【指導参考事項】
夏メロンの立地条件と栽培法改善に関する試験
2. 栽培法の改善に関する試験
昭和44〜46年   中央農試 園芸部花きそ菜科 科長 (土屋 弘) 研究職員 (山谷 吉蔵・土肥 紘)
                   化学部土壌肥料   科長 (岩淵 晴) 研究職員 (相馬 暁)

・ 目 的
 本道の夏メロン栽培は夏期の好気象条件により良質のものが生産され府県への移出も考えられている。最近では技術、資材の進歩により栽培は急増し、その立地は丘陵台地平坦地、砂丘地におよび、土質も砂、廃土、火山灰土と広範囲である。各々について、品種の適否、栽培法等に改名を望まれる点も多いので、これらの検討を行い、簡易で安定した栽培法確立の資とする。

・ 試験方法
 1. 品種の土壌別による特性比較  (試験年次 44〜46年)
  試験場所  中央農試  ①崩積・砂壌土 ②沖積・埴壌土 ③海成砂土(岩宇試験地)
  供用品種  北海道キング系・東京キング  栽培法  トンネ・マルチ栽培
 2. 簡易育苗法の適否  (試験年次 45〜46年)
  下記の培地材および土壌別に等容量と1:2容量に混合した2種の簡易床土を造り、物理性、苗の生育、定植後
  の活着性について調査した。
    培地材:ピ−トモス(道産泥炭、1L当過石2.3、MGカル4.6g混合)・籾殻燻炭(焼成後水洗)
    供試土壌:崩積土(農試砂壌土)、砂質土(札幌市海成砂土)、火山性土(千歳市粗粒火山砂)
     (各土壌は可溶性塩類などを流失させるため、水道水に浸漬・水洗した。)
    供用品種  北海道キング系  施肥量  アンモホスカ444号700mg、硫加100mg/株当り600ml床土
 3. 土壌の特性調査
 (1) 窒素用量試験             (2) 灌水処理試験
       試験圃場<農試土高台圃場:崩積土−腐植に富む砂壌土、粗孔隙易有効水が多い。
                 〃 低地 〃 :沖積土−腐植を含む植壌土、粗孔隙易有効水が多い。
区別 施肥量 (kg/10a) 備 考
N P2O5 K2O
N 5 5 16 13 46年のみ
N 10 10 16 13  
N 20 20 16 13  
N 30 30 16 13 45・46年
供用品種 44〜45年 札幌キング
       46年 東京キング
            ワンダフル
区 別 灌水 処理時期※ 備  考
生育
初期
果実
肥大期
果実
登熟期
初期灌水     ※灌水日および量
全期 〃 生育初期7月13〜14 計60mm
肥大期 〃     果実肥大期8月3〜4日、17〜18日 計120 
登熟期 〃     果実登熟期8月29日、9月2日 計60
無 〃       施肥量 N10、P16、K13 kg/10a
           供用品種 東京キング、ワンダフル

