【指導参考事項】
比重によるダイコン「ス入り」の判定について
ダイコン 生理 2-12
北海道農試作二科
期 間  昭和52〜54年
予算区分 経 常
協力分担関係  なし
1.担 当  北海道農試 作物第2部 園芸第3研究室

2.目 的  食用ダイコンの「ス入り」と比重との関係を明らかにし、収穫適期と貯蔵用大根の選別の資とする。

3.試験方法
(1)供試品種  耐病総太り、青首宮重総太り
(2)播  種   8月10日 6月12日
(3)施肥量    N:P2O5:K2O→1.5:1.5:1.5㎏/a
(4)畦巾株間  8月まき 70×30㎝(高畦) 6月まき 50×30㎝
(5)調査月日  播種後30日、40日、50日、60日、70日、80日
(6)調査項目  生育調査、Ref、pH、比重

4.結果および考察
 52年度において「ス入り」の有無を知る方法を探索し、「ス入り」の部分に気体の存在することから、根の水にかける浮沈程度から「ス入り」の有無と空洞の存在とその位置を知ることが可能となった。比重1のものは品質が極めて良好なものであるが、53年度は「ス入り」程度と比重との関係を調査し、どの程度の比重から食用に供用可能かを明らかにしようとした。また53年度は8月まきの他に6月まきについても比重と「ス入り」との関係を調査した。
 6月播き:耐病総太り、青首宮重総太り
 比重の分布と「ス入り」程度の関係を第1図、2図で示した。0は「ス入り」無し、1は入りかけたと見られるもの、2はそれより幾分すすんだもの、3は中心部に何箇所かに「ス入り」の状態が見られるもの、さらに外側に拡大したものが4、穴が見え始めたものは5とした。3は食用に供し得る下限であろう。6月まきでは根が肥大しない内に「ス入り」が始まり、宮重総太りにその傾向大で品質としては耐病総太りに劣り抽苔も多かった。
 8月播き:耐病総太り、青苗宮重総太り
 播種後30〜80日にわたる生育状態は第1表、2表に示した。比重と「ス入り」と空洞発生経過を第3図、4図に示したが、本年は宮重総太りの「ス入り」、空洞が播種後40日過ぎに始まり、耐病総太りに「ス入り」は無かった。しかし空洞は耐病総太りが宮重総太りより10日程おそく始まったが稍高い傾向を示した。
 比重と「ス入り」程度の関係を第5図、6図に示した。耐病総太りでは「ス入り」が見られず比重は0.985〜1.010の間に分布し、宮重総太りでは「ス入り」程度が4以下まであり、比重は0.970〜1.000強に分布していた。宮重総太りは第4図にも示されたとおり急速に品質に品質の低下してゆくのが認められる。供試品種について第5、6図などから比重により根を選ぶとすれば、比重1.000以上は品質の極上のもの、0.995以上は品質の良いもの、0.985以上では食用に差支えのない「ス」が入る場合もあり品質として稍劣る。
 耐病総太りに「ス入り」が見られないが、従来の「ス」の判定では難かしい点がある。

第1表 耐病総太りの生育 (8月まき)
播種後
日 数
草丈
(㎝)
葉数
(枚)
根径
(㎝)
茎葉重
(g)
根重
(g)
Ref
示度
pH 抽苔率
(%)
T/R
30 25 16 1.9 - - 5.2 - 0 0
40 40 22 4.0 346 117 4.8 6.78 0 2.95
50 43 30 5.4 566 453 5.0 6.80 0 1.25
60 48 36 6.8 730 973 5.4 6.80 0 0.75
70 49 37 7.7 738 1,534 5.5 6.85 0 0.48
80 48 39 8.5 801 2,220 5.7 6.61    

第2表 青首宮重総太りの生育(8月まき)
播種後
日 数
草丈
(㎝)
葉数
(枚)
根径
(㎝)
茎葉重
(g)
根重
(g)
Ref
示度
pH 抽苔率
(%)
T/R
30 25 14 1.9 86 15 - 5.6 0 5.70
40 41 21 3.8 275 88 5.0 6.73 0 3.13
50 45 29 5.7 589 364 5.0 6.77 0 1.62
60 51 32 6.5 710 776 5.3 6.68 7.5 0.91
70 52 33 7.5 748 1,180 5.5 6.75 12.1 0.63
80 50 34 8.1 811 1,860 5.1 6.54 26.0 0.44


     第1図 耐病総太り(6月まき)


     第2図 青首宮重総太り(6月まき)



    第3図 比重、空洞、スの経過
        (耐病総太り、8月まき)



     第4図 比重、空洞、スの経過
       (青首宮重総太り、8月まき)



   第5図 比重とス(耐病総太り、8月まき)






   第6図 比重とス(青首宮重総太り、8月まき)

5.今後の問題点(成果の取扱い)
 比重0.995の実際的な判定法としては根を水に入れて静止した時に頭に近い方が100円白銅化程度水面に露出している状態であり、10㎝程度葉柄を付けた場合は同じ方法で葉柄の先端が5㎜程度水面にとび出ている状態であり、特に0.995の比重液を調製しなくてもよい。0.995以下の比重についても露出部分の面積を考慮することにより水を使用することが可能である。立毛中のまま判定する方法が可能になれぱ品質良好かつ多収が可能になろう。
 便用する水については水温15℃前後とし、泥などでにごっていないきれいな水を使用する。
 品種によっては比重に多少差があるので注意する。