【飛球奨励事項】

昭和46年度　農林登録候補系統　ト−ルフェスク「北海2号」について 農林省北海道農業試験場草地開発第二部牧草第2研究室

1.　育成機関名およびその所在地
　農林省北海道農業試験場(札幌市羊ヶ丘1番地)

2.　育成方法ならびに育成経過
　イ)　育成方法　27株による合成品種法
　ロ)　育成経過　昭和41年度春、アメリカおよびカナダより導入した6品種、すなわち、Fawn、Kenmont、Kentugky45-50、KenwellおよびOttawa　Syn、A、合計2045個体を、個体植で定着させた。そして、これらの材料について、耐病性、各時期の草勢とくに刈取り後の再生等を中心に調査を行い、42年夏早生で、再生力の強い、耐病株として29株を選抜した。そして各選抜株を4つに栄養繁殖し、畦巾50cm、株間25cmで隔離圃場に定着した。その後も、43年6月の開花期まで、諸形質の調査をつづけ、異型系統を淘汰し、最終的には、27系統について任意に交雑させ採種し、北海2号と命名した。なお、育種家種子の採種に際しては、もとの27株の各を、48株に栄養繁殖し、合計1296株(27×48)を隔離圃場に任意い配列して定着させ、46年には精選種子約15kgを得たが、47年には約20kgの採種を予定している。

3.　特性の概要
　イ)　全国的に高収を示す、きわめて広域適応の品種であり、標準品種のKentucky31にくらべ平均して約10%の増収が期待される。
　ロ)　Kentucky31よりも、さらに2〜5日早く出穂期に達する極早生品種である。
　ハ)　収量の季節的分布が良好で、放牧地にとくに適する。
　ニ)　葉の病害にはKentucky31より、やや強いが、雪腐れ病にはKentucky31と同様弱い。
　ホ)　夏枯れには、きわめて強い抵抗性を示す。
　ヘ)　葉色は濃く、かつ春先のDCP収量では、Kentucky31よりも50%近い増収をあげる例も示されている。
　ト)　種子収量はKentucky31よりもかなり高収で、また麦角病の発生は見られず、増殖上きわめて有利である。

4.　適応地域および奨励態度
　全国的に適応するが、とくに北海道では、道南および日高地方の山間地帯などで、夏に多少とも収量の減退がみられるようなところ、東北以南では、比較的低標高地の夏枯れ発生地帯に設けられる、主として肉牛あるいは子牛育成用の放牧地に適する。なお、冬枯れには多少弱いので、東北以南の秋播地帯では、播種期がおくれないように注意が肝要である。Kentucky31にかわる、夏枯れにきわめて強い早生の優良品種として奨励したい。

5.　新品種候補名
　ヤマミドリ、ヤマナミ、ヤマビコ、ヤマサチ

6.　試験成績(各場所における試験期間中の総合計収量)

地 域	1)試験場所	播 種 期	刈取年次および 年次内刈取回数			Kentucky31を100としたときの指数						2)標準品種 (Kentucky31) の収量 (kg/a)	3)系統間 の差の 有意性
			昭44	45	46	北海1号	2号	3号	4号	5号	6号
北 海 道	天北農試	昭44春	1	3	3	122	107	112	118	119	114	204	**
	北見農試	〃	2〜3	3	3	116	101	112	111	106	109	190	＋
	根釧農試	〃	2	3	3	120	106	120	112	111	119	179	*
	新得畜試	〃	2	3	3	126	120	121	119	117	122	193	**
	北海道農a	〃	2	3	3	127	113	109	114	122	123	225	**
	〃　　 b	〃	2	5	5	108	107	106	107	109	107	180	NS
	(収量指数の平均値)					120	109	113	114	114	116	−	−
東 北 ・ 北 陸	青森畜試	43秋	5	5	5	108	107	103	107	99	−	288	NS
	山形農試	44秋	−	5	−	140	118	132	144	139	138	103	**
	北陸農試	43秋	5	5	−	128	116	105	106	105	89	(900)	**
	富山畜試	〃	4〜5	5	−	104	100	110	108	98	−	(1.406)	NS
	(収量指数の平均値)					120	110	112	116	110	114	−	−
関 東	草地試	43秋	3	5	−	95	108	103	97	92	−	(931)	NS
	群馬農試	〃	6	6	−	78	103	99	96	67	−	296	**
	茨城畜試	〃	6	7	−	91	103	100	96	81	84	376	**
	山梨農試	〃	5〜6	5〜6	−	112	115	104	110	97	99	374	**
	(収量指数の平均値)					94	107	101	100	84	92	−	−
四 国 ・ 九 州	香川農試	44秋	−	6〜7	5〜6	98	112	110	113	92	94	323	**
	〃　(現地試)	43秋	3〜4	−	−	93	117	98	93	75	79	(848)	**
	大分畜試	44春	7	7	7	90	102	98	98	79	−	(1.982)	*
	九州農試a	43秋	3〜4	5〜6	5〜6	119	120	135	133	98	−	256	**
	〃　　 b	〃	6	6	7	95	124	125	113	55	−	194	**
	鹿児島農試	〃	7〜10	7〜8	5〜6	100	99	111	106	82	86	366	**
	(収量指数の平均値)					99	112	113	109	80	86	−	−

　1)　a.　出穂期刈り　　b.　適期刈り
　2)　(　)は生草収量
　3)　**1%、*5%水準でそれぞれ有意、＋有意差があるとは判断しないが10%水準で有意、NS有意差なし