【指導参考事項】
収穫乾燥体系に関する試験
場所・科名  道立十勝農試 農業機械科
課題名  飼料作物の収穫調整機械に関する試験
試験年次  昭和41〜46年

・ 目 的
 畜産経営の近代化を促進するためヘイキュ−バの実態を調査し、飼料価値の向上、飼料給与の省力化、輸送経費の節減など新しい粗飼料生産方式を作出す技術体系の確立を図る。

・ 試験方法
 1. 期日  昭和46年10日〜7月12日、10月25日〜26日
 2. 場所  幕別町  十勝農協連種畜牧場
 3. 供試機  アトラスGT2.5型 (デンマ−ク)
 4. 調査方法
  (1) 温度と製品水分、材料水分と供給量
  (2) 製品水分と成形状態、燃料消費量、冷却方式
 5. 供試材料
  混播牧草 (禾本科68.1%、豆科31.9%)
  ビ−トリ−フ及びビ−トパルプ 


・ 試験結果
 1. 吸引ファンの開度別風速は最大約70m/secを示した。
 2. 製品流量はほぼ安定したときで500kg/h前後、瞬間最大で約900kg/hであった。本機の乾燥工程では充分の能力が出されているが、(蒸発量2.500kg/h)成形機の処理能力が発揮されるに至っていない。したがって、年間を通じて能力的な稼働はむずかしく、草質の改善、草種の選定、形成機の改良叉は増設などを検討しなければ、経費の節減を計ることは困難である。
 3. 製品水分によって形成状態は大きく変化し、15%程度が良好であった。
 4. 冷却処理をすることによって、約30分で室内温度と平行となり、無処理に比較して製品の破壊が少ない。
 5. 牧草、ビ−トパルプ、ビ−トリ−フの成分含量では牧草豆科のアルファルファが最も高く、禾本科については養分損失量が増大するので、適期収穫が特に絶対条件である。ビ−トリ−フは刈遅れの牧草より成分含量は多く、飼料価としても製品化の価値がある。叉農家収入も増大し、今後の能率的収穫方式が要求されるが、ビ−トパルプは操業時間を伸ばすには良いが、家畜飼料として製品化する意味はない。(ビ−トパルプ、ビ−トリ−フとも乾燥成形には成功した。)
 6. 現在の輸入ヘイキュ−ブは33円/kg程度で販売されており、これに対抗するとすれば1日10時間、年間150日操業の場合1時間当り1100kgを製品化しなければならず、叉1日20時間、年間150日では毎時600kgの製品を作らなければならない。
 7. ビ−トリ−フは既存の機械でも充分収穫が可能であるが、ステ−ジをわけ、能率的に精度高く実施するには一部改良を要する。

・ 主要成果の具体的デ−タ
 1.  天候の影響が比較的少なく、加工・調整の原料ロスが極めて少ない。
 2.  貯蔵中の変質が少なく、貯蔵施設の容積が少なくて良い。叉製品の運搬が容易である。
 3.  給与量の計測、計画的貯蔵が可能で、し好性に富み、給餌のムダがない。
 4.  生草中の栄養価をそのまま残した製品であり、商品性が高く、流通性に富んでいる。
 5.  給餌が容易で機械化し易い。
 6.  添加物による製品の調整が出来る。
 7.  加工・調整時間が短い。
 8.  施設費が高い。
 9.  圃場が集団化し、施設の周囲で原料草を確保しなければならない。
 10. 製品単価が高い。

 図1 ファン開度と風速



 図2 製品水分と正形割合

                製品水分 (%)


 図3 処理別温度変化と経過時間

                 経過時間 (分)


 図4 操業日数と製品価値

               時間当り製品量 (kg/h)


 表1 (保証成分)
  風乾物中 (%) 乾物中 (%) 可消化蛋白質
/粗蛋白質
水分 粗蛋白質 可消化蛋白質 不消化蛋白質 粗蛋白質 可消化蛋白質 不消化蛋白質
チモシ−
(刈遅れ1番)
原料 9.25 7.46 5.33 2.13 8.22 5.87 2.35 71.4
製品 13.63 6.85 4.72 2.13 7.91 5.47 2.44 69.2
チモシ−
(2番)
原料 10.09 11.27 7.72 3.54 12.53 8.59 3.94 68.6
製品 14.30 10.43 6.61 3.81 12.15 7.70 4.46 63.4
アルファルファ 原料 12.66 18.16 14.08 4.08 20.80 15.98 4.82 76.8
製品 16.50 16.60 12.30 4.30 19.88 14.72 5.16 74.0
オ−チャ−ド 原料 8.12 7.31 5.32 1.99 7.96 5.79 2.17 72.7
製品 12.57 6.18 3.93 2.25 7.07 4.49 2.58 63.5
ビ−トパルプ 原料 13.20 5.42 3.30 2.12 6.25 3.81 2.44 61.0
製品 17.78 4.12 2.49 1.62 5.02 3.04 1.98 60.6
ビ−トリ−フ 原料 14.44 9.40 7.55 1.92 10.99 8.74 2.31 79.5
製品 12.46 8.21 6.53 1.67 9.45 7.52 1.93 79.6

 表2 (オ−チャ−ドの期別栄養価)
  草丈
(cm)
葉の割合
(%)
蛋白質 脂肪 繊維 カロチン カルシウム 消化率
生育期 15〜25 80〜100 22 5 20 15 0.9 80〜85
出穂前 40〜50 60〜80 17 4 25 10 0.5 75
出穂始期 70〜90 40〜50 12 3 28 5 0.3 70
開花結実 110〜140 10〜20 6 1 35 1 0.1 40〜50

 表3 (オ−チャ−ド部位別成分)
  蛋白質 脂肪 繊維
12.1 3.5 25.1
5.0 1.6 35.7
13.8 5.7 16.4

 表4 (適期刈取による降雨と品質の損失率 1番草)
  乾  物
無降雨 (機械的損失含まず) 8.7 16.5 13.8 22.6
 〃   (機械的損失を含む) 14.7 22.3 32.7 38.6
降 雨 23.7 34.7 40.4 49.7
降雨 1〜2回 (1〜20mm) 18.9 22.9 27.8 43.6
 〃  5〜6回 (12〜63mm) 27.1 38.3 49.8 54.2