【普及奨励事項】
1. 課題の分類  園芸、果樹 第1分科会 (育種)
2. 研究課題名  豊後梅 (大野系)優良系統育成試験
3. 期 間  (昭和40〜49年)
4. 担 当  道南農業試験場園芸科
5. 予算区分  道単
6. 協力分担  なし

7. 目 的
 最近府県産梅苗木の移入が多いが、この中に本道の風土に不適な品種系統の混入が少ないので、豊後梅を中心にこれら品種系統の適否を知る。

8. 試験研究方法
1. 大野優良豊後梅 6. 東北産豊後梅 11. 滝峡小梅
2. 大野在来豊後梅 7. 長      束 12. 節   田
3. 道央在来豊後梅 8. 南  高   梅 13. 玉   英
4. 北陸産豊後梅 9. 小      梅 14. 稲   積
5. 関東産豊後梅 10. 青      軸 15. 白 加 賀

9. 結果の概要・要約
 通用豊後梅と称される品種は、南は九州から北は北海道に至まで実梅として栽培されているが、元来豊後梅とは梅と杏の雑種の中でも梅よりはむしろ杏に近い梅性の杏とも云われるものであり、夫々の地方により系統が異なりその特性の差は北海道の風土に対する適否を左右することが判明したので、昭和40年から道南一円に分布する実梅を現地調査した結果、上記区別の6系統に分類できたので、昭和44年に夫々の系統の穂木を集めて、李実生砧により苗木をつくり育成比較をつづけてきたのもであり、同時に参考として府県で在来実梅として栽培されてきた代表的品種も苗木として導入比較に加えた。
 現在までに判明したところでは、大野を中心にとした道南において豊後梅と称される系統と、その中から選抜した優良系統および道央、北陸、関東の各地方において豊後梅と称されてきた系統は、実梅として本道の風土に適し、中でも大野優良豊後梅は収量品質共優れるが、東北産豊後梅は結実関係において本道不適であり、収量品質共にいちじるしく劣ることが判明した。
 又、参考品種として検討した豊後梅以外の府県品種は凡て結実不能であり、中には樹体の越冬すら困難な品種もあり、従来伝われてきたように北海道における実梅としては豊後梅系以外にはないことを再確認する結果に終わった。
 尚、豊後梅系の不適系統および豊後系以外の品種の中、冬期間枝幹に寒凍害をうけない品種でも、春期開花前後の低温によると考えられる雄芯の捻転下垂、葯基部の腐朽、花粉粒の異状、柱頭の異状等の現象が認められ、又、雄芯や花弁の数や大きさの多く、大きいもの程、障害をうけ易く、花托毛茸の多く花托に光沢の少ないもの程障害が少ないように見られ,果実についても縫合線の浅く果頂部の凹んだ果形の球形の小果のもの程良好な生産をするように見うけられた。

10. 主要成果の具体的数字


/














枝  梢




果  実 収  量




(g)



























































果  数 (ヶ) 果  重 (g)
47
48
49
47
48
49
大野
優良






5 18

25
36 120 145 301 1332 3240 4183 8755 30.9
大野
在来





5

6


30

35




16 29 88 133 576 1044 3735 5355 38.1
道央
在来
5

6
30

40
0 33 36 69 0 1056 1238 2294 33.2



5

6
30

40
0 14 26 40 0 462 949 1411 34.8


5

6
30

35
0 33 18 51 0 990 576 1566 31.0





12

15
40

60



0 2 8 10 0 104 496 600 57.0




























6

7


25

30








0 0 1 1 0 0 25 25 25.0
















9

12
50

60

11. 普及指導上の注意事項
 北海道において実梅栽培をする場合には大野優良豊後梅が適当と考える。
 東北産豊後および豊後梅以外の梅品種は北海道の風土においては実梅として不適当と考える。