【指導参考事項】
1. 根釧農試  肉牛 飼養
2. 研究課題名  地域間協業による肉資源の確保と増産に関する試験
          −草地酪農地域における乳用雄子牛の生産方式にかんする試験−
3. 期 間  昭和46〜48
4. 担 当  管理科、酪農科(五十嵐義任、蒔田秀夫、長田和夫)
5. 予算区分  総合助成
6. 協力分担  中央農試・新得畜試

7. 目 的
 乳用雄子牛の肉利用を目的とした素牛の生産方式を確立する。

8. 試験研究方法
 (1) 供試牛〜各年次とも4月下旬〜5上旬生れの乳用雄子牛各8頭、合計24頭
  体重差〜40kg水準(A群) 50kg水準(B群)
  毛 色 〜黒がち・白がち          各半数ずつ
 (2) 試験項目
  1) 肥育用素牛の選定技術と哺育技術
  2)    〃   の放牧育成技術
  3)    〃   の舎飼育成技術
 (3) 飼養法と管理
  1) 哺乳法と離乳〜定量哺乳・繁留哺育(代用乳1頭700g/日、3年次全乳1頭4.0kg/日、朝夕2回給与) ・除角は〜パイプ焼烙法で2週令 ・人工乳乾草を不断給餌 ・離乳は40〜45日令
  2) 放牧法〜60日令で全放牧。放牧面積1頭5.0a群別分離放牧。群別中央掘立小屋で配合飼料自動給餌110令〜120令より制限給与、漸次減少1頭1.0kg/日まで、乾草少量給与。
    去勢〜放牧開始1ヵ月目(90日令)野外無観血法で
  3) 舎飼〜放牧時(180日令)各群より半数ランダムに選定中央農試へ移送。残る半数をA群、B群ごとに追込牛房で飼養1年次ヘイウエフアを2・3年次草サイレ−ジと飽食、各年次配合飼料1頭1.0kg/日給与
 (4) 調査項目
  1) 発育調査(測尺2週間毎)
  2) 哺乳量、配合消費量と給与量
  3) 放牧地の状態〜草量・草丈・被度・植生比率・一般組成
  4) 給与飼料の一般組成

9. 結果の概要・要約
 ① 子牛の受入日令は5日前後であり、離乳45日前後、全放牧60日令、180日令で収牧(11月上旬)し、稲作地帯へ各群ランダムに半数を選び輸送した。
 ② 離乳まで1頭当り飼料の摂取量は、代用乳で1年次27.02kg、2年次27.5kg、3年次全乳160kg、人工乳でAB群それぞれ1年次11.3,11.0kg、2年次16.5,18.0kg、3年次14.6,18.5kgであった。又離乳後から放牧期間中の飼料摂取量は、人工乳:幼牛配合、若牛配合それぞれ1頭当り平均1年次65.05,71.5,30.0kg、2年次101.3,105.0,34.0kg、3年次77.5,127.0,30.0kgで人工乳についてB群が、A群より4.9kg/頭多く摂取した。
 ③ 受入時の体重差が180日令の体重に及ぼす影響は大差がなく、毛色のちがいについても同様の傾向にあった。特に放牧期間中の日増体重はA群993g、B群953gであり、A群の発育率は良好であった。しかし年次別に分析した結果、3年次目の群間に有意さが認められた。(白>黒)これは、年次始の選定対照頭数が要因と思われた。
 ④ 代用乳給与群と全乳給与群の放牧期間中の伸率は体重において、代用乳A群>全乳A>代用乳B>全乳Bの順、その他の部位については全乳A>代用乳A>代用乳B>全乳Bの順の傾向にあった。
 ⑤ 放牧期間は7月始めより11月上旬までで、イネ科主体混播草地で草量、放牧初期平均10a当り769kg(マメ科35.2%)、中期1.114kg(マメ科23.8%)、末期564kg(マメ科6.8%)で1頭当り放牧面積は5.0a(体重85.0kg〜200kg)で放牧末期に若干不足した。
 ⑥ 舎飼期間ヘイウエフア給与について試験した結果、育成牛の摂取量は体重比2.0%程度で(濃飼1.0kg/頭)で順調な発育が得られた。
 ⑦ 舎飼期における粗飼料主体育成は、草サイレ−ジ(高水分)給与群では日増体平均423g、ヘ−ジウエフア群で草サイレ−ジ給与群では、あまり増体は望めないが、粗飼料が充分確保出来れば、この程度の発育で舎飼期間飼養して置く事も考えられ、次期放牧による増体に期待できる。
 ⑧ 全期間を通した3 ヵ年の体重180日令ではホル協♂標準発育値よりわずかに下廻った程度の発育値で良好であった。舎飼育成期360日令では、標準下限より稍々下廻った。しかし各育成牛とも健康状態は良好であった。

