網走管内における　てん菜の施肥量に関する試験
　北見農試・土壌肥料・特用作物科
（昭和48〜50年）

目　的
　てん菜について、良質多収を得るための施肥量を検討する。

試験方法
　試験地：15ヶ所延38試験地

試験地 土壌 48年 49年 試験地 土壌 49年 50年
直播 移植 直播 移植 移植 移植
（ホクレン管内） 　 　 　 　 　 （日甜管内） 　 　 　
女満別 褐色火山性土 ○ ○ ○ ○ 美幌 褐色火山性土 ○ ○
南網走 〃 ○ ○ ○ ○ 常呂 褐色低地土 ○ ○
西網走 黒色火山性土 ○ ○ 　 ○ （北糖管内） 　 　 　
東網走 〃 ○ ○ ○ ○ 北見 褐色低地土 ○ ○
斜里・以久科 褐色低地土 　 　 ○ 　 訓子府 湿性黒色火山性土 ○ ○
清里 灰色低地土 ○ ○ ○ ○ 遠軽 疑以グライ土 ○ ○
小清水 未熟火山性土 　 ○ ○ ○ 湧別 〃 ○ ○
斜里・大栄 〃 　 　 ○ 　 紋別 褐色低地土 ○ ○

供　試　品　種　　ソロラーベ（ホクレン）　カーベポリ（日甜）　モノヒル（北糖管内）
試験区の構成　　N　4水準（12、15、18、21）×K2O　4水準（10、15、20、25）…（ホクレン管内）
　　　　　　　　　　　N　4水準（12、16、20、24）×K2O　2水準（15、25）・・・・・・・・・（日甜、北糖管内）
　　　　　　　　　　　P2O5＝25、mgO＝5、B2O3＝0.3kg/10aは共通、北糖管内堆肥施用。
供　試　肥　料　　チリ硝石（N4kg/10a相当分）および試作化成

試験成果の概要
　（１）各試験地とも一般農家の平均をかなり上廻った菜根収量を挙げ、全般に高い収量水準の試験結果が得られた。
　（２）直播栽培よりも移植栽培の試験で収量、糖分、品質が優っていた。
　（３）菜根収量に対するN用量の反応は一般に鈍く、N15〜16kg/10aまではやや増収傾向を示したがN18kg/10a以上の増施効果はほとんど認められなかった。
　（４）N用量の増加に伴って頸葉重が増加しT/R比が高まる傾向が認められた。
　（５）N用量の増加に伴って根中糖分の減少および有害性N、Naの増加による不純物価の上昇をもたらし、品質を低下させた。
　（６）Nの反応の土壌による相異は明らかでなかった。
　（７）K2O用量の影響は判然としなかった。
　（８）以上のことから、泥炭土を除く土壌におけるてん菜のNおよびK2O施肥量は、現行の道施肥標準量程度が妥当であり、一般に行われている多肥は収量増にあまり寄与しておらず、N多肥はむしろ、品質を低下させているものと考えられる。

