【指導参考事項】
1. 研究課題名  直播栽培における発芽促進(CaO2)に関する試験
2. 期 間  昭和48〜49年
3. 担当研究室  北海道農試
            農芸化学部 泥炭地研究室

4. 目 的
 CaO2およびヒドロキシイソキサゾ−ル剤による種子粉衣が直播水稲の発芽・苗立に対する効果を確認する。

5. 試験研究方法
供試圃場: 美唄市泥炭地研究室構内高位泥炭地水田
供試品種: 「イシカリ」
処理設計: 耕耘・播種−代かき慣行播種、代かき直後(30分後)播種、
無代かき乾田播種(耕耘砕土−鎮圧−溝条播種−灌水)。
種子粉衣−粉衣量は浸漬籾重に対してCaO2(製品名カルパ−)
25%(3.1g/m2)ヒドロキシイソキサゾ−ル(タチガレン)3%(0.37g/m2)。
施肥量  : NO6、P2O5、0.8、K2O0.6kg/a
播種量  : a当り1.8l
播種期  : 5月20−23日

6. 成果の概要
 1. 代かき直後播種による種子埋没は、慣行表面播種(苗立歩合67〜68%)に比べて、苗立歩合やや劣ったが、CaO2粉衣によって慣行播種と同等(昭和48年)、またCaO2+タチガレン混用粉衣では慣行播種よりも著しくまさった(昭和49年)。
 2. 代かき直後播種による種子の埋没深は、昭和48年3mm程度、49年ではほとんど生じずすなわち浮苗、枯死浮苗の発生を防止するには不十分な結果となり、かつ以降の生育も不調、乾物生産、養分吸収、収量にも影響した。とくに、CaO2施用のほうが無施用よりも浮苗、枯死浮苗の発生がいくぶん多かった。
 3. 無代かき乾田播種では苗立歩合があまり高くなく、かつ種子埋没深いほど苗立歩合劣ったが、CaO2およびタチガレン各々単独でも混用処理でも苗立性改善となり、とくに混用効果が大きかった。なお、種子埋没深が深いほど根の伸長は劣るが、埋没深6〜8mmのほうが個体生育偏差が比較的小さく安定した生育で分けつ盛期以降の生育、養分吸収まさり高収であった。

7. 主要成果の具体的数字
 苗立歩合と水稲初期生育
耕耘・播種 粉衣処理 苗立歩合
(%)
苗立数
(本/m2)
草丈
(cm)
最長
根長
(cm)
茎葉
生体重
(g/100本)

48
代かき慣行播種 無処理 1 67.1 242 6.1 6.8
代かき直後播種 無処理 2 52.9 190 7.8 9.3
カルパ−25% 3 67.2 242 8.3 9.6

49
代かき慣行播種 無処理 4 68.1 210 11.8 12.1 10.0
代かき直後播種 無処理 5 65.3 187 14.0 11.0 11.6
カルパ−+タチ 6 87.5 250 16.0 9.6 9.0







播種鎮圧 無処理 7 57.1 222 14.9 8.0 11.4
埋没深 3.5mm カルパ−+タチ 8 74.3 289 15.0 8.9 12.7
溝表面播種 無処理 9 48.6 189 13.8 9.3 10.0
埋没深 6.0mm カルパ−+タチ 10 67.1 261 15.4 8.0 11.0
溝播種覆土 無処理 11 42.9 167 14.0 7.9 11.4
埋没深 8.6mm カルパ−+タチ 12 68.6 267 14.8 9.2 12.5
  注) 初期生育は、昭48年播種後19日、49年25日。



 出穂期と収量構成要素
出穂期
(月.日)
穂数
(本/m2)
総籾
×103
/m2
登熟
歩合
(%)
精玄
米重
(kg/a)
収穫期
N吸収
(g/a)
1 8.7 659 23.2 88.1 50.7 1075
2    5 491 23.3 90.8 53.0 1135
3    6 578 23.9 88.8 53.1 1062
4 8.6 985 29.8 79.3 56.6 1239
5    7 883 29.7 85.0 60.9 1171
6    6 847 25.1 90.6 56.1 1083
7 8.5 705 30.8 84.2 62.7 1328
8    4 797 33.5 81.8 66.3 1311
9 8.7 710 33.1 79.4 62.5 13.4
10    5 749 32.8 85.1 68.2 1330
11 8.7 780 35.3 77.4 65.6 1359
12    5 780 36.7 79.9 71.6 1510

8. 普及指導上の注意事項
 1. 気象条件によっては、種子粉衣のほうが無処理よりも浮苗発生が多くなるので浮苗防止との関連で、埋没深、苗立性の検討が必要である。
 2. 無代かき乾田播種については、継続検討する。