【指導参考事項】
施設野菜の周年栽培体系確立試験
6月どりメロン栽培技術試験
 (1)栽培基準
メロン  作型、栽培一般
道南農試
期  間   昭和49年〜53年
予算区分  道単
協力分担  な し
1.担 当  園芸科  土肥 紘・高橋総夫

2.目 的
 道内ハウス栽培の主作型であるトマト〜キュウリに代わる作物・作型の導入をはかり、経営の安定化に寄与する。緑肉ネット型のメロンの6月出荷を目標とし、は種期と適品種の選定、着果の安定に結びつ育苗条件と、これに関連する定植および栽培環境適条件の把握、多収栽培技術の確立をはかる。〔栽培基本条件:主枝1本仕立、立作り、地床栽培〕

3.試験方法
(1)品種に関する試験 49〜53年
(2)育苗に関する試験:育苗温度、苗質、育苗日数と定植条件    49〜53年
(3)栽培管理に関する試験:温度管理、灌水管理 50〜53年
(4)2果どりに関する試験:整技法 52〜53年

4.結果および考察(要約)
 (1)品種:持続的な検討が必要であるが、ハウスメロンでは「北海エース」が早熟性、耐裂果性で、「アールス東海H-60」が果実形質で、特に良く栽培も容易でありこの作型に適当していた。温室メロンでは春系(「丸西1号」)が、着果性、果実肥大、耐裂果性の点で安定していた。
 3月1日は種で早熟種が6月5半旬、晩熟種で7月1日半旬の収穫となった。
 (2)育苗:低夜温(10℃)で育苗すると生育の遅れとともに着果目標節位の花着生が不安定となった。20℃まで高夜温程安定したがその傾向は温室メロンで著しかった。不十分な管理(床土・水不足)で育苗はされた 45日苗は花着生が極めて不安定となった。良く管理された40〜45日苗でも不良条件下(最低温度10℃・土壌乾燥)に定植すると、花着生が不安定となった。
 (3)栽培管理:保加温設定温度16℃(最低の極12℃)区に対し、13℃(同9℃)区は生育停滞、着果率低下、果実形質の不良化が著しかった。灌水についてはさらに条件を整備して検討が必要であるが、開花始まで灌水点PF2.0、その後は2.4で1回当10㎜相当量の灌水管理した区が着果率、果実形質が良い傾向であった。
 (4)2果どり:高節位(15節前後)着果で1果どりと大差ない果実が得られた。果実を大きく確保するためには全葉面積、特に着果節位より下の葉面積を大きくした区、また、品質の指標となる糖度を安定するためには着果節位より上の葉面積を大きくした区が良かった。果型、ネットは一般度に高節位着果で低節位着果よりやや不安定となった。
 結果より、a当り収量等を試算する。1果どり281㎏、2果どり390㎏の収量、6月下旬(5ヶ年平均単価)500円、7月上旬420円を各々乗ずると単純粗収入は、1果どり14.1〜11.8万円、2果どり19.5〜16.4万円である。

5.栽培基準
栽培基本条件   緑肉ネット型メロン、主枝1本仕立、立作り、地床栽培
は種期 この作型における生育日数は、早熟種で115日、晩熟種で125日であり、3月1日は種で前者では6月5半旬、後者では7月1半旬の収穫になる。
品種 さらに継続的な検討が必要であるが、現時点では次の品種が優良である。
ハウスメロン「北海:エース」:早熟で栽培し易く裂果しない。果実形質良く揃うが、果肉の水浸状化が早い欠点がある。
  〃  「アールス東海H60」:熟期は早くないが、栽培し易く、果実形質良い。
温室メロン 春系が良い。(丸西1号:春系3号など)
育苗 夜温はハウスメロンで15℃、温室メロンでは17〜18℃を保加温目標とし、
30〜35日育苗(展開葉3〜4枚)を標準とする。育苗の後期に、肥料・水・日照を不足させないように管理を周到にする。育苗が35日以上の長期となる場合は特に注意する。
定植条件 最低気温、地温とも15℃以上、土壌適湿条件を確保し、活着を停滞させない。
施肥 株当りN4+2、P2O512、K2O4+2gを一応の標準とする。
温度管理 ハウス内気温は15〜16℃(最低の極12〜13℃)を保加温目標とする。
水分管理 灌水は活着までは株毎に適量手がけとし、その後開花始まで灌水点PF値2.0〜2.2収穫予定10日前まで2.4で、1回当10㎜相当量の灌水を標準とする。
整枝

1果どりでは、25節摘心、着果目標は10節位とし、側枝葉は着果枝以外早目に摘除する。
2果どり栽培をする場合は、着果目標は15節位前後の連続節とし、節位より上の主枝葉を10葉以上残し摘心する。側枝葉も原則として各1葉を残す。

6.指導上の注意事項
 (1)キュウリ促成栽培に比べ労働時間は50%程度であるが保加温目標温度が高いことに留意する。
 (2)栽培ハウスは、南北棟が望ましく、地下水が一般に低く水分変動の少ない場所を求める。
   ハウス周辺の雨水が浸透しないようにフイルムを埋込み遮断すること。
 (3)定植床は必ずポリマルチを行:ない地温の確保に努めること。
 (4)活着を停滞させると、初期の葉面積を不足させ、また草花の着生が不安定になるので注意する。
 (5)葉の早期老化を招かぬように、定植条件、施肥、灌水、温度、防除管理に注意する。
 (6)施肥、特に窒素肥料が過剰にならないよう配慮する。
 (7)水管理は、土壌水分状態を激変させないようにする。また生育後期の過湿はさける。
 (8)気温は、最低12〜13℃以上に必ず保ち、換気は30℃を大きく越えない範囲で行なう。
 (9)病害の発生は、比較的少ないが一般的防除は励行する。全面マルチをすることが望ましい。
 (10)ダニの発生に注意する。
 (11)その他、メロン栽培上の一般的注意事項。
 (12)なお、この栽培をより安定するために、各副課題毎に付記した今後の問題点についての解明が、必要である。