【指導参考事項】
1. 課題の分類 病害 草地 2. 研究課題名 オ−チャ−ドグラス雪腐大粒菌核病の発生生態 3. 試験期間 昭和44年〜51年 4. 担当 道立根釧農試病虫予察科 5. 予算区分 道費 6. 協力・分担 なし |
7.目的
オ−チャ−ドグラス雪腐大粒菌核病の発生生態および発生特性を明らかにし、本病の耕種的防除法確立のための資とする。
8. 試験研究方法
(1)発生被害実態調査 根釧地方を地理的位置により5区分し、それらの地域における本病の発生状況を調査した。
(2)発生生態に関する試験 本病菌子のう盤の形成および成熟過程、子のう胞子の発芽時期と推移および感染時期、本病の積雪下におけるまん延と株内まん延特性などについて検討した。
(3)発病と肥培管理に関する試験 主として窒素質肥料の施肥条件および刈取り時期と発病との関係について検討した。
9. 試験結果の概要
(1)本病発生の多少は、地域により大きく異なり、それを決定づける要因は、40cm以上の積雪日数と根雪期間の長短であることが判明した。
(2)本病の株内での発病は茎の頂葉から始まり、順次つぎの葉位にまん延し、分けつ茎における発病は生育の進んでいるものほど激しく、未露出の幼分けつが発病する例は少ない。本病の被害を最少限に抑えるには、未露出の分けつが多い状態で越冬させることが必要であると考えた。
(3)本病菌子のう盤の形成は、牧草による被度が高い所ほど早く、しかも遅くまで萎凋せずに残存する傾向を認め、また、開盤の成期は11月上・中旬であった。
(4)病斑は根雪後に葉身に灰緑色の病斑として出現し、積雪下でのまん延は積雪量が多い年ほど急速である。
(5)病原菌は、葉身を表面殺菌すると積雪下に没するまで全く分離されず、また、葉身の鏡検でも組織内に菌糸が認められるのは根雪後であることから、本病の感染時期は根雪後であると推定した。
(6)本病菌子のう胞子は野外条件下で40日以上生存した。また、野外葉身上にお`ナる発芽は根雪後に活発に認められ、根雪後10日前後にピ−クに達した。このことから、本病の感染期は根雪後であるとした。
(7)本病の発生は窒素質肥料を多く施すと少なくなる。すなわち、年間の窒素施肥量を11㎏から30kgまで増すにしたがい発病は激減し、それ以上増施しても多くは減少しなかった。刈取1塒期との関係では、10月中旬刈りの場合に発病が多くなる傾向であった。
10. 主要成果の具体的数字
地帯別発生推移のまとめ(病茎率)
年次 /地帯 |
44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 |
根室内陸部 | 11.0 | 17.5 | 59.7 | 66.7 | 11.7 | 0.0 | 93.6 |
釧路内陸部 | 8.3 | 10.1 | 36.4 | 40.8 | 13.0 | − | − |
太平洋沿岸部 | 0.0 | 7.8 | 9.5 | 40.4 | 22.5 | − | − |
オホ−ツク海沿岸部 | 0.0 | 8.0 | 68.0 | 75.0 | 0.0 | − | − |
根室半島部 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | − | − | − |
根雪期間と病茎率の年次別推移(根室内陸部)
野外に設置した子のう胞子の発芽率の変化
野外葉身上における子のう胞子発芽率の推移と積雪
N質肥料の施肥量と発病度および出穂茎率の関係(年間のN量=kg)
11. 今後の問題点
(1)発病に及ぼす各種条件(環境・管理)の解明
(2)病原菌の行動追跡
(3)混播条件下での経年的技術組立試験の実施
12. 指導上の注意事項