【指導参考事項】
1.課題の分類 2.研究課題名 水稲採種ほ産種籾の比重選効果に関する試験 3.期 間 昭和51〜53年 4.担 当 道立中央農試原原種農場 作物第1科 5.予算区分 道 単 6.協力分担 |
7.目 的
種籾精選調製の変化および、品種の変遷、機械移植による育苗の多様化など、比重選の再検討の必要性から主として指定採種ほ産種籾の性状について塩水比重選による検討を行なう。
8.試験研究方法
昭和51年産は、採種ほ、精選種子、粳8点、糯2点。昭和52年産(1回目)は、採種ほ精選種子、粳4点、糯2点。原原種農場産精選種子粳3点。昭和52年産(2回目)は、採種ほ精選種子、粳5点・糯3点。昭和53年産は採種ほ、精選種子、粳7点、糯4点を用いた。
塩水比重は昭和51年産、昭和52年産(1回目)は、9段階(1,000、1,040、1,055〜1,145)
昭和52年産(2回目)は、粳7段階(1.00、1.05、1.06〜1.10)、糯6段階(1.00、1.04、1.05〜1.08)。昭和53年産は、粳6段階(1.00、1.06、1.07〜1.10)糯7段階(1.00、1.03、1.04〜1.08)で選別し歩留り調査を行ない、定温器による発芽試験を行なった。昭和51年産、昭和52年産(2回目)についてハウス内で、育苗試験を行なった。
生産地間差については、昭和53年産採種ほ精選種子粳24点、糯15点について、糯は比重1.06、1.08糯は比重1.03、1.05で選別し比重選歩留りを調査した。また、品種間差異については、昭和53年度原々種農場奨励試験標肥区の材料、うるち11品種糯3品種を用いて、うるちは比重1.06,1.08、糯比は1.03,1.05で塩水選を行い、粳比重1.08、糯比重1.05について定温器により発芽試験を行なった。
9.結果の概要、要約
1)塩水による比重選歩留りは、比重が高くなるにしたがい、歩留りは低下するが、比重段階でみると比重のやや高いところ(粳1.10以降、糯1.07以降)で低下が大きくなる傾向を示し、このことは、粳より糯について大きい。
2)年次間差については、生産年の天候(特に登熟期間)により影響され、不良気象条件下の生産種子の歩留りは低く、各比重段階の差も大きくなり、この傾向は粳より比重の軽い糯が顕著であった。
3)粳、糯種間で同じ比重選歩留りを得るためには比重0.06〜0.10の差があるものと推察される。
4)芒の有無による歩留りの差は、精選過程で脱芒操作が、行われている範囲で、無芒種は有芒種に比べ歩留りは高い傾向にあるが、粳品種で差は小さいのに対し糯品種では大きい。
5)比重選歩留りと青米、整粒歩合の関係は、比重が高くなるにしたがい青米歩合は低く、整粒歩合が高くなる傾向を示すが、品種間差のほうが大きかった。整粒歩合は比重1,115までの差は小さかったが1,145において差が大きかった。
6)生産地間差については道内7地区の種子センター産種籾は、比重選歩留りにおいて、総じて大差はなく、精選度は共通しているものと考えられた。
7)発芽試験の結果、発芽勢、発芽率、平均発芽日数については、発芽勢において比重が高くなるにしたがい、ややよくなる傾向が認められ、その他については一定の傾向を示さなかった。
8)粳、糯、間の発芽力では、発芽勢において粳より糯がやや高く、平均発芽日数においても糯が短かった。なお、発芽率については大差がなかった。
9)品種間差については、発芽勢において「ほうりゅう」「キタヒカリ」などが低く「はやこがね」「きたこがね」「かむいもち」などが高かった。また平均発芽日数についても同様の遅速が認められた。
10)育苗試験の結果、各比重段階で良苗率をみると、51年産(不良年)については、粳は比重が高くなると良苗率がやや増加する傾向にあるが、差は小さく糯については一定の傾向は認められなかった。52年産(良好年)については、粳、糯共良苗率は一定の傾向はなく比重段階で大差がなかった。
以上の結果、指定採種ほ産種籾は比重選を行なわなくても支障は少ないと考える。しかし、登熟不良年産のものについてはより良い種籾を得るために比重選を行うことが望ましいと考えられる。なお採種ほ産種籾が良好であったのは、専門集団による生産技術の向上と、精選施設の改善などによる結果であろうと考える。
10.主要成果の具体的データー
各試験年次別平均(粳)
項目 | 比重 /年度 |
無 | 1,000 | 1,070 | 1,100 |
比重選 歩留り (%) |
51 | - | 99.4 | 97.5 | 94.9 |
52 (1回目) |
- | 99.6 | 98.7 | 97.7 | |
52 (2回目) |
- | 99.2 | 94.9 | 92.5 | |
53 | - | 99.7 | 98.7 | 97.9 | |
発芽勢 (%) |
51 | 94.8 | 95.5 | 94.9 | 96.1 |
52 (2回目) |
94.2 | 94.2 | 92.6 | 95.8 | |
53 | 87.9 | 89.6 | 89.0 | 90.7 | |
発芽率 (%) |
51 | 96.0 | 96.7 | 96.4 | 96.9 |
52 (2回目) |
95.6 | 97.6 | 94.2 | 97.4 | |
53 | 98.1 | 98.9 | 98.5 | 98.7 | |
平均発芽 日数 (日) |
52 (2回目) |
3.6 | 3.6 | 3.6 | 3.4 |
53 | 4.4 | 4.3 | 4.3 | 4.2 | |
苗立率 (%) |
51 | 94.3 | 95.2 | 96.0 | 95.8 |
52 (2回目) |
89.5 | 90.2 | 91.3 | 91.3 | |
良苗率 (%) |
51 | 78.4 | 91.1 | 81.5 | 82.1 |
52 (2回目) |
82.0 | 81.8 | 82.0 | 83.1 |
各試験年次別平均(糯)
項目 | 比重 /年度 |
無 | 1,000 | 1,040 | 1,070 |
比重選 歩留り (%) |
51 | - | 94.7 | 87.9 | 76.9 |
52 (1回目) |
- | 97.2 | 94.2 | 91.3 | |
52 (2回目) |
- | 98.9 | 93.5 | 84.9 | |
53 | - | 96.4 | 93.1 | 88.4 | |
発芽勢 (%) |
51 | 92.0 | 94.0 | 96.5 | 96.0 |
52 (1回目) |
- | 92.0 | 95.0 | 92.0 | |
52 (2回目) |
93.7 | 97.7 | 98.3 | 98.7 | |
53 | 92.8 | 95.0 | 95.3 | 95.8 | |
発芽率 (%) |
51 | 99.5 | 96.0 | 97.5 | 96.5 |
52 (1回目) |
- | 97.0 | 98.0 | 96.0 | |
52 (2回目) |
96.7 | 98.3 | 98.3 | 99.0 | |
53 | 98.3 | 98.8 | 98.8 | 99.0 | |
平均発芽 日数 (日) |
52 (2回目) |
3.2 | 3.3 | 3.1 | 3.1 |
53 | 4.2 | 4.1 | 4.0 | 4.0 | |
苗立率 (%) |
52 (2回目) |
95.5 | 96.0 | 94.5 | 96.5 |
53 | 90.9 | 93.4 | 88.6 | 88.5 | |
良苗率 (%) |
52 (2回目) |
78.5 | 75.0 | 77.5 | 81.0 |
53 | 84.4 | 86.0 | 82.1 | 81.9 |
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11.今後の問題点
12.次年度の計画 なし