【指導参考事項】
ばれいしょ若種いもに関する試験
(昭和49〜51年)                         道立十勝農試作物科

目  的
 ばれいしょ栽培にあたり種いも切断労力の節減や、切断時におこる病害伝播の回避、機械化促進などから全粒播のできる小粒種いもを確保しようとして、生育の中期から茎葉処理を行う場合の多数技術を検討し、茎葉処理後の貯蔵方法ならびに若種いもの生産力を検定する。また早期に茎葉処理を行うことによって期待されるウイルス病等の感染回避についても調査する。

 試験方法
1.若種いもの生産力検定試験
 (1)供試品種  農林1号、男爵薯
 (2)処理区別  栽植密度(a当):617(606),463(459)、茎葉処理期:7月(22,25,29日) 8月(3,5,13日)、無処理、種いもの大きさ:30g,50g,100g/2,他にウイルス病発生状況を調査する。
2.若種いもの採種に関する試験
 (1)供試品種  農林1号、男爵薯
 (2)処理区別  栽植密度(a当):883(842),617(606),463(459)、茎は処理期:7月(25日,29)、8月(13,5)、無処理、種いもの差異:全粒(約50g)、半截(約100g/2)
3.若種いもの貯蔵に関する試験
 (1)供試品種  農林1号、紅丸
 (2)処理区別  茎葉処理期:7月,8月、無処理、掘取期:処理後2週間目、秋季、貯蔵方法:施設貯蔵庫、普通半地下式貯蔵庫、仮貯蔵庫は吹抜倉庫を含む、貯蔵期間:仮貯蔵は10月末まで、本貯蔵は10月末から翌年4月まで。

試験成果の概要
1.若種いもの生産力検定試験
 ・栽植密度:約460株の標準より密植の約620株がまさったが、旱魃の51年は劣った。
 ・茎葉処理期:葉巻病株も含めた収量は、病株率とも関連するが、処理期の早い方がまさった。健全株では収量差はほとんどないものと推察される。
 ・葉巻病の発病率は、茎葉処理が完全であれば、処理期の早いほど次代では低下した。
2.若種いもの採種に関する試験
 ・小いも数(20〜60g)全粒、密植、茎葉処理期の早い方がまさった。
 ・種いも供給数(20g〜60+60〜120×2)では全粒、半截の差は判然とせず、処理期では早いほど減少の傾向にあった。密植区ほど増加した。
 ・上いもの収量としてみると、半截がまさり、茎葉処理が早いほど減収し澱粉価も低下した(昭51年は8月が高澱粉)
 ・アブラムシ類の寄生、薬剤による防除区で、早いときは6月中旬から有翅虫の寄生を認め、全般には7月下旬から8月にかけて多発がみられた。
3.若種いもの貯蔵に関する試験
 茎葉処理後の掘取期:早過ぎると傷付き易く、長く土中にあると、腐敗いもが出たり黒痣病菌核の付着が多くなるようである。
 貯蔵中の減量:仮貯蔵では、施設、吹抜、普通の順で、本貯蔵期間を含めると秋季掘抜のほぼ2倍であった。
 腐敗:傷いもを除いて実施した仮貯蔵、本貯蔵とも極めて少なかった。仮貯蔵は吹抜のような遍風のよいところに置いて問題はなかった。普通貯蔵庫で大量に入庫した場合については検討を要する。
 出庫時の萌芽:施設は加温によって萌芽の程度を規制出来るが、催芽による初期生育の良さは、最終収量にはプラスにはならなかった。普通庫の萌芽は多くなかった。
 貯蔵場所、前年の処理の影響:掘取時期、茎葉処理の刈取、抜取、貯蔵庫などによる次代の生育、収量差は認められなかった。

主要成果の具体的データ

1.若種いもの生産力検定試験
 主効果平均の収量比(昭49は葉巻罹病株を含まない)
年次 昭49 昭50 昭51 備  考
処理\品種 農林1号 男爵薯 農林1号 男爵薯 農林1号 男爵薯
株数
(a当)
617 110 108 108 106 91 88 51年 606株
463 100 100 100 100 100 100     459〃
前年の
茎葉
処理期
7月22日 95 91 105 104 99 99 50年7月29日,51年7月25日
8月3日 100 90 - - 98 101 51年8月5日
8月13日 89 - 105 102 - -  
無処理 100 100 100 100 100 100  
種いもの
大きさ
30g 96 96 99 90 97 101  
50 93 98 99 92 97 103  
100/2 100 100 100 100 100 100  

 前年の茎葉処理期と葉巻病発病株率(%)
前年の
処理期
昭49 昭50 昭51 備  考
農林1号 馬鈴薯 農林1号 男爵薯 農林1号 男爵薯
7月22日 5.6 2.8 3.4 1.5 0.1 0 50年7月29日、51年7月25日
8月3日 6.9 3.8 - - 0.7 0.4 51年8月5日
8月13日 8.3 - 7.0 7.1 - -  
無処理 4.3 7.6 16.4 12.4 4.1 1.8  

2.若種いもの採種に関する試験
 処理別平均の小いも(20〜60g)数と種いも供給数(小いも+60〜120g×2)の比
区別 小いも数 種いも供給数 備考
昭49 昭50 昭51 昭49 昭50 昭51
農1 農1 男爵 農1 男爵 農1 農1 男爵 農1 男爵

7月25日 95 150 125 115 95 70 65 87 92 97 49年7月29日
8月5日 99 137 109 113 96 96 84 98 90 103 8月13日
無処理 100
(1945)
100
(1923)
100
(1833)
100
(2640)
100
(2851)
100
(5362)
100
(6119)
100
(5989)
100
(5915)
100
(5881)
 

833 125 149 157 149 140 99 125 120 120 112 51年842株
617 114 119 110 131 111 104 113 104 106 114    606
463 100
(1692)
100
(2022)
100
(1671)
100
(2277)
100
(2364)
100
(4720)
100
(4492)
100
(5274)
100
(5109)
100
(5404)
   459

注意事項  茎葉処理は完全に行うこと。