・試験成果の概要
 1. 品種の土壌別による特性比較
  ①品種:北海道キング系に比較して東京キングは、初期生育がやや劣るが品質が安定しており、特に土壌、気候による変化が少ない。ただし、醗酵果が多いうに観察された。
  ②土壌別:砂土(岩内)では、生育が劣る熟期が進み、果実がやや小型となる。低温年でも他圃場に比較してブリックスが高いが果肉が薄い傾向にあり、観察では日持ちが劣る。砂壌土(農試土低地)では年次により生育、品質の差が大きく、特にブリックスが劣る。蔓の過繁茂となり易く、湿害、乾害を受け易いのでメロン栽培には不適当である。
 2. 簡易育苗法の適否
  ①簡易床土の好適な物理性(特に粗孔隙量)を得るために、容積量を一つの指標として、これを好適な数値にすると良いことが示された。本試験では、好適した容積量は100cc当りピ−トモス混合床土の場合、崩積土では50g、砂土、火山性土で70〜80g(概ね等容量混合のものがこれに当たる)。燻炭混合床土の場合、崩積土60g、火山性土で80〜90g(概ね等容量混合したものをやや密に詰める)であった。
  ②ピ−トモス混合床土は、苗の生育に好適な範囲の物理性を比較的容易に得られ、供用する土壌による適、不適のフレが少ない。特に物理性の不安定な土壌の性質も良くマスキングするようである。籾殻燻炭混合床土は、苗の生育に好適な物理性範囲がピ−トモスに比べ狭い傾向にあり、供用する土壌により苗生育のフレが大きい。特に孔隙量が不安定な土壌の場合にその傾向が著しく、生育も不良であった。易有効水孔隙が少ない傾向となることから、少量・多回数灌水をする等の注意が必要であろう。
  ③定植後の活着性は、ピ−トモス専用も含めピ−トモス系統の床土による苗は良好であった。籾殻燻炭系統の床土の苗はピ−トモスのものに劣るが、燻炭単用床土を除き実用化し得る。しかし、供用する土壌により、また定植する圃場の土壌により活着性にフレが大きく、特に崩積土混合床土は不安定となった。
 3. 土壌の特性調査
  ①窒素用量:塩類の表層への集積は高台圃場において顕著で、濃度障害を生ずるEC濃度を出現させた。特に、施肥マルチ後、定植までの日数が長い場合、気象条件によっては障害発生の危険性が高い。養分の集積が顕著に起こる高台圃場のような条件では、東京キングはN-10kg/10a、集積のさほど起こらない低地圃場ではN-20kg/10aが、窒素の適容量と思われる。窒素用量にあまり明確に反応しないワンダフルでは、高台、低地共に、N-20kg/10aが適用量と思われる。窒素用量は、養分集積と結びつけて考えなけらばならず、土壌中に実際に集積している窒素量で考えるのが妥当である。
  ②灌水処理:メロンに対する灌水効果は、品種間に差異があり北海道キング系のワンダフルに明確に現れた。灌水は一般的に糖度を低下させるが、適期内収量を増加させた。生育段階別の灌水効果は、生育初期に行うのが着果を良くし、適期内収量を増加させた。肥大期灌水は、時には適期内収量を減少させる危険性があり、登熟期灌水は適期内収量を増加させるが、糖度を著しく低下させる傾向となった。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 1. 品種の土壌別よる特性比較
試験
圃場

北海道キング 東京キング
草丈
(cm)
節数
収穫
(月日)
1果重
(g)
果型
(cm)
果肉
(cm)
BX
(%)
草丈
(cm)
節数
収穫
(月日)
1果重
(g)
果型
(cm)
果肉
(cm)
BX
(%)
岩内 44 118 17 8.28 1.701 -0.7 3.7 8.5 75 13 8.29 1.082 -1.0 3.8 9.6


−+
はは
扁長
円円



      
45 199 29  .16 1.460 -0.2 3.7 13.2 185 30  .18 893 0 3.3 12.6
農試
高台
44 168 21 9. 3 1.796 +0.9 4.2 9.4 146 19 9 .3 1.081 +0.5 3.2 8.6
45 311 41 8.27 1.810 +1.7 4.2 13.4 308 50 8.28 1.111 +0.1 3.3 12.2
46 265 38 9.13 1.893 +1.7 4.2 13.5 280 46 9.13 1.040 +0.6 3.5 14.1
農試
低地
44 196 22 9. 4 1.573 +1.8 3.7 7.8 196 21 9 .5 923 +0.6 2.8 5.7
45 203 27 8.24 1.895 +3.2 4.2 10.2 276 16 8.25 1.098 -0.1 3.5 12.3
46 261 36 9.21 1.280 +1.6 3.5 11.4 291 38 9.22 1.090 +1.8 3.6 12.6

 2. 筒易育苗法の適否
区  別 苗の生育(苗令45日) 床土の物理性(鉢上時) 定植後の活着性



混合比 最大葉
長×巾
茎葉重
g/1株

PF1.7
A
粗孔隙

PF3.0
B
易有効水

PF3.8

難有効水
A
−×100
A+B

容積重
g/
100cc
崩積土 砂土 火山
性土
土:培地 総蔓長 総蔓長 総蔓長






1 0 50 5.8 23.9 12.5 7.2 65.7 32.1 83.1      
2/3 1/3 169 16.2 27.6 9.9 6.5 73.6 25.2 64.2      
1/2 1/2 193 17.2 31.8 8.8 7.2 78.3 21.8 53.4 891 90 933

1 0 52 4.2 13.0 10.9 1.9 54.4 46.8 128.6      
2/3 1/3 134 14.5 20.8 10.9 3.9 65.6 34.2 89.0      
1/2 1/2 183 14.6 33.6 13.6 4.3 71.2 27.1 69.5 929 102 1093



1 0 67 7.8 26.2 10.7 3.4 71.0 36.5 11.2      
2/3 1/3 140 14.1 30.1 7.8 5.3 79.4 35.3 86.6      
1/2 1/2 190 15.9 33.8 6.8 4.6 83.3 29.9 77.2 1235 89 1.029
0 1 144 15.1 48.5 7.4 5.9 86.8 12.1 22.1 1.126 97 1.070





