【普及奨励事項】
           (分類番号)(整理番号)(分類番号)(整理番号)
1.課題の分類  作物育種 OA 畑作 1-a 131-3
2.場 所 名   北海道農業試験場
3.新品種候補系統名  北海57号

4.来歴:
 昭和41年に北海道農業試験場で、「男しゃくいも」を母、「WB61037-4」を父として交配を行ない、昭和49年に「島系508号」、昭和50年に「北海57号」の系統名を付し 父親の「WB61037-4」は塊茎早熟のS.rybinii×S.chacoenseの種間雑種の複二倍体に「pepo」、「Hochprozentige」、「エニワ」を順次交配して育成した系統で、早生高澱粉、疫病低抗性遺伝子R1をもつが小粒の系統である。

5.特性:
 茎長は「農林1号」、「紅丸」並で叢性はやや直立、葉は緑色で、茎は緑色に紫色を帯びる。葉柄の基部、小葉の付けねに紫色を帯びる。花色は白で自然結果はしない。塊茎は扁卵形で皮色は淡黄白色、肉色は白、目の数、深さともに中である。
茎葉黄変期は「男しゃくいも」より数日おそい早生種。上いも収量は「農林1号」の約80%、でん粉収量は約90%であるが、でん粉価は19%で1〜1.5%高い。でん粉価の上昇早く、8月中下旬の早掘又は本系統の茎葉黄変期のでん粉収量は「農林1号」を上回る。
疫病抵抗性遺伝子R1をもつ。塊茎腐敗低抗性、粉状そうか病害の病害抵抗性は農林1号程度である。ウイルス病低抗性はなく葉巻病、Yウイルスに対する病徴は明瞭で病株の抜取は容易である。

6.試験成績
(1)道内試験研究機関における普通掘成績(試験年次平均値)
項   目 場所名 北農試
(島松)
中央 上川 十勝 根釧 北見 平均
系統名
枯凋期
(月・日)
北海57号 9.9 9.16 9.16 9.5 9.23 9.17 9.14
農林1号 10.2 9.28 - 9.20 10.5 - -
紅 丸 10.3 9.28 - 9.23 10.2 - -
上いも収量比
(%)
北海57号 83 96 86 100 102 91 93
農林1号 100 100 100 100 100 100 100
紅 丸 106 110 121 118 113 105 112
上いも平均一個重
(g)
北海57号 87 104 112 76 85 101 94
農林1号 122 99 120 89 105 128 111
紅 丸 100 98 128 86 101 114 105
でん粉価
(%)
北海57号 19.2 14.5 18.5 18.1 17.5 17.5 17.6
農林1号 17.5 13.9 18.1 16.2 16.5 16.7 16.5
紅 丸 17.9 12.0 16.3 16.0 15.9 16.2 15.7
でん粉収量比
(%)
北海57号 91 108 89 111 108 96 101
農林1号 100 100 100 100 100 100 100
紅 丸 108 92 111 115 109 102 106

(2)早掘試験成績
項   目 場所名 十勝農試 北見農試 留寿都* 士幌* 更別* 斜里*
系統名
上いも収量比
(%)
北海57号 111 97 88 106 101 96
農林1号 100 - 100 100 100 -
紅 丸 - 100 88 - 101 100
でん粉価
(%)
北海57号 17.6 17.8 16.7 17.1 17.3 16.9
農林1号 15.8 - 15.1 15.3 16.3 -
紅 丸 - 16.2 14.8 - 15.2 15.6
でん粉収量比
(%)
北海57号 124 107 98 116 108 104
農林1号 100 - 100 100 100 -
紅 丸 - 100 86 - 95 100

注)*現地試験、試験年次昭和51年〜53年

7.保有種いも量:1300㎏(北海道中央馬鈴薯原々種農場)

8.奨励品種採用予定県:北海道

9.栽培適地及普及見込面債:北海道のでん粉原料用ばれいしょ栽培地帯 5000ha

10.栽培上の注意:
 (1)栽培管理は、「農林1号」「紅丸」に準じて行なう。早生早掘を目的とするので初期生育の促進を図ること。
 (2)疫病抵抗性遺伝子R1をもつので疫病の初発生は遅れるが、罹病後の進展は一般の品種と変らないので防除は重要である。
 (3)高温乾燥年にぱ夏疫病が発生するので注意すること。
 (4)ジャガイモシスト線虫抵抗性はないので、線虫発生地帯では、紅丸等と同様の扱いをする。
 (5)青枯病に弱いので男しゃくいもで青枯病発生の認められる畑への作付はさけること。