【指導参考事項】
りんご肥培法試験成績
(昭和41〜44年)  道立中央農試  園芸部 果樹科

・ 目 的
 りんご幼木時代の窒素肥料の施肥量が樹体の生育、倒凍性に及ぼす影響を検討する。

・ 試験方法
 (圃場試験)
試験場所  中央農試江部乙りんご試験地圃場
試験方法
 (1) 供試品種  台木「マルバカイドウ」、穂品種「旭」
 (2) 処理区分  1) 無N区  2) 1/2N区  3) 標準区  4) 2N区。
 (ポット試験)
試験方法
 (1) ポット容量1/2000ワグナ−ポット・砂耕。
 (2) 培養液のNの濃度  1) 無N区  2) N50ppm区  3) N100ppm区  4) N200ppm区  5) N400ppm区。
 (3) 供試品種  台木「マルバカイドウ」、穂品種「スタ−キング」
 (4) 区 制    1区4樹

・ 試験成果の概要
 (圃場試験)
 (1) Nの施肥量と樹体の生育は、1〜2年目は差は小さく、3年目以降から顕著な差が生じ、N施肥量の多いほど生育は大となった。
 (2) 葉色は2年目の後半から無N区が若干淡くなった。3年目には生育当初より無N区が淡くなり、10月初旬には黄変化した。他の各区は葉色の差はなく一様に濃緑色を呈していた。
 (3) 落葉率については葉色の場合と類似し、2年目には各区に僅かに差がみられた。3年目になって無N区の落葉が著しく早くなった。
 (4) 3年目における1樹当りの葉数は、無N区は他の各区の60%程度であった。他の3区間の差はない。
 (5) 葉内Nは、N施用量が多くなるにつれて高まり、葉内Kは葉内Nが高くなるにつれて低くなった。葉内Caは葉内Nが高まるにつれて高くなる傾向を示した。葉内P、Mg、Mn、およびFeは各区間による差は明らかでなかった。
 (6) N施用量が多くなるにつれて凍害の発生程度は大となる傾向を示したが、適量以下のNの減量は必ずしも凍害防止とはならない。
 (ポット試験)
 (1) 樹の生育は無N区が最も劣り、次いで400ppmN区であった。他の3区間の差はなかった。
 (2) 無N区の生育は7月下旬で停止した。400ppmN区は7月下旬から生育が鈍化した。
 (3) 凍害による腋芽の枯死率は400ppmN区が無N区よりも僅かに多かった。他の3区は前二者よりも少なく区による差はなかった。
 (4) 発芽伸長率は無N区が25%で最も劣り、次いで400ppmN区の50%の順であった。他の3区は58〜59%であり区による差はなかった。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
区 別/
樹 別/
項 目
(1) 区 (2) 区 (3) 区
A B C 平均 A B C 平均 A B C D E 平均
幹周(cm) 53.5 55.5 58.0 55.7 55.0 57.0 60.5 57.5 50.5 53.0 54.5 51.0 57.0 53.2






 
41 289 258 316 288 75 134 85 98 206 245 180 203 137 194
42 341 160 197 233 121 134 138 131 161 41 294 175 46 143
43 546 640 672 619 147 165 442 251 330 447 559 508 341 437
44 231 219 303 251 126 118 81 108 140 173 211 153 112 158
45 597 772 735 701 445 410 463 439 478 540 421 417 395 450
2004 2049 2223 2092 914 961 1209 1028 1315 1446 1665 1456 1031 1383
割合(%)       151       74           100






 
(kg)
41 57.0 54.2 68.8 60.0 16.8 25.0 17.3 19.7 40.3 48.9 35.4 46.7 28.6 40.0
42 73.3 39.2 50.2 54.2 32.6 28.9 51.0 37.5 39.0 11.3 64.0 41.0 11.7 33.4
43 119.5 105.6 120.3 115.1 33.3 36.3 87.7 52.4 70.3 93.7 101.1 98.0 67.6 86.1
44 51.2 39.2 70.2 53.5 27.4 26.7 16.5 23.5 31.1 38.4 46.5 33.0 22.7 34.3
45 131.3 144.5 131.0 135.6 81.5 82.5 83.0 82.3 99.0 113.5 89.0 86.0 84.5 94.4
432 393 440 418 192 199 256 215 280 306 336 305 215 288
割合(%)       145       75            100






 
(kg)
38 2.0 2.0 2.2 2.1 1.5 1.8 1.7 1.7 1.5 1.8 2.0 1.7 1.3 1.7
39 3.1 1.6 4.2 3.0 3.0 3.0 2.9 3.3 3.6 4.6 2.7 3.8 3.0 3.5
40 5.2 5.5 8.5 6.4 9.3 10.5 9.8 9.9 4.0 6.0 6.5 5.8 2.9 5.0
41 9.2 7.5 10.5 9.1 12.5 8.5 13.0 11.3 6.7 14.0 11.0 8.5 9.5 9.9
42 7.6 7.1 4.3 6.3 9.1 14.5 10.0 11.2 6.4 9.8 11.4 7.0 10.5 9.0
43 12.0 7.2 11.5 10.2 12.0 12.5 10.5 11.7 8.7 11.0 12.0 7.9 11.2 10.2
44 12.5 14.0 16.0 14.2 9.2 12.0 27.5 16.2 12.5 18.0 15.0 5.7 19.0 14.0
45 31.3 10.0 14.0 17.1 23.0 19.0 21.0 21.0 14.0 11.0 12.0 13.0 10.0 12.0
83 55 71 69 80 82 96 86 57 76 73 53 67 65
割合(%)       106       132           100
平均一果重(g)       200       209           209

・ 普及指導上の参考事項
 結果樹令の晩れるデリシャス系りんごでも、4〜5年生樹から、間引主体の剪定(主枝のみは切返)と枝条誘引により、剪去枝の枝令を遅らせることにより、初期収量の増加は期待出来る。