主要成果の具体的データ

　（１）施肥量と収量、品質

年度 地帯別 栽培 項目 茎葉重 菜根重 T/R 根中
糖分		 糖量 収益 有害性　N K Na 不純
物価
試験地 （ｊ/10a） （ｊ/10a） （比） （％） （kg/10a） （千円/10a） mg％ mg％ mg％ −
48年 ホクレン 直播 女満別 6.41 5.80 1.11 14.2 822 44.2 45.5 211 30.2 7.44
南網走 6.41 6.01 1.07 14.1 844 46.0 28.1 205 27.8 6.63
西網走 6.08 5.62 1.09 14.6 823 42.6 25.4 177 30.8 5.36
東網走 5.71 4.64 1.23 14.9 691 34.3 24.1 204 26.8 5.56
清里 5.17 4.97 1.04 13.9 691 37.1 35.5 127 42.0 5.80
平均 5.96 5.41 1.11 14.3 774 40.8 31.7 185 31.5 6.16
移植 女満別 6.57 6.18 1.07 14.5 896 47.5 25.8 173 25.6 5.03
南網走 6.29 6.01 0.88 16.0 962 46.0 21.0 164 23.3 4.36
西網走 5.48 5.59 0.98 15.5 867 42.5 27.0 26.8 6.52 6.52
東網走 5.97 5.24 1.14 15.4 806 38.7 25.7 149 29.4 4.74
清里 4.92 5.18 0.95 14.4 743 38.9 40.0 132 41.8 6.07
小清水 7.36 5.27 1.40 13.3 698 39.7 44.1 178 67.7 8.15
平均 5.93 5.58 1.07 14.9 829 42.2 30.6 161 35.8 5.81
49年 ホクレン 直播 女満別 5.20 4.93 1.05 15.1 748 65.7 29.8 102 19.4 4.04
南網走 3.55 4.80 0.74 15.8 762 63.8 15.3 95 23.8 3.07
東網走 4.94 3.75 1.32 15.4 580 48.3 26.4 104 23.4 3.75
斜里（以） 6.33 5.15 1.23 13.7 708 49.0 41.2 95 54.9 5.94
清里 5.97 5.07 1.18 14.4 729 67.8 35.4 80 48.7 4.84
小清水 6.59 5.71 1.15 14.7 839 77.3 25.9 86 38.7 4.00
斜里（大） 6.97 5.08 137 13.8 700 67.9 33.2 89 40.6 4.86
平均 5.65 4.93 1.15 14.7 724 65.7 29.6 93 35.6 4.36
移植 女満別 4.32 4.78 0.75 16.1 929 78.3 26.2 84 12.8 3.15
南網走 3.00 5.25 0.57 16.2 852 70.5 14.1 86 18.3 2.61
西網走 4.63 5.04 0.92 15.7 793 67.4 150 72 18.2 2.41
東網走 4.46 4.17 1.07 16.6 693 54.4 24.7 87 14.7 2.98
清里 6.76 6.02 1.12 14.9 900 81.9 29.8 69 39.8 3.96
小清水 6.25 6.14 1.02 15.6 962 83.6 32.8 88 25.1 3.99
平均 4.90 5.40 0.91 15.9 855 72.7 23.8 81 21.5 3.18

主要成果の具体的データ

栽培 項目 茎菜重 菜根重 T/R 根中糖分 糖量 収益 有害性　N K Na 不純物価
年度　地帯別 試験地 （t/10a） （t/10a） （比） （％） （kg/10a） 千円 mg％ mg％ mg％ −
49 日甜 移植 美幌 4.25 5.00 0.85 15.8 791 66.8 29.3 69コ 31.9 3.65
常呂 3.61 5.19 0.70 16.7 867 69.6 30.1 24.1 3.30 3.30
平均 3.93 5.10 0.78 16.3 829 68.2 29.7 67 28.0 3.48
北糖 移植 北見 4.36 6.25 0.70 15.4 962 85.4 28.8 25.4 3.82 3.82
訓子府 3.15 5.85 0.54 15.7 912 85.4 35.7 84 22.4 4.14
遠軽 4.58 5.50 0.83 15.4 845 79.0 47.9 112 20.2 5.41
湧別 2.96 5.20 0.57 14.2 740 74.2 71.8 30.3 7.40 7.40
紋別 4.36 6.25 0.70 15.4 962 69.7 28.8 83 25.4 3.82
平均 3.81 5.74 0.66 15.2 873 80.2 44.9 96 23.2 513
50年 日甜 移植 美幌 3.34 4.86 0.69 17.9 868 66.5 16.3 159 15.1 3.43
常呂 2.71 3.98 0.68 16.9 671 52.5 26.1 140 3L3 4.26
平均 3.03 4.42 0.69 17.4 770 59.5 21.2 150 23.2 3.85
北糖 移植 北見 1.85 4.44 0.42 14.6 648 59.9 38.3 102 23.7 4.94
訓子府 3.83 4.37 0.88 16.3 710 58.7 43.6 167 35.6 6.00
遠軽 2.86 4.14 0.69 12.7 526 55.0 84.7 153 44.9 10.92
湧別 2.67 4.83 0.55 16.0 772 66.6 72.4 148 25.6 7.40
紋別 4.00 5.67 0.71 15.2 861 79.6 46.0 161 18.3 6.10
平均 3.04 4.69 0.65 15.0 703 64.0 57.0 146 29.6 7.07

普及指導上の注意事項
　（１）有機物の補給ならびに土地土壌改良による地力増強対策および輪作の励行を基本とする。
　（２）褐斑病により有害性非糖分は増加するので、その防除には充分留意すること。