【指導参考事項】
1. 課題の分類
2. 場所名  北海道立北見農業試験場
3. 新品種候補系統  「チモシ−7号」

4. 来歴
  昭和47年隔離圃場に2.500個体の苗を移植した。同年2回の刈取調査を行い、黒銹病・斑点病・条葉枯病に弱い個体、ならびに晩秋の草勢の不良な個体を濁汰し、株はり・再生・茎数などにより約500個体の株を選抜した。48年に越冬性・草勢の不良な個体や出穂期の合わない約30個体を濁汰し、最終的に480個体を選抜した。同年9月に選抜個体間の任意交配による集団種子を得た。この集団種子を育種家種子とし、北見7号の系統番号を付し、別の母材より育成された北見5号・北見6号・北見8号とともに昭和49年より系統適応性検定試験、特性検定試験および育成地での試験を実施した。その結果「北見7号」の優良性が認められた。

5. 特性の概要
  放牧利用の場合、多くの場所でノ−スランドに比較し10%以上の増収が期待できる。とくに冬枯れの影響の大きい北海道東部の3場所(根釧・新得・北見)の平均では、ノ−スランドに比較し20%、センポクに比較し7%の増収を示し、また春の収量が低く、秋の収量が高い生育型を有する。
 採草利用の場合1番草を出穂期に刈取るとセンポクに対し9%程度の増収となり、とくに1番草は19%の増収である。センポクの出穂期に合わせ一斉刈すると減収となる。
 草型はセンポクに比較しほく型で、出穂期における草丈はセンポクより10cm高い。放牧型の利用の場合は、各番草ともセンポクより低い。茎数・多葉性は放牧・採草型利用ともセンポクより良好である。
 出穂期はセンポクに比較し12日から26日遅い晩生で、放牧利用の場合出穂は極く少ない。越冬性は同タイプの品種より良好で、黒銹病・斑点病・条葉枯病にも強い。
 再生が良好のため、混播試験における密度はセンポク・ノ−スランドより高い。
 放牧特性にとくに問題はなく、現存量はノ−スランドより高い。
 採種量はノ−スランドと同程度で、センポクに比較すると低い。
 飼料価値は放牧型利用の場合ノ−スランド並みで、センポクより良好である。採草型利用の1番草ではやや低目の値を示しているが、その差は小さく、全般的には標準品種とほぼ同水準であり、品質上とくに問題はない。

6. 適地および用途
  放牧利用の場合冬枯れの多発地帯で高い能力を発揮するので、北海道東部および高標地帯にとくに適応する。北海道中央・南部・天北地帯および東北地方にも適応する。この場合、収量的にはセンポクより劣るが、ノ−スランドより優る。採草利用の場合1番草を出穂期に刈取とセンポクより20日前後晩生で、1番草の収量も高いことから、北海道全域で利用できる。

7. 試験成績
 (1) 2年間合計風乾収量 (2・3年次合計)


北見
5号
6号 7号 8号 セン
ポク
ノ−ス
ランド




106 108 109
ns
112 115 114.9

124
a
115
a
122
a
115
a
121
a
126.8
b

122
a
112
bc
117
ab
111
bc
108
c
96.4
d

107
cd
117
ab
120
a
110
bc
111
abc
114.8
d

108
bc
104
cd
116
ab
112
bc
121
a
103.9
d
道内
平均
113 111 117 112 115 111.4
3場
平均
118 115 120 112 113 112.7

108 104 100
ns
105 112 178.8

113 110 111
ns
119 124 152.4
東北
平均
111 107 106 112 118 165.6




126
a
118
b
126
a
127
a
124
a
167.8
c

115
a
115
a
123
a
123
a
121
a
170.1
b

111
b
116
ab
113
b
119
ab
124
a
170.4
c

117 116 121 123 123 169.4
  注:ノ−スランドを100とした指数、ノ−スランドは実数(kg/a)。
    収量下段のa〜dはDuncanの多重検定(5%)を示す。
    異文字間で有意差有り。ns−有意差なし。
    3場平均は、北見・根釧・新得の3場所の平均値。

 (2) 生育型の差異(多回刈区)
年次 地方
平均
1番草 最終番草
北見
5号
6号 7号 8号 セン
ポク
北見
5号
6号 7号 8号 セン
ポク
49 道内
平均
129 131 141 139 184 112 110 109 102 103
50 道内
平均
107 115 135 125 162 120 117 114 117 96
東北
平均
108 104 106 111 123 116 99 95 103 98
51 道内
平均
119 110 125 106 178 152 141 134 135 88
東北
平均
112 101 109 113 150 116 111 114 112 109
50+
51
道内
平均
113 113 130 116 170 136 129 124 126 92
東北
平均
110 103 108 112 137 116 105 105 108 104
  注:ノ−スランドを100とした指数、風乾収量の値。

 (3) 出穂期刈の収量(普通刈区)
年次 番草 北見
5号
6号 7号 8号 ノ−スランド センポク
51 1 120 120 119 124 91 52.9
2 62 67 83 77 67 22.0
3 164 163 157 175 113 12.0
年間合計 113 112 115 119 88 86.9
  注:センポクを100とした指数、センポクは風乾収量(kg/a)
     51年北見・新得・札幌の3場所平均値。

 (4) 出穂期
年次 場所 歴日(月・日)
北見
5号
6号 7号 8号 ノ−スランド センポク
50 北見 7.19 7.19 7.14 7.14 7.15 6.24
51 北見 7.14 7.16 7.11 7.10 7.7 6.21
新得 7.19 7.19 7.13 7.13 7.5 6.24
札幌 7.6 7.6 6.29 7.1 6.28 6.17
平均 7.13 7.14 7.8 7.8 7.3 6.21
年次 場所 センポクとの差(日)
北見
5号
6号 7号 8号 ノ−スランド
50 北見 25 25 20 20 21
51 北見 23 25 20 19 16
新得 25 25 19 19 11
札幌 19 19 12 14 11
平均 22 23 17 17 13

 (5) 茎数(北見での実測値一本数0.3m2)
  多回刈区 普通刈区
50年 51年 50年
北見
5号
6号 7号 8号 ノ−ス
ランド
セン
ポク
北見
5号
6号 7号 8号 ノ−ス
ランド
セン
ポク
北見
5号
6号 7号 8号 ノ−ス
ランド
セン
ポク
1番草 894 810 766 730 867 534 343 283 319 264 323 297 451 427 415 343 502 271
2番草 776 757 679 654 696 426 581 467 509 502 471 463 732 703 720 691 631 381
3番草 1.051 1.008 978 875 942 607 791 613 617 626 651 516 685 607 563 549 508 475
4番草 959 820 822 747 949 545 851 767 708 703 794 616            
5番草 809 786 766 722 749 597 778 692 713 711 693 570