【指導参考事項】
研究課題名 最近の栽培期間の気温傾向について
期間 昭和51年
担当 北農試気象研究室
予算区分
協力分担

目的 
 気温の永年傾向からみて、最近の作物栽培期間の気温条件がいかなる特徴をもっているかを明らかにし、今後の栽培基準検討の際の参考に供する。

研究方法
 1) 使用資料:網走、帯広、旭川、函館各気象台の観測開始以来の気温
 2) 各地の永年推移の調査
 3) 安全生育期間(12.5℃初日〜13.5℃終日)、同期間の積算気温の年代別調査

結果の概要・要約
 1) 5月気温は1950年頃から次代に上昇しており、特に1960年以降が著しく、近年の播種期、移植期は異常に高温の時代と考えられる。
 2) 7、8月気温は1885〜1915年が、はっきりした低温時代、1955年以降は、やや低温の傾向はあるが次年変動が小さい傾向がある。
 3) 1900年代はどの季節も低温の時代であり、特に6、7月及び冬季の低温が顕著。
 4) 1960年代の安全作季早限(12.5℃初日)の出現は、平年(全期間平均)より4〜8日早く、1900年代に比べると9〜13日も早い。
 5) 1960年代の安全生長期間(12.5℃初日〜VⅡ.10)の積算気温は、平年より5〜10%多く、1900年代より20%前後多い。安全登熟期間の積算気温は平年よりやや少なめである。
 6) 上記のように、近年の作物生長期間は異常に温暖な時代と考えられ、気温が平均状態まで変化すると、現在よりかなり低温条件を想定しなければならない。この意味で、品種、移植期、その他の栽培管理を通じて、生育遅延を伴うおそれのある技術は、十分の注意を要する。


第1図. 旭川の気温偏差の年代による違い(基準値1885〜1975)

第1表. 作季気温指標の年代別比較(表示年次を中心とする10年間の平均値)
地点 年次
(中心年)
12.5℃初日 13.5℃終日 安全生長期間
(12.5℃〜VⅡ.10)
安全登熟期間
(VⅢ.10〜13.5℃)
出現日 平年差 出現日 平年差 積算気温 平年比 積算気温 平年比
網走 1905 6.19 −4 9.24 −2 824 91 766 94
1925  .17 −2   .28 2 921 102 867 107
1945  .12 3   .27 1 976 108 849 105
1965   .10 5   .26 0 976 108 787 97
帯広 1905 6  .7 −5 9 .19 −5 1047 90 675 86
1925  .6 −4  .25 1 1131 98 818 104
1945  .1 1  .25 1 1211 104 827 106
1965 5 .25 8  .24 0 1277 110 777 99
旭川 1905 5 .30 −4 9 .19 −3 1245 92 700 91
1925  .28 −2   .24 2 1360 101 815 106
1945 .25 1   .23 1 1417 105 810 106
1965 .18 8   .22 0 1478 110 763 99
函館 1905 6.2 −6 10 .5 −1 1161 90 1016 96
1925 .1 −5   .10 4 1266 98 1156 110
1945 5.29 2  .4 −2 1295 100 1020 97
1965 .23 4  .3 −3 1357 105 993 94
平年は観測値全期間平均とする。