【指導参考事項】
1.課題の分類  草・飼 D-20
2.研究課題名  2次発酵の要因とその防止法に関する試験成績
3.期  間  昭和46〜53
4.担  当  北農試・草地開発第1部草地第5研究室
        北農試・畑作部家畜導入研究室
5.予算区分  経常・別枠
6.協力分担  北海道農業改良課、根釧農試
         北根室、南根室及び空知中央地区普及所
         サツラク農協、十勝農協連

7.目 的
 2次発酵は、サイロの大型化、サイレージ通年給与方式の普及、低水分材料の利用などに伴なってかなりの地域や農家で問題になっており、大量のスポイレージの原因になっている例もみられるので、2次発酵の機序、誘発に至る要因、防止法について検討した。

8.試験研究方法
現地調査: 根室管内、札幌市、興部町、岩見沢市、帯広市、浦河町の酪農家について
サイレージ品質、発熱の実態を調査した。
アンケート調査: 石狩管内の酪農家(抽出)、全道内の農業改良普及所(82ヵ所)について行った。
2次発酵機序の解析: 実験用小型サイロにより調製した各種のサイレージを27℃
或いはより低温条件の恒温室に取出して基礎的解析を行なった。
実用規模試験: 牧草、トウモロコシ、エンバク、穀実を15〜30トンサイロに詰込み、
通常の取り出し条件下に力ける2次発酵要因の解析、防正法の効果について検討した。

8.試験結果の概要・要約
 ①2次発酵においては、カビと共に酵母も主要な役割を果していることが明らかにされ、乳酸含量が高く、酪酸の少ない、酵母、カビ菌数の多いサイレージが2次発酵しやすいことが認められた。
 ②プロビオン酸、酪酸、アンモニアに2次発酵抑制作用が認められた。
 ③バンカーサイロ、スタックサイロはタワーサイロに比べて発熱している例が多く、収穫機種、詰込日数、共同作業、密封法、取出法が発熱と関係していた。
 ④タワーサイロにおいても密度ムラ、密封法の不適が2次発酵の主要な原因の一つであり、水分40%以下の材料はCO2生成速度が遅く、サイレージ品質安定性が低いことが示された。又、トウモロコシサイレージの収穫時期の遅れ、切断長が長い、加重不足、取出量不足も2次発酵の原因であった。
 ⑤農家のトウモロコシサイレージは、11〜12月に発熱している例が多く、2月は比較的安定し、夏季間に又、品質が低下する傾向が認められた。
 ⑥中間仕切りによって、サイレージ内部への空気導入が抑えられ、取出し進行に伴なう菌数の増加が抑えられた(仕切り:0.075〜0.05㎜厚のポリフィルム)
 ⑦既に2次発酵しているサイレージの発熱を止める方法としては、水蓋による4〜7日間の密封が効果的であった。
 ⑧トウモロコシなどを低コストで安全に貯蔵する補助サイロとして、パネル組立式サイロが利用できることが認められた。
 ⑨以上の結果から、2次発酵対策の要点として、材料水分、切断法、踏圧と均平化、気密性及び取出法の改善、中間仕切り法及びパネル式補助サイロの活用、水蓋法による解熱があげられた。

10.主要成果の具体的数字
 中間仕切り上・下におけるサイレージ品質
サイロ別と材料 部位 PH VFA比
(%)
VBN比
(%)
菌数 その他
酵母 かび
T-4 混播1番草 6.4 14.7 9.8 5.9×106 7.9×105 10/2調査
(水分45%) 5.1 29.7 7.6 1.1×105 2.8×102 1日7〜9㎝取出し
T-1 混播1番草 4.5 21.7 10.4 2.9×10 <10 10/23
(水分65%) 4.3 25.8 11.7 <10 <10  〃
T-3 混播1番草 4.6 1.6(乳酸) 10.3 6.2×102 1.3×103 12/11
(水分58%) 4.6 2.2(乳酸) 10.8 <10 <10  〃
Ty-2 混播1番草 3.6 21.5 8.2 2.0×106 9.9×10 O2・CO2
20%・0%
0.6・38
仕切り上㎝
(詰込直後から
給与して16日目)
(水分69%) 3.8 15.1 10.5 1.1×104 <10
D-3 混播1番草 4.9 27.4 10.9 1.6×105 2.5×105 開封後15日間
(水分62%) 4.9 21.0 10.7 <10 <10 27℃放置
D-4 混播1番草 5.0 20.3 13.0 <10 1.3×103  〃
(水分61%) 4.9 78.9 10.3 2.7×104 <10  〃

 水蓋法による品質安定性の改善
区 分 PH 菌 数 27℃における安定性
酵母 かび R H S
装着時 4.38 2.3×104 1.7×103      
4.36 8.3×105 2.2×105 20 0.28 71
撤去時 4.21 4.3×105 1.3×105 86 0.08 1075
R:品質保持時間、H:発熱勾配、S:品質安定係数

11.今後の問題点
 バンガローサイロ、スタックサイロにおける2次発酵抑止法の検討、及び、添加物の効率的利用法の検討などを進める必要がある。

12.成果の取扱い
 農家サイロにおける2次発酵の誘発進行は多くの要因が複雑に関係している場合が多いのでその全てが解明されてはいない。従って今後も研究は継続するが、当面の2次発酵対策に関する資料として普及指導上の参考にしたい。