1.課題の分類 土肥(2-1-2b) アスパラガス 土壌肥料 道立中央農試 2.研究課題名 有珠山噴火に伴う降灰による農作物被害および対策に関する試験調査 アスパラガス畑の復旧工事の効果と生育追跡調査 3.期間 S53(52〜54) 4.担当 化学部土壌肥料第1科/園芸部花きそ菜科/中央専技室 5.予算区分 総合助成 6.協力分担関係 北海製缶(株)研究所 |
7.目的
被害状況(降灰礫時の残葉率と秋季生育量)と復旧工事後の53年以降の生育回復状況の関連を調査するとともに、簡易復旧工事や早期降灰などの効果を検討する。なお、その一部については復旧工事後の資材施用効果を試験し、対策樹立の資とする。
8.試験研究方法
(1)生育追跡調査
調査地:関内、気門別、月浦、泉の各地区
調査事項:残葉率、秋期生育程度、その他
(2)復旧工事の効果試験
東関内試験地:夏畦内除灰区および標準工区(晩秋除灰復旧工事) 2処理 1区制
中気門別試験地: 〃 および夏畦内除灰早春簡易復旧工事 3処理 1区制
中気門別試験地(新植):夏畦間耕耡処理(片側プラウ耕、両側プラウ耕、ロータリー耕)および無処理
計4処理1区制、各区晩秋除灰復旧工事
9.試験結果の概要
永年作物であるアスパラガスの養分蓄積盛期における降灰被害(図1)は、降灰類型によって異なり、Ⅳb、Ⅵc型では被害残葉率50%以下となり、52年秋期(枯葉期)に至り若干の回復をみたが、観察による生育量は正常年の30〜50%程度であった。一方、Ⅲb型は砂礫灰のため被害残葉率は90%と多かったが、降灰量が多く秋期(52年)の生育量は正常の60〜70%に低下していた。
この観察調査にあわせて、 アスパラガスの貯蔵養分を根中のブリックス(Bx)値をもって測定し、茎葉の生育程度は生育指数(G.I)をもって調査した。生育回復目標値は53年秋期、Bx20以上、GI2,000以上とした。なお、調査した降灰被害畑の栽培歴、復旧工法およびその後の栽培管理状況は表1に示した。
(1)生育追跡調査結果
①貯蔵根のBx(図2)は降灰年秋と53年春はともに、残葉率や52年秋の生育量が50%以下の所(Ⅳb、Ⅵc)は10〜15
以下のものが殆どであった。しかし53年の収穫期間短縮処置の結果、53年秋には各地区ともに平年並に回復した。
(10山神は茎枯多発ほ)
②一方、53年秋の生育量をG.I(図3)で示すと、降灰被害程度の小さかったⅢbや52年秋の根中Bxの高かった(Ⅵc
佐藤、Ⅳb宮崎)あるいは極早期収穫打ち切り(Ⅵc山神、Ⅳb森)の所で目標G.I2,000を上廻った。その他の所では
G.I1,500程度と茎葉の生育は劣った。
(2)復旧工事の効果試験結果
①復旧工事の効果(図4)は関内Ⅲb−阿部、気門別Ⅵc−横山ともに53年秋期の生育は早期除灰区より生育がよく、
G.IおよびBxともに優った。また、早期除灰区に53年春、灰鋤込あるいは灰・堆肥鋤込をしたところ若干ながら生育良
好となった。しかし、横山試験地は全般的に生育回復が悪く、処理間の差は必ずしも判然としたものではない。
また、早期降灰と晩期降灰の差は小さく、この差は経年的に解消されるものと推定される。
②新植畑の夏畦間耕鋤処理試験は観察調査の結果、全般に著しく欠株が多く、処理間差の検討ができなかった。つま
り、アスパラガス新植畑は降灰被害から立ちなおりがにぶく、簡易なプラウ除灰程度では効果があまり認められない。
この要因は貯蔵根量の絶対的な不足に起因すると考えられる。
10.主要成果の具体的数字
場所 | 農家名 | 低植後 の年数 (年) |
52年度 | 52〜53年 | 53年度 | 降灰 類型 |
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作型 | 収穫 打切日 (月日) |
収量10 アール 当たり(kg) |
災害復旧工事 | 作型 | 収穫 日数 |
収量10 アール 当たり(kg) |
収量前 年対比 |
規格内 収量割 合(%) |
||||||
工法 | 時期 | |||||||||||||
1 | 伊達市東関内 | 阿部 | 7 | Gトンネル | 5.30 | 300 | 除灰E | 52.11下 | G | 30 | 200 | 66.6 | 78.1 | Ⅲb |
2 | 伊達市西関内 | 堀込 | 8 | W | 7.10 | 700 | 畦上除灰 | 53.5.10 | 〃 | 30 | 120 | 17.1 | 96.1 | 〃 |
3 | 伊達市気門別 | 佐藤 | 7 | Gトンネル | 6.5 | 330 | 除灰E | 52.11下 | 〃 | 46 | 180 | 54.5 | 70.3 | Ⅵc |
4 | 〃 | 太細 | 7 | G | 6.10 | 250 | 畦上除灰 | 53.5上 | 〃 | 12 | 50 | 20.0 | 60.6 | 〃 |
5 | 〃 | 横山 | 4 | G | 6.5 | 150 | 除灰E | 52.11上 | 〃 | 30 | 50 | 33.3 | 61.6 | 〃 |
6 | 虻田町月浦 | 青山 | 13 | G | 7.15 | 550 | 除灰B | 52.12上 | 〃 | 41 | 150 | 27.2 | 37.9 | Ⅳb |
7 | 〃 | 宮崎 | 7 | G | 8.6 | 600 | 〃 | 52.11下 | 〃 | 54 | 400 | 66.6 | 67.6 | 〃 |
8 | 〃 | 高橋 | 4 | G | 6.10 | - | 〃 | 52.9.9 | 〃 | - | - | - | - | 〃 |
9 | 〃 | 森 | 4 | G | 6.15 | - | 〃 | 52.11下 | 〃 | 16 | 50 | 9.1 | 42.7 | 〃 |
10 | 虻田町泉 | 山神 | 7 | Gトンネル | 5.20 | 500 | 手ホー | 53.4上 | トンネル | 46 | 300 | 60.0 | 39.2 | Ⅵc |
図1 降灰後の残葉率、枯葉期の生育割合および若茎萌芽状況
図2 根中糖度(ブリックス)の推移
図3 茎葉生育量と根中糖度(53秋)
図4 茎葉生育量と根中糖度(53秋)
11.今後の問題
(1)生育追跡調査の結果、若茎収穫期間短縮によりアスパラガスの貯蔵根中養分はBx値からみて充分に回復している。
しかし、茎葉生育量(G.I2,000)以下のところでは来年度も引き続いて若茎収穫期間短縮と茎葉生育増長のための土
壌肥培管理が必要である。
(2)泉−山神にように生育指数が3,000以上ありながら、Bxが20以下と低いのは茎枯病の多発である。他地区において
も株の回復を阻害する病害の防除には特に注意せねばならない。
(3)アスパラガス苗の新植畑は成園ほに比べ降灰被害からの立ちなおりが弱く、欠株が多いので、降灰の程度に応じ
改植などの判断が必要となる。
12.次年度研究計画 継続