【指導参考事項】
積雪寒冷地帯における肉用牛の簡易越冬に関する試験成績
(春分娩雌牛の施設処理飼養効果と哺乳子牛の発育に及ぼす影響について)
(昭和43〜45年)
新得畜試 肉牛科

・ 目 的
 積雪寒冷地帯における肉用牛生産経営における越冬施設費の軽減を目標として繁殖成雌牛の退官性能並びに子牛の発育調査を行い飼養法、施設改善を通じて経営合理化を図る。

・ 
試験方法
年次 供試
品種
処理別頭数
閉鎖畜舎 開放畜舎 シェルタ−(Ⅰ) シェルタ−(Ⅱ) シェルタ−(Ⅲ)
43 H種 5 5 10
44 5 5 5 5 20
45 5 5 5 15
  5 10 15 10 5 25
  ※ シェルタ−(Ⅰ)は粗飼料自由給飼  (Ⅱ)80%制限区  (Ⅲ)60%制限区

・ 試験成果の概要
 (1) 施設処理(閉鎖畜舎区、開放畜舎区、シェルタ−区)による成雌牛の越冬明けまでの体重推移、飼料消費量、養分摂取量については、処理差はなく成熟雌牛は妊娠期粗飼料単用給与で微増体を示し、養分摂取量においては乾牧草品質55点評価(TDN45)のときTDN115%、49点(TDN43)のとき95%摂取した。寒冷条件によるエネルギ−損失量は超過摂取TDNの50%前後と推定された。
 (2) 栄養処理による体重減少は極めて高く80%制限区で越冬明けまで修正体重で−39.2kg、60%制限区で63.0%、寒冷によるエネルギ−損失量は自由給飼区より少ない傾向が
認められた。
 (3) 子牛生時体重、哺乳期発育は年次により差があったが標準発育を示した。
 (4) 受胎率は普通であったが飼料制限区がやや低かった。
 (5) 血液諸性状については健康値変動内で処理差が認められなかった。

・ 主要成果の具体的デ−タ
 (1) 体重推移(越冬明修正値)
昭和43 昭44 昭45
処  理 開始時
(12.9)
越冬明
(3.2)
処  理 開始時
(12.22)
越冬明
(4.12)
処  理 開始時
(12.21)
越冬明
(3.28)
開放畜舎区
シェルタ−区(Ⅰ)
    閉鎖畜舎区 100 95.4      
100% 101.9 シェルタ−区(Ⅰ) 100 96.6 開放畜舎区 100 104.5
100% 101.4 シェルタ−区(Ⅱ) 100 93.0 シェルタ−区(Ⅰ) 100 100.3
    シェルタ−区(Ⅲ) 100 89.3 シェルタ−区(Ⅱ) 100 96.8

 (2) 養分摂取量(越冬明修正値)
昭43 昭44 昭45
処  理 DM DCP TDN 処  理 DM DCP TDN 処  理 DM DCP TDN
        閉鎖畜舎区 102.3 123.2 92.7          
開放畜舎区 127.6 122.2 115.3 シェルタ−区(Ⅰ) 107.4 129.6 97.4 開放畜舎区 126.3 120.7 114.3
シェルタ−区(Ⅰ) 128.8 123.2 116.3 シェルタ−区(Ⅱ) 88.5 106.8 80.2 シェルタ−区(Ⅰ) 130.3 124.3 117.9
      シェルタ−区(Ⅲ) 69.6 83.5 63.0 シェルタ−区(Ⅱ) 111.2 106.1 100.6

・ 指導上の注意事項
 (1) 肉用繁殖雌牛(春分娩)の畜舎は防寒防雪用施設として考える場合、最低限の費用でよくその限界は耐用年数並びに畜舎の省力管理機能との関連で検討すべきである。
 (2) 繁殖用雌牛の冬期飼養法は、乾牧草自由給飼可能な条件下では、(採食量1日1頭当り10.5kg、TDN45%程度)養分要求量に対しTDN115%摂取可能で乾牧草単用でも栄養状態良好で越冬可能である。乾牧草を制限給与せざるを得ぬ場合は当然補助飼料を用いるべきである。
 (3) 黒毛和種雌牛を供試していないので早急に試験を必要とするが畜舎施設についての基本的な考え方は変わらない。養分要求量は概ね同じであるから採食量並びに乾牧草品質が上記のものより劣る場合は補助飼料を給与すべきである。
 (4) 本試験は春分娩(3月中心)に主力をおいた試験で厳寒期1〜2月分娩牛などは分娩室収容が当然であるし、施設増加を必要とする。3月の屋外分娩の場合は分娩位置並びに哺乳確認など十分な看視が大切である。