10. 主要成果の具体的数字
 1.成長推移(3ヵ年平均値 ( )内は日増体:g) 各12頭
日令 群別 体重(kg) 体高(cm) 体長(cm) 胸深(cm) 胸囲(cm) 腰囲(cm)
開始時 A 41.3 74.1 69.3 28.5 75.1 67.2
B 48.0 75.4 71.1 29.7 78.6 70.1
60日 A 79.1(0.630) 85.2 87.2 35.9 94.5 105.1
B 87.5(0.658) 87.2 88.2 37.0 98.2 110.1
180日 A 198.2(0.993) 105.1 111.7 48.6 127.8 161.9
B 201.9(0.993) 105.2 113.3 49.5 128.5 162.8
360日 A 259.9(0.543) 122.7 133.7 58.7 154.2 174.4
B 300.4(0.547) 122.4 134.1 59.3 153.8 175.1

 2. 毛色を異にした平均発育値(3ヵ年間各12頭)
日令 毛色 体重 体高 体長 胸深 胸囲 腰囲
開始時 白がち 44.2 74.6 70.5 29.2 76.7 67.7
黒がち 45.1 74.9 69.9 29.4 77.0 69.6
60 84.5 86.6 88.1 36.9 96.7 108.9
82.1 85.9 87.4 36.7 96.0 106.8
120 149.9 97.5 103.6 44.4 116.3 135.0
145.5 97.0 101.9 43.7 114.5 135.6
180 204.1 108.2 116.3 50.2 132.6 165.4
196.4 107.3 114.4 49.2 130.4 163.8

 3. 放牧地の状態(3ヵ年平均値)
調査時期
草量
(kg/10a)
草丈
(cm)
植生比率
(%)
被度
(%)
イネ科 マメ科 イネ科 マメ科 雑草 枯草 イネ科 マメ科 雑草 枯草
放牧開始
(7月上旬)
A 736 38.1 22.7 54.7 37.8 3.5 4.0 45.0 49.6 2.9 0.3
B 802 39.9 21.9 61.1 32.5 3.0 3.4 50.8 38.1 6.1 1.0
放牧中期
(8月)
A 1.122 41.2 22.0 69.7 22.6 3.4 4.3 53.6 43.0 1.2
B 1.106 39.8 23.5 65.4 25.0 3.6 5.9 56.0 38.6 2.5 1.9
放牧期
(10下〜11上)
A 557 15.3 8.4 64.4 6.8 1.1 27.6 68.3 20.5 2.0 7.2
B 570 16.5 9.4 68.5 6.8 1.1 23.2 65.4 23.1 1.4 8.9

11. 今後の問題点
 1. 哺育期は3・4月頃とし草地の活用期間を長くすることにより配合飼料の軽減を主眼とした肥育素牛の育成が望ましい。
 2. 夏期放牧地の自動給餌槽は風雨にさらされない様配慮が必要であり、頭数に対しての排出口の調節を考慮する。
 3. 素牛選定については、体重も一考を要する(40kg以上)が体型資質の点について調査する必要がある。
 4. 地域間の分業と流通の組織化、利益損失の配分法
 5. 市場の価格変動に応じた対策の究明

12. 成果の取扱い