【普及奨励事項】
品種関係
てん菜遺伝的単胚品種「kawemegamono」に関する試験成績
(昭和44年〜46年)  てん菜研究所・北海道立農業試験場

・ 育種目標
 多収高糖性の遺伝的単胚品種を育成する。

・ 来 歴
 kawemegamonoはドイツのクラインワンツレ−ベン種子会社で育成した倍数体の遺伝的単胚品種である。
 昭和41年にKWS-Monobetaと言う品種名で輸入され、昭和43年まで系統適応性検定試験を行ったが、この3ヶ年の成績から糖分型で、根重の低い品種であった。
 しかし、その後日本甜菜製糖株式会社とクラインワンツレ−ベン会社との共同で種々の系統比較試験の結果、多収性のKWS-Monobetaに組換えて、昭和44年から昭和46年までの3ヶ年間、再び系統適応性検定試験を行った。
 この間の品種名にKWS-Monobeta、KWS-Monobea-A.Kawemegamonoと毎年変更になったが、最終的にkawemegamonoと改正されたのは昭和45年7月である。
 昭和45年と昭和46年には育成系統検定試験をおこなった。

・ 特 性
 kawemegamonoは倍数体の遺伝的単胚品種で、草丈はやや低く、根型は短円錐形である。熟期は早生でkawepolyと同程度である。
 褐斑病に対する抵抗性は弱くkawepolyと同程度である。
 根重はやや多収性の品種で、Soloraveと同程度あるが、地域によっては多少劣る所もある。
 糖分はSoloraveよりやや高いてkawepolyよりやや低い。

・ 主要な具体的デ−タ−
 昭和44年より昭和46年までの系統適応性検定試験
  昭和 てん菜
研究所
北海道立農試 平均 対てんけ
ん1号比
3ヶ年
平均
道南 中央 上川 天北 北見 十勝 根釧
   根  重
1 kawemegamono 44 4.50 4.52 4.25 2.78 2.67 3.27 4.56 3.57 3.77 107 101
45 4.67 4.22 3.56 3.69 2.90 4.18 3.81 3.89 3.87 98
46 4.61 4.74 2.89 3.28 3.89 2.73 3.69 99
2 Solorave 44 4.98 4.57 4.48 2.98 2.93 3.13 4.71 3.68 3.93 112 106
45 4.53 4.04 2.92 3.81 3.32 4.44 4.17 4.15 3.92 99
46 4.74 5.06 3.10 3.66 3.94 3.38 3.98 106
3 T1007 44 4.37 4.61 3.99 2.90 2.54 3.00 4.23 3.45 3.63 103 98
45 4.51 4.14 3.08 3.64 3.08 4.10 3.81 3.75 3.76 95
46 4.16 5.03 2.88 2.79 3.89 2.89 3.61 97
4 てんけん1号 44 4.18 4.03 4.00 3.06 2.38 2.78 4.08 3.53 3.51 100 100
45 4.52 4.70 3.37 3.72 3.31 4.09 3.95 4.05 3.96 100
46 4.39 5.14 2.60 3.11 3.95 3.23 3.74 100
5 きたまさり 44 5.02 5.16 4.86 3.23 3.00 3.71 4.98 4.22 4.27 122 116
45 5.15 4.25 3.10 4.09 3.59 4.92 4.24 4.52 4.23 107
46 5.24 6.04 2.23 3.79 4.62 3.62 4.42 118
6 Polyrave 44 4.63 4.55 4.33 2.87 3.01 3.05 4.40 3.86 3.84 109 107
45 4.70 4.57 3.49 3.79 3.48 4.79 3.98 4.48 4.16 105
46 4.84 5.42 3.14 3.77 4.03 3.05 4.04 108
7 kawepoly 44 4.54 4.54 4.29 2.86 2.80 2.89 4.32 3.67 3.74 107 106
45 4.94 4.89 3.20 3.65 3.06 4.42 3.85 4.26 4.03 102
46 4.72 5.35 3.16 3.74 4.09 3.18 4.03 108
   根中糖分
1 kawemegamono 44 17.07 15.80 15.05 16.33 16.15 16.90 16.94 17.40 16.46 99 100
45 15.49 14.54 14.81 17.09 17.60 16.80 17.86 16.40 16.32 100
46 15.67 17.24 15.90 16.68 17.70 16.90 16.68 102
2 Solorave 44 16.76 15.20 14.53 15.93 16.00 16.70 16.64 17.40 16.15 97 99
45 15.38 14.13 14.75 16.79 17.60 16.60 17.70 16.90 16.23 99
46 15.69 17.13 15.71 16.17 17.52 17.40 16.60 102
3 T1007 44 17.01 16.70 15.24 15.98 16.40 17.00 16.50 17.40 16.53 99 99
45 15.50 15.04 14.75 16.55 17.20 17.10 17.31 16.20 16.21 99
46 15.22 16.99 15.20 15.68 17.05 16.90 16.17 99
4 てんけん1号 44 17.35 16.80 15.60 16.48 15.80 17.10 17.27 17.40 16.73 100 100
45 15.55 15.55 15.45 17.03 16.45 17.00 17.41 16.70 16.39 100
46 15.43 17.12 15.42 15.97 17.31 16.80 16.34 100
5 きたまさり 44 16.87 15.00 14.43 16.00 15.30 17.10 16.64 17.70 16.13 96 98
45 14.77 14.14 13.74 17.04 17.30 16.30 17.48 16.10 15.86 97
46 15.32 16.93 15.76 16.18 17.17 17.00 16.39 100
6 Polyrave 44 17.21 15.30 14.75 16.31 16.15 16.80 16.65 17.30 16.31 97 99
45 15.19 14.06 14.50 17.01 17.60 16.60 17.66 16.50 16.14 98
46 15.63 17.08 15.85 16.24 17.75 17.40 16.66 102
7 kawepoly 44 17.77 15.30 15.56 16.83 16.50 17.30 17.48 17.80 16.82 101 103
45 15.87 14.58 15.01 17.60 17.65 17.30 18.29 17.40 16.70 102
46 16.06 17.99 16.43 16.78 18.20 18.00 17.24 106

・ 適応地帯ならびに栽培上の注意
 kawemegamonoは根釧地方除く道東および道北などの褐斑病の発生の少ない地帯および、これに準ずる地帯に適し、移植および直播の省力栽培に適する。
 褐斑病に弱いので、その防除の徹底を期すこと。
 対象面積 10.000ha


(補)
・ てん菜導入品種の取扱いに関する意見
 外国産のてん菜品種が道の優良品種に決定した場合、爾後商業ベ−スで導入される当該品種について試験成績と同程度の成績を示すかどうかチェックすることが必要である。
 その理由は次のとおりである。
 1. てん菜品種は一般に数系統〜拾数系統の合成よりなるもので、遺伝的に雑ぱくである。
 2. 雄性不稔を利用する一代雑種の場合でも不稔性の程度が環境条件等により変動し、これにともなって一代雑種が特性が変動する可能性がある。
 品種が本来このような特徴をもっているうえに、外国産品種については、その構成系統の内容・採種法など全く不明である。したがって、一般栽培用の導入される品種の能力が劣る場合は大きな損失を招くことが懸念される。