【指導参考事項】
1. 課題の分類  草・飼 A−5
2. 研究課題名  とうもろこし高栄養サイレ−ジ原料生産に関する試験
3. 期 間  (昭和45〜51年)
4. 経費の区分  指定試験
5. 担 当  十勝農業試験場 とうもろこし科
6. 協力・分担  北農試畑作部

7. 目 的
  高栄養サイレ−ジ原料生産の安定多収を目的として、早晩生品種の生産性、栽培法を刈取時期、地域性から検討する。

8. 試験研究方法
 Ⅰ 十勝農試の圃場試験(昭45〜51年):施肥水準、栽植密度、早晩生品種、刈取期の関係
 Ⅱ 山ろく沿海の圃場試験(昭49〜51年):早晩生品種、栽植密度、刈取期の関係
 Ⅲ 消化試験(昭49〜51年、北農試畑作部と共同):サイレ−ジ調製とめん羊消化試験

9. 成果の概要
  本試験における高栄養原料とは乾物率25〜35%、乾物中TDN70%以上を目標とした。このためには刈取時に子実用並みに黄熟期に達する必要があることを確認し、以下の結果をえた。
 ① 早中生種は多肥条件と密植条件を組み合わせることによって乾物率30%前後、乾物中TDN75%前後の高栄養原料が安定してえられ、しかも晩生種並みの乾総重、TDN収量をあげることができた。
 ② 早生種の多肥密植栽培は管内中央部の早刈、中刈用(9月下旬〜10月初)、山ろく沿海においてはいずれの刈取時期にも利用でき、高栄養原料の多収を安定して得ることができた。
 ③ 中生種の多肥密植栽培は中央部の中刈・晩刈用(9月終〜10月10日前後)、山ろく得暗回の晩刈用(10月上旬後半以降)としてほぼ黄熟期に達し、高栄養原料の多収が安定してえられた。
 ④ 晩生種は多収となることがあっても乾物率が25%以上になることはなく、乾物中TDNは65%前後で、年次間で不安定である。特に山ろく沿海では極晩刈りによっても乾物率が20%以下、乾物中TDNは60%前後で、TDN収量は早・中生種より明らかに低かった。
 ⑤ めん羊による消化試験の結果、上記の結果がほぼ認められ、早・中生種のサイレ−ジは乾物回収率、乾物消化率が高く、高栄養原料の多収が安定してえられることが実証された。
 ⑥ 現在、早中生種は高栄養であるが、10a当収量が少ないということで管内の80%以上は晩生種占められている。しかし、適正な多肥密植栽培法による早・中生種は高栄養、高品質を保った状態で、晩生種とほとんど遜色ない多収がえられた。これにより、管内に作付けする品種は早・中生種が、晩生種より有利である。
 注−早生種:ヘイゲンワセ、P131、C535程度
    中生種:ホクユウ、JX844程度
    晩生種:P3715、W573、交8号、ジャイアンツ程度

10. 試験成果の具体的数字(10a、kg)
 ア−品種・栽植密度・施肥量の関係
区別


T
D
N


乾物中
TDN
品種 密度 施肥
           % % %
早生 4.444 黄〜成 862 630 100 29 73
   926 680 108 30 73
  6.667 1.044 776 123 30 74
  8.333 1.121 829 132 30 74
晩生 4.444 乳〜糊 1.176 784 100 21 67
     1.184 794 101 21 67
  6.667 1.288 843 108 21 65
  8.333 1.280 822 105 20 64
  (昭和48・49年の平均、9月25日刈)

イ−品種・栽植密度・刈取時期の関係(多肥条件)(10a、kg)
区分


T
D
N


乾物中
TDN
品種 密度 刈取
           % % %
早生 4.444 黄後 762 566 100 28 74
    773 578 102 34 75
    738 562 99 37 76
  8.333 黄後 956 701 123 26 73
    1.041 770 136 32 74
    967 722 128 36 75
中生  4.444 黄初 902 628 111 23 70
    黄中 928 658 116 25 71
    黄後 943 678 120 30 72
   8.333 糊後 1.103 770 136 23 70
    黄初 1.202 844 149 24 71
    1.168 841 149 28 72
晩生  4.444 乳中 927 620 110 20 67
    糊中 1.022 703 124 21 69
    糊〜黄 1.070 755 133 24 71
   8.333 乳中 1.139 741 131 19 65
    糊中 1.161 774 137 20 67
    糊後 1.228 841 149 22 68
  (昭和50・51年の平均)

ウ−山麓沿海における品種・栽植密度・刈取時期の関係(10a、kg)
区分


T
D
N


乾物中
TDN
品種 密度 刈取
          %   % % %
早生 4.444 黄初 749 100 535 100 21 71
       黄中 786 105 591 110 26 75
   8.889 黄初 857 114 613 115 19 72
      黄中 966 129 697 130 24 72
中生 4.444 乳後 874 117 570 107 17 65
      糊〜黄 893 119 595 111 21 67
   8.889 乳後 956 128 612 114 17 64
      糊〜黄 1.234 165 813 152 20 65
晩生 4.444 乳初 779 104 501 94 16 64
      乳中 986 132 665 124 20 67
   8.889 乳初 964 129 595 111 17 62
      乳中 982 131 614 115 17 62
   (昭和50・51年の平均)

エ−サイレ−ジ消化試験(めん羊)







T
D
N
乾物中
TDN
    DM
%
DM
%
kg/10a % %
94 69 438 100 72
  多密 96 67 655 150 69
96 69 614 100 71
  多密 95 67 736 120 67
93 60 568 100 61
  多密 93 62 657 116 61
  (昭和49年)








T
D
N
乾物中
TDN
    DM
%
DM
%
kg/10a % %
多密 94 70 781 100 73
94 67 819 105 68
87 60 578 74 62
  (昭和51年)

11. 普及指導上の注意事項
  道東・道北地帯の類似地帯にも適用できる。