1 0 50 5.8 23.9 12.5 7.3 65.7 33.1 83.1      
2/3 1/3 30 4.1 24.9 7.9 6.2 75.9 22.3 57.7      
1/2 1/2 119 11.1 35.8 7.5 5.6 82.7 12.0 59.1 679 31 723

1 0 52 4.2 13.0 10.9 1.9 54.4 46.8 128.6      
2/3 1/3 99 10.0 31.5 8.9 2.4 78.0 32.3 88.1      
1/2 1/2 149 14.8 33.6 7.5 3.0 81.8 33.6 89.0 1.039 87 1.184



1 0 67 7.8 26.2 10.7 3.4 71.0 36.5 114.2      
2/3 1/3 159 18.0 33.6 6.5 3.6 83.8 25.0 89.3      
1/2 1/2 158 14.0 33.6 6.1 3.6 84.6 33.2 76.4 1.001 59 770
0 1 88 8.5 44.5 3.1 2.1 93.5 8.5 11.4 893 47 665

 3の① 窒素用量試験
品種 区別 高台圃場 低地圃場
a当り 適期内収穫果実について 同 左
果数
重量
(kg)
1果平均
(g)
平均登熟日数 平均糖度 果数
重量
(kg)
1果平均
(g)
平均登熟日数 平均糖度




N 5 103 135 1.308 -36.0 14.4 68 93 1.361 38.7 11.1
  10 93 132 1.417 △39.6 13.8 64 77 1.197 △38.739.2 11.9
  20 100 129 1.293 -33.6 14.3 74 111 1.503 △37.0 11.7
  30 85 128 1.502 -35.5 14.9 40 57 1.419 △43.8 13.1




N 5 120 126 1.504 -34.2 14.6 67 79 1.172 △40.2 13.5
  10 135 143 1.109 -34.7 14.6 83 98 1.182 △41.4 13.9
  20 80 102 1.275 ±35.8 13.4 141 173 1.225 ±35.8 15.0
  30 57 101 1.776 △37.1 13.4 67 81 1.213 -36.0 14.4

 3の①の補  電気伝導度調査(7月24日)
深さ(cm) 高台圃場 低地圃場 備 考
N-10 N-20 N-30 N-10 N-20 N-30
0〜5 1.270 2.590 2.620 0.721 1.315 1.895 単位
mm/10/cm
5〜10 0.685 0.735 0.325 0.192 0.165 0.915
10〜20 0.615 0.260 0.245 0.090 0.285 0.175

 3の② 灌水処理試験
区  別 高台圃場 低地圃場
a当り 適期内収穫果実について 同  左
果数
重量
kg
1果
平均重
g
平均登
熟日数
平均
糖度
果数
重量
kg
1果
平均重
g
平均登
熟日数
平均
糖度




初期灌水 62 99 1.592 39.9 13.7 109 166 1.520 39.4 12.3
全期 〃 86 137 1.588 41.3 13.9 85 139 1.639 39.9 12.0
肥大期 〃 86 137 1.590 38.1 12.6 39 65 1.664 42.3 13.7
登熟期 〃 72 108 1.504 37.9 12.3 79 105 1.334 38.6 10.8
 無 〃  54 81 1.498 37.8 14.4 47 70 1.480 38.6 12.9




初期灌水 138 140 1.016 35.1 14.4 87 92 1.059 37.4 11.7
全期 〃 125 140 1.123 36.0 13.1 158 191 1.210 38.1 13.8
肥大期 〃 109 119 1.088 35.4 12.4 110 132 1.198 39.6 14.1
登熟期 〃 132 155 1.177 34.5 13.7 124 151 1.221 39.2 13.1
 無 〃  132 137 1.038 34.8 14.6 79 96 1.210 43.0 15.2

・ 指導参考上の注意事項
 1. 栽培は各種の土壌にわたっており、土壌特性(たとえば物理性)の異なる産地で同一品種、同一栽培法にて栽培することは、特に品質の低下のおそれがあるので注意する。
 2. 土壌の条件により、品種の特性も変化するが、その度合は品種間で差があり、特に、北海道キング系はその変化のフレが大きい。品種の剪定に注意する。
 3. 主要な産地でも、土壌構造がメロン栽培上問題があり、品質向上のため、土壌の改良や、栽培法の改善が必要である。
 4. 窒素施肥反応は、土壌の種類および品種によって異なるので、施肥法、施用量ついて注意する。
 5. 灌水を行うことにより、収量増加等の利点が多いが、灌水時期によっては、熟期の遅れや、糖分低下が著しくなるので注意する。