1.課題の分類 病害・果樹 2.研究課題名 りんご腐らん病発生に及ぼす枝梢の剪去時期の影響 3.期 間 昭和49〜53年 4.担 当 中央農試・病虫部病理科 5.予算区分 道 費 6.協力分担 な し |
7.目 的
剪定痕からの本病発生に及ぼす、枝梢の剪去時期の影響を明らかにする。
8.試験方法
1)12月、3月および6月に剪定し、剪定痕からの腐らん発生数を調査する。供試樹:各区スターキングデリシャス10年生8樹。
2)12月、3月、6月および9月に120ヵ所の剪定傷口をつくり、半数は3ヵ月間自然条件下に暴露後、傷口を被覆し以後の感染を防止し、残りの半数は傷口を暴露状態に保った。これら傷口からの発病を各時期に調査する。
3)12月、3月、6月および9月に各100ヵ所の勢定傷口をつくり、各3ヵ月間自然条件下に暴露し、その傷口から本病原菌を分離する。
4)7月に付傷時期を異にした傷口に含菌寒天で接種し、傷痍木栓層の形成程度と発病の関係をみる。また、2月に付傷した傷口における傷痍木栓層の形成時期を調査する。
5)12月、3月、6月および9月に各50個の傷口をつくり、各3ヵ月間自然条件下に暴露し、その傷口から糸状菌を分離する。分離菌の本病原菌に対する拮抗作用をPDA上と顕微鏡下で観察する。
9.結果の概要・要約
1)12月、3月および6月に剪定を行ったところ、12月剪定で剪定痕からの腐らん病発生が最も多く、ついで3月剪定が多かった。
2)12月から3月まで暴露した傷口カからの発病が最も多く、ついで3月から5月まで暴露した傷口が多かった。一方、6月から8月まで、9月から11月まで暴露したものは発病が少なかった。
3)3月から5月まで傷口を暴露すると最も高率にリンゴ腐らん病菌が検出され、ついで12月から3月まで暴露した傷口が高い検出率であった。一方、6月から8月まで、9月から11月まで暴露した傷口からは低率で検出されるにすぎなかった。
4)夏期では付傷2週間後で接種しても発病しない程度の傷痍木栓層が形成される。しかし、厳寒期に付着した場合では5月まで傷痍木栓層が形成されなかった。
5)拮抗菌の菌種と分離数は12月から3月まで暴露した傷口が最も少なかった。
6)以上の結果、晩秋から厳寒期に枝梢の剪定を行うと、剪定痕からの腐らん病の発生が多い。このことは厳寒期においても伝染源が分散されているにもかかわらず、菌の侵入を阻止する傷痍木栓層が5月まで形成されないこと。さらにこの間拮抗菌が少ないこと等に起因すると推察される。
10.主要成果の具体的数字
第1表 枝梢の剪去時期と剪定痕からの腐らん病発生の関係
剪定時期 | 各 時 期 の 腐 ら ん 発 生 数 | |||||||||||||||
昭50.12.3 | 昭51.6.2 | 昭51.11.17 | 昭52.4.13 | 昭52.6.25 | 昭52.8.23 | 昭52.12.6 | 合計 | |||||||||
A | B | A | B | A | B | A | B | A | B | A | B | A | B | A | B | |
昭50年12月 | 0 | 5 | 1 | 13 | 3 | 5 | 27 | 18 | 24 | 22 | 0 | 12 | 3 | - | 58 | 75 |
昭51年3月 | 0 | 5 | 1 | 11 | 1 | 3 | 2 | 12 | 3 | 15 | 0 | 5 | 0 | - | 7(10) | 51 |
昭51年6月 | 0 | 3 | 0 | 23 | 0 | 1 | 1 | 29 | 0 | 20 | 0 | 2 | 0 | - | 1 | 78 |
第1図 傷口の暴露期間と発病の関係
11.今後の問題点
傷口から分離されるミクロフローラの樹体での拮抗作用の検討