【指導参考事項】
草地の晩秋利用時期と翌春の収量
(昭和40〜46年)
根釧農業試験場 草地科

・ 目 的
 近年、根釧地方では乳牛の急激な増加にともない、ますます、省力的経済的な飼養管理と草地の効率的利用が望まれている。本試験では、その一環として放牧期間の延長をはかるため、とくに晩秋における草地の利用時期と翌春の草生との関連について検討を加えた。

・ 試験方法
 (1) 供試草地: 試験1〜4……単播草地、試験5〜7……混播草地、供試草種……イネ科草8種(Or・Mf・Ti・Kb
            他)、マメ科草3種(LC・WC・RC)
 (2) 最終利用時期: 8月下旬〜11中旬の間に2〜9段階に変えて越冬させた。
 (3) 調査項目: 越冬後の1〜2番草収量、越冬前後の貯蔵養分の動向、早春草地の冬枯れおよび再生状況


・ 試験成果の概要
 (1) 晩秋に草地を利用(刈取または放牧)する場合、根釧地方では9月下旬〜10月中旬頃利用したときに、もっとも翌春の草生を低下させ、11月の利用の影響は少なかった。この草生低下は萌芽、初期伸長の抑制、草生密度に表れるが、6月に入ると回復してくる傾向がある。 この傾向は、草種によって異なり、Mf>Or>Ti≒Kbであった。
 (2) 9月下旬〜10月中旬は牧草にとっては貯蔵養分の蓄積など、生理的には「越冬体制移行期」にあたる。この時期に利用すると、貯蔵養分蓄積が中断されるばかりでなく、既蓄積分の一部は再生に利用され、越冬前まで再び十分な貯蔵養分を貯えることが出来ず、越冬体制はかなり不備なものとなる。また、越冬体制の不備、不十分な再生の状態は、霜害、凍上害および雪腐病害などを受けやすくした。
 (3) 11月以降の利用では、牧草はほぼ越冬体制を備えているとともに、ほとんど再生しない時期のため、翌春の再生に対する影響が少なくかつ外的要因に基づく被害も大きくないようであった。

・ 主要成果の具体的デ−タ


 晩秋利用時期と翌春の風乾物収量指数(混播草地) 〔試験5)
  A* B C D
10上 11上 10上 11上 10上 11上 10上 11上
1番草 75 100 111 100 68 100 88 100
2 〃 88 100 81 100 104 100 103 100
 * A:Ti+RC、Ti+Or+LC、C:Ti+Mf+LC、D:Or+Mf+LC 混播

                                     〔試験6〕
刈取日 10/11 10/16 10/21 10/26 10/31 11/5 11/10 11/15 11/22
収量指数 100 76 97 96 97 87 87 97 88
 Ti+Kb+LC 混播

 「越冬体制移行期」に利用した場合の越冬前のTAC含有率および含有量
 (立毛数100本あたり、11月中旬利用を100としたときの10月中旬利用の比率)

・ 普及指導上の注意事項
 本成績から晩秋放牧する場合には、「越冬体制移行期」の利用は、翌春の草生を低下させることを認識し、草種特性を生かした利用をすることが望ましい。根釧地方では、9月下旬〜10月中旬の放牧には、越冬性に対する影響の大きいオ−チャ−ドグラス、メドウフェスク(アカクロ−バ)優占草地の利用はできる限り避け、チモシ−、ケンタッキ−ブル−グラスなど影響の小さい草種の優占草地を利用すべきである。(ラジノおよびシロクロ−バは回復が早い。)また、11月以降の放牧利用は翌春の枯葉による被覆も少なく、むしろ再生に好影響があると思われる。