【指導参考事項】
1. 課題の分類  豚 繁殖
2. 研究課題名  寒冷地における豚人工授精の実用化に関する試験
3. 期 間  (昭和47〜49年)
4. 担 当  滝川畜試、種畜部、養豚科
5. 予算区分  総合助成
6. 協力分担  なし

7. 目 的
 寒冷地に適応する豚人工授精技術の実用化を図り、本道における豚人工授精の普及と種豚改良の推進に貢献する。

8. 試験研究方法
 (1) 豚精液注入器の改善
 (2) 豚精液低温保存法の確立
 (3) 低温保存豚精液の現地輸送と授精
    (札幌、浦臼、砂川、新十津川、一巳、知内、ニセコ、三川、伊達)

9. 結果の概要・要約
 (1) ポリパイプを利用して、適度な硬度で子宮頸への挿入が分かり易く、深部へ挿入されるため逆流が少ない注入器を試作した。
 (2) 豚精液濃厚部分約100m1を分離採取、トリス・クエン酸緩衝粉乳糖液で3〜4倍に稀釈、温水の入ったマホ−ビンに浸漬、冷蔵庫から保冷庫に収容、温度降下、保存するという簡易な方法で1週間授精可能活力を保持した。
 (3) 1〜7日間低温保存した豚精液を37℃、20分間機械的加温振温後授精し、受胎率7.33%、平均産子数8.6頭を得た。又、40℃温水で、10分間手振りによる加温振温後授精し、受胎率78.6%、平均産子数8.8頭と一応の成果を得た。
 (4) 低温保存精液を汽車又は自動車で輸送、飼養者が手振りによる加温振温を行って授精し、受胎率65.5%、平均産子数9.5頭を得た。

10. 主要成果の具体的数字
 1 発情中1回は10m1以下の逆流であった個体割合
未経産豚 経産豚
69.2% 96.1% 84.4%

 機械的加温振温処理の受胎状況
保存日数 1〜2 2〜3 3〜4 4〜5 5〜6 6〜7
受胎/授精 7/11 7/10 2/2 2/3 2/2 2/2 22/30
平均産子数 7.4 10.4 3.5 8.0 6.0 11.5 8.6

 手振りによる加温振温の受胎状況
保存日数 1〜2 2〜3 3〜4 4〜5 5〜6 6〜7
受胎/授精 5/5 8/11 5/6 6/8 3/4 6/8 33/42
平均産子数 11.0 7.7 9.4 6.4 7.0 10.2 8.8

 現地輸送授精成績
保存日数 1〜2 2〜3 3〜4 4日以上
受胎/授精 21/28 8/13 3/7 8/13 40/61
平均産子数 9.9 10.0 7.3 8.9 9.5

11. 今後の問題点
 (1) 人工授精技術普及指導のための施策が必要である。
 (2) 人工授精を効率的に利用するための雌豚発情同期化技術と受胎成績向上のための交配適期判定技術の確立が急がれる。

12. 次年度の計画(成果の取扱い)
 ホルモン剤利用による雌豚の発情同期化と低温保存技術を組合わせ、効率的人工授精利用法の検討を行う。
 成果は学会、研究会に発表する。