【指導参考事項】
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1.課題の分類 乳牛 飼養 2.研究課題名 てん菜糖製造副産物カチオン濃縮液の飼料的利用に関する試験 Ⅰ カチオン濃縮液の乳牛用飼料としての利用 3.期 間 (昭和52〜53年) 4.担 当 新得畜試・研究部・飼養科・衛生科・種畜部・乳牛科 北農試・畜産部・家畜第4研究室 5.予算区分 道費 (受託) 6.協力分担 滝川畜試……豚 |
7.目 的
てん菜糖製造副産物であるカチオン濃縮液(KWと略す)と、それを添加したビートパルプペレット(KW-BPTと略す)の飼料特性と乳牛に対する飼養効果について検討する。
8.試験方法
1)KWおよびKW-BPTの組成と栄養価査定試験
2)乳用育成牛に対するKW-BPTの給与試験
3)KWのBPTに対する添加割合と泌乳牛のし好性に関する試験
4)KW-BPTの産乳価値査定に関する試験
5)泌乳牛に対するKW-BPTの多量給与試験
6)乳牛の分娩前後に対するKW-BPTの長期間給与試験
9.結果の要約
1)KWの平均水分含量は約42%であり、粗蛋白質及び粗灰分含量が高い。また、ミネラル含量ではNaとKが高く、Ca、Mg及びPの含量が低い。
2)KWは乾物及びCWCの消化率に大きな影響をおよぼさず、かつこれをBPTに添加した際、第一胃内及び温水中で容易に解け出す。
3)KW-BPTの消化率はBPTに比較して粗蛋白質でやや高く、その他の成分は同程度か、もしくはやや低かった。その栄養価をBPTと比較するとDCP含量は著しく向上し、TDN及びDEはやや低下した。
4)KW-BPTの給与によって、めん羊の飲水量及び尿量が著しく増加した。
5)N及びミネラル出納については、KW-BPTの給与でNaとKの蓄積が増大した。
6)KW-BPTの育成牛による採食性は低かったが、全乾物摂取量は増加した。また、体重、体高及び胸囲はKW-BPTの給与でわずかではあるがより増加し、発情の発現に影響をおよぼさなかった。
7)BPTにKWを30%まで添加させても泌乳牛のし好性に差異がなかった。
8)KW-BPTの産乳価値はBPT及び水浸漬BPTに比較して差異がなかった。
9)泌乳牛に8㎏/日・頭のKW-BPTを8週間にわたって給与したが、産乳性に悪影響をおよぼさなかった。
10)乾乳期より分娩前後及び泌乳期にわたってKW-BPTを10か月間継続給与したが、産乳性に悪影響をおよぼさなかった。
11)KW-BPTの「育成牛に対する給与試験」、「多量給与試験」及び「長期間給与試験」における供試牛の一般臨床所見、繁殖性、血液所見及び血清の生化学所見(16項目)について検索した結果、KW-BPTに起因すると思われる障害の発現は認められなかった。
10.主要成果の具体的数字
1)一般成分と栄養価及びミネラル組成 (北農試・新得畜試) (%)
| 水分 | 粗蛋白 | 粗脂肪 | NFE | 粗繊維 | 粗灰分 | DCP | TDN | Na | K | Ca | Mg | P | |
| 乾物中 | |||||||||||||
| KW | 42.4 | 43.3 | - | 21.7 | - | 35.0 | 4.48 | 4.21 | 0.0298 | 0.0055 | 0.0196 | ||
| KW-BPT | 22.7 | 18.3 | 0.5 | 50.3 | 15.6 | 15.3 | 13.12 | 68.67 | 3.55 | 2.52 | 0.415 | 0.154 | 0.082 |
| BPT | 14.4 | 10.6 | 0.8 | 61.4 | 22.6 | 4.6 | 6.21 | 75.06 | 0.13 | 1.93 | 0.53 | 0.25 | 0.10 |
2)産乳価値査定試験における乳量、乳組成及び体重 (新得畜試)
| 乳量(㎏/日) | FCM(㎏/日) | 脂肪(%) | 蛋白質(%) | TMS(%) | 体重(㎏) | |
| KW-BPT | 22.3 | 21.4 | 3.71 | 3.15 | 12.27 | 642.2 |
| BPT | 21.7 | 20.7 | 3.69 | 3.16 | 12.35 | 634.4 |
| 水浸漬BPT | 22.1 | 21.0 | 3.64 | 3.22 | 12.31 | 636.8 |
3)KW-BPTの多量給与試験における血液の生化学的所見 (新得畜試)
| 経過 (週) |
項目 | S-GOT (Ku) | S-GPT (Ku) | Ca (㎎/dL) | ||||||
| 処理 | KW-BPT多量 | KW-BPT | BPT | KW-BPT多量 | KW-BPT | BPT | KW-BPT多量 | KW-BPT | BPT | |
| 0 | 52 | 57 | 55 | 20 | 17 | 20 | 8.8 | 9.1 | 8.8 | |
| 4 | 50 | 53 | 50 | 20 | 17 | 21 | 8.9 | 9.2 | 9.1 | |
| 8 | 53 | 57 | 57 | 20 | 17 | 17 | 9.3 | 9.0 | 8.7 | |
| 経過 (週) |
項目 | K (㎎/dL) | Na (㎎/dL) | CL (㎎/dL) | ||||||
| 処理 | KW-BPT多量 | KW-BPT | BPT | KW-BPT多量 | KW-BPT | BPT | KW-BPT多量 | KW-BPT | BPT | |
| 0 | 19.9 | 21.2 | 21.2 | 309 | 309 | 306 | 369 | 374 | 368 | |
| 4 | 20.8 | 22.2 | 23.2 | 304 | 305 | 301 | 375 | 375 | 377 | |
| 8 | 20.3 | 19.9 | 21.5 | 301 | 303 | 303 | 368 | 370 | 370 | |
11.今後の問題点
1)より若令の育成牛(10か月令以前)に対する給与
2)肉牛用飼料としての利用
12.普及指導上の注意事項
1)KW-BPTはBPTに比べてDCP含量及び粗灰分含量(特にNaとK)が高いので、それらの特性を考慮して給与する。
2)KW-BPTを摂取すると飲水量が増加するので、給水設備の完備した所で給与する。
3)KW-BPTは従来のBPとことなり、水に浸漬しないで、そのまま給与する。
4)KW-BPTの給与量は従来のBPに準ずる。