1.課題の分類  園芸 果樹
2.研究課題名  栗苗木育成技術試験 (1)育成技術
3.期   間  昭和49年〜53年
4.担   当  道南農試
5.予算区分  道 単
6.協力分担  な し

7.目 的
 栗の結果樹令は、接木苗では2〜3年であるが実生苗では7〜8年を要し、更に、実生苗では品質が非常に劣り、収量も少ないのが普通であるが、従来北海道における露地での栗苗木の接木活着率は、2〜3割と低いため道産の接木苗の入手が困難で難苗を使用することが多く、これが北海道の栗栽培の普及に大きな支障となってきたので、これを改善するために行った。

8.試験研究方法
 (1)穂木採取時期 (1月上旬、2月中旬、3月下旬、5月上旬)
 (2)接木時期 (4月上中旬、4月下旬、5月上旬、5月中旬、5月下旬)
 (3)接木部位 (地上10㎝、30㎝、60㎝、90㎝)
 (4)台木種類 (日本栗栽培種、芝栗、日支交雑種)
 (5)試験操作について

9.結果の概要要約
 穂木採取時期では、2月中旬が良好で、3月下旬、1月上旬、5月上旬の順で劣る活着率を示した。
 接木時期では、5月下活着旬が良好で、5月中旬、5月上旬の順で劣り4月における接木はいづれも極めて劣る活着率を示した。
 接木部位では、90㎝と60㎝の両区が60%台の活着率で、苗の成長も良く30区で50%台10区で40%台と活着率が低下し、これに比例して苗木の成長も劣った。
 台木種類では、日本栗栽培種実生が良好で芝栗と日支交雑栗の実生は活着率が低く、苗木の成長も劣った。

 以上により、道南において日本栗の苗木を造成する場合には、日本栗栽培種の実生台木を使用し、2月中旬に穂木を採取して保管しておき5月下旬に、台木の地上高60㎝〜90㎝の部分に接木することが良いと考える。

10.主要成果の具体的数字
(1)穂木採取時期 (穂木 銀太郎、台木 銀太郎実生)
項目 区別 1 月 上  旬 2 月 中 旬 3 月 下 旬 5 月 上 旬
年 度 49 50 51 52 49 50 51 52 49 50 51 52 49 50 51 52
供試数 45 46 82 30 203 45 70 96 30 241 45 100 102 32 279 45 40 90 31 206

11 12 30 9 62 18 41 72 13 144 16 33 60 11 120 15 10 22 7 54
% 24.4 26.0 36.6 30.0 30.5 40.0 59.0 75.0 43.3 60.0 35.5 33.0 58.8 34.4 43.0 33.3 25.9 23.9 22.6 26.2


64 121 137 140 11.5 90 140 132 149 128 121 128 202 129 145 96 71 72 111 878
% 70 86 104 94 90 100 100 100 100 100 134 91 153 87 113 106 51 55 74 68

(2)接木時期 (穂木 銀太郎 台木 銀太郎実生)
項目 区別 4 月 上 中 旬 4 月 下 旬 5 月 上 旬 5 月 中 旬 5 月 下 旬
年 度 50 51 52 50 51 52 50 51 52 51 52 50 51 52
接木日 4.7 4.15 4.12 - 4.22 4.25 4.23 - 5.8 5.5 5.4 - 5.15 5.18 - 5.24 5.25 5.31 -
供試数 50 44 40 134 50 46 38 134 50 52 40 142 50 40 90 50 78 55 183

2 18 11 31 3 17 9 29 15 30 16 61 26 19 45 5 69 23 97
% 4 41 28 23.1 6 37 24 216 30 58 40 43.0 52 48 50.0 10 88 42 53.0


229 209 127 188 190 169 141 167 304 180 155 213 178 138 158 156 130 151 146
% 75 116 82 88 62 94 91 78 100 100 100 100 99 90 74 51 72 97 69

(3)接木部位 (台木 銀太郎実生 2月下旬穂木採取、5月24日接)
項目 区別 10㎝ 30㎝ 60㎝ 90㎝
年 度 51 52 53 53 51 52 53 53 51 52 53 53 53 53
品種名 A B A B A B A B
供試数 80 130 60 60 330 105 154 70 48 377 78 103 72 47 309 69 60 129

50 47 22 20 139 85 43 55 24 207 75 54 42 25 196 48 31 79
% 62.5 36.2 36.7 33.3 42.1 81.0 27.9 78.6 50.0 54.9 86.2 52.4 53.2 53.2 63.4 69.6 51.6 61.2


122 147 81 61 103 94 165 293 90 161 118 149 338 127 183 300 126 213
% 100 100 100 100 100 77 112 362 148 156 97 101 417 157 178 370 207

(4)台木種類 (穂木  銀太郎、30cm高接 2月下旬穂木採取  5月26日後)
区別 項目 品種名 供試数 活着数 同左% 新梢長 同左%
日本栗 銀太郎 116 82 70.7 261 100
芝 栗 大野産 122 48 39.3 208 80
日支交雑栗 利 平 89 41 46.1 167 64

(5)道南農試における5月の気温
  1半旬 2半旬 3月半旬 3月半旬 3月半旬 3月半旬
平均 10.10 10.70 11.27 11.56 12.33 13.84
最高 15.42 16.11 16.49 16.71 17.29 18.90
最低 4.87 5.28 6.04 6.41 7.38 8.78

12.成果の取扱い
 (1)日本栗栽培種の実生台に、2月中旬採取の穂木を、台木の萌芽後7日目頃(道南農試5月下旬)に、60〜90㎝の高さに接木する。
 (2)適用地域は、道南地方とする。