【普及奨励事項】

空育103号の特性概要

1. 特性一覧表                                                  北海道立中央農業試験場 稲作部育種科

系統名:空育103号 組合せ:北海222号×道北1号


長所
1.多収
2.米質がヤヤ良
短所
1.分けつが多いので穂揃いが
不整になりやすい
2.割籾が多い
奨励地帯
および普及
見込面積
空知.石狩.後志.胆振.日高.渡島北部.桧山北部.各地帯の平坦地.および上川中南部.留萌中南部地帯の一部。34000ha
系統・品種
/ 形質
空育103号 対照ゆうなみ 比較イシカリ 比較キタヒカリ
早晩性 中生の早
穂数型
中生の早
穂数型
中生の早
偏穂数型
中生
偏穂数型
草 型 穂数型 穂数型 偏穂数型 偏穂数型
出穂期 ①8月4日 ②(8月8日) 8月5日(8月9日) 8月5日(8月9日) 8月6日(8月11日)
成熟期 ①9月26日(9月30日) 9月27日(10月2日) 9月26日(9月30日) 9月31日(10月2日)
稈 長 ①65cm(59cm) 63(57cm) 66(59cm) 68(58cm)
穂 長 ①17.4cm(15.8cm) 16.4cm(14.6cm) 18.2cm(16.2cm) 15.9cm(14.8cm)
m2当り
穂数
①553本(588本) 552本(540本) 478本(505本) 484本(510本)
芒の多少、長短 極稀.極短芒
ふ先色 黄白 黄白 黄白 黄白
脱粒性
耐倒伏性 ヤ強 ヤ強 ヤ強
葉イモチ病 ヤ強
穂イモチ病 ヤ強 ヤ強 ヤ強〜強


障害型 ヤ強 中〜ヤ強 ヤ強
遅延型 ヤ弱 ヤ強
a当り
玄米重
①56.5kg(53.0kg) 54.7kg(49.9kg) 52.9kg(49.7kg) 49.2kg(47.2kg)
玄米
千粒重
①22.3g(23.0)g 22.2g(22.6)g 21.5g(22.4)g 21.0g(21.9)g
玄米
整粒品質
上中 上下 上中 上中
検査等級 3等下(4等上) 4等上(4等上) 4等上(4等上) 3等中(3等下)
食 味 ヤ良 ヤ良 ヤ良
調査地 中央農試稲作部 ①冷床苗移植栽培の標肥多肥平均値 
           ②稚苗、中苗機械移植栽培の平均
調査年次 ①昭和49年〜51年の3年 ②稚苗は3年、中苗は2
品種候補名  

      注) 北海222号=マツマエ  道北1号=イシカリ

2. 「空育103号」の特記すべき事項
 初期生育不良地帯における慣行冷床苗手植栽培、機械移植栽培およびこれらの標肥栽培、多肥栽培において「ゆうなみ」より多収良質であり、「イシカリ」に比べても多収である。

3. 「ゆうなみ」に置き替えて奨励する理由
 「イシカリ」とともに道央の基幹品種として栽培されている「ゆうなみ」は、初期生育旺盛で「イシカリ」よりも作り易いため、現在空知南部を中心とする初期生育不良地帯で約34.000ha作付けされているが、米質と耐冷性に難点がある。
 「空育103号」は「ゆうなみ」に比べて米質と障害型耐冷性が優り、「ゆうなみ」同様に穂数確保が容易で作り易く、かつ、「ゆうなみ」「イシカリ」より多収である。したがってこれら地帯における「ゆうなみ」に置き替えて栽培することにより、「ゆうなみ」の欠点がかなり改善されるとともに更に増収が期待される。
 しかし、「イシカリ」に比べて耐冷性、耐病性、耐倒状性が若干劣ること、および「しおかり」よりも登熟性が劣ることから、「イシカリ」「しおかり」の代替品種としては不適である。更に「イシカリ」に次いで割籾の発生率が高い上川中央部における作付けは少面積にとどめるべきである。

4. 「空育103号」の普及見込地帯における現地試験成績の成績の要約

地帯名 対照品種に対する玄米重比率 現地評価
昭和50年 昭和51年
標肥 多肥 標肥 多肥 試験
地数
畄萌中南部 (106) (114) (105) (107) 2 1 1 0
上川中南部 (110) (111) (104) (100) 6 1 5 0
空知中北部 109 (104) 107 (107) 105 (109) 103 (104) 6 3 3 0
空知南部 107 (107) 105 (99) 109 (111) 96 (101) 5 3 2 0
石 狩 112 (113) 97 (99) 114 (104) 133 (113) 4 3 1 0
後 志 102 (103) 104 (105) 101 (116) 111 (110) 3 2 0 1
(倶知安)
胆 振 108 (107)     113 (106)     3 3 0 0
日 高 102 (101)     100 (109) 101 (105) 4 3 1 0
道南北部 102 107 104 106 5 1 4 0
全地帯 106 (105) 105 (107) 106 (107) 106 (104)  

  注) 数字は「ゆうなみ」に対する比率、( )は「イシカリ」に対する比率。