 代    :  昭和46年 F13


・ 特 性
 (1) 一般性状: 稈長は「春星」より6〜10cm低く、穂数はほぼ同じである。穂長はやや短いが、1穂粒数が1〜2粒多く、粒着密度はやや密である。成熟期における穂の下垂度は「春星」より少なく、中程度で、穂の型は「春星」同様矢羽根型である。
 (2) 熟   期: 出穂期、成熟期ともに「春星」に比べ2〜3日早い中生種である。
 (3) 子   実: 粒は大で「春星」に比べ千粒重はやや重く、整粒歩号は5〜10%高い。
 (4) 収   量: 「春星」に比べて子実重は10〜20%高く、整粒重では30%程度の多収である。
 (5) 耐倒伏性: 「春星」に比べて明らかに強いが、十分なものではない。
 (6) 品   質: 外見の品質は「春星」に比べてやや良い程度であるが、粒の粗蛋白含量が0.5〜1.0%低く、エキスは1.0%高い。また酵素力(ジャスタ−ゼガ)、外観最終醗酵度、コ−ルバッハ値(溶解指数)も高く、醸造適性が優れている。ビ−ルの試験結果では、両品種間に大差はないが、「訓系16号」がやや上位にある。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 1. 育成地における成績(昭和42年〜46年 5ヶ年平均)
   生産力検定試験  生育調査


系統名
品種名
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本/m2)
1穂
粒数
不稔率
(%)
倒伏
多少


訓系16号 7.2 8.4 100 6.9 377 25.5 2.4
春 星 7.4 8.6 107 7.2 380 23.9 2.4


訓系16号 7.1 8.2 101 6.4 559 24.2 1.9
春 星 7.3 8.4 107 6.6 558 22.8 2.2

   仝上  収量調査


系統名
品種名
子実重 整粒重 1L重
(g)
千粒重
(g)
整粒
歩号
(%)
粗蛋白
含量
(%)
外見
品質
a当(kg) 比率(%) a当(kg) 比率(%)


訓系16号 31.4 120 25.6 124 636 45.4 80.2 14.9 中上
春 星 26.1 100 20.6 100 631 44.6 78.2 15.6


訓系16号 38.2 124 28.6 139 636 42.4 74.5 13.3 中上
春 星 30.9 100 20.6 100 627 40.7 64.6 14.6

 2. 麦芽、醸造試験成績 (昭和42、44、45、3ヶ年平均)
項目/
系統名
品種名
原 芽 麦  芽 ビ−ル
粉伏質
(%)
色度
(°Br)
エキス
(無水)
(%)
粗蛋白
(%)
コ−ル
バッハ値
(%)
最終
醗酵度
(%)
糖化
酵素力
K)
香味 順位
訓系16号 83.6 2.5 78.0 12.5 37.7 81.5 279 1
春 星 80.5 2.8 77.2 13.7 36.0 76.9 214 並〜
やや劣る
やや劣る 2

 3. 各農試土ならびに現地試験成績  子実重一覧(2〜5ヶ年平均)
市町村名/
栽培法/
品種
系統名
網 走 斜 里 佐呂間 女満別















(畑)




(原

種)
訓系16号 36.5
(112)
38.3
(124)
30.5
(121)
36.8
(119)
29.2
(118)
28.7
(110)
31.6
(114)
35.9
(113)
28.7
(125)
34.0
(112)
36.3
(117)
35.0
(105)
26.9
(113)
27.0
(101)
春 星 32.6 31.0 25.2 30.9 24.7 26.6 27.7 31.7 23.0 3.3 31.1 33.2 23.8 26.8
  注1. 標準播と往復播年次が必ずしも同じでない。
    2. ( )は対「春星」比率%

・ 適応地帯栽培上の注意
 適応地帯: 道内で二条大麦を栽培している全地域で「春星」におきかえる。
 栽培上の注意: 「春星」より強稈ではあるが、十分ではないので、窒素量は「春星」並とする。
  対象面積 2.000ha ・ 手持種子量 1.000kg