1.課題の分類  畜産 乳牛 生理
2.研究課題名  有珠山噴火農業災害調査
          ・草地・飼料作物および家畜
          (3)火山灰採食が乳牛に及ぼす影響
3.期間  昭和52年
4.担当  北農試畜産部対策プロジェクトチーム
5.予算区分  緊急調査
6.協力分担  家衛試北海道支場

7.目的
被災地において、牛は量の多少はあるにしても、かなり長期間にわたり、粗飼料と共に火山灰を採食せざるを得ない状況にあるこのため粗飼料と共に火山灰を採食した場合に牛に与える影響を調べた。

8.試験研究方法
下記の3種の調査を行った。
1)被災現地の酪農家のホルスタイン種牛の血液性状および牛乳成分を噴火直後より、1カ月毎に3回調査した。
2)ホルスタイン種泌乳牛4頭を用い、試験区、対照区各2頭ずつに分け、配合飼料と青刈牧草を給与した。試験区には1日1kgの火山灰を配合飼料に混じて与えた。試験期間は40日間で、この間、血液性状、乳量、乳質、体重、飼料の採食状況を調査し、試験末に消化試験、窒素及びミネラルの出納試験を実施した。
3)ホルスタイン種雌育成牛1頭について、1日1kgの火山灰を配合飼料に混じて30日間与えた。この間血液性状の変化を調査し、試験終了後と殺し、内蔵諸臓器について肉眼的な異常の有無を検討するとともに、ミネラルの含量をも調べた。(と殺区)

9.結果の概要
1)現地の調査牛の血液性状および乳質には火山灰採食によると考えられる変化は認められなかった。
2)試験区は当初、残食を生じ、乳量は減少した。乳質には両区間に差を認めなかった。
3)血液性状では、火山灰を採食した牛でA/G比の僅かな低下、グロス反応の軽い陽性、コリンエステラーゼの低下を認めた牛がおり、火山灰によって消化管に軽度の物理的損傷を起した可能性を認めたが、牛の健康に支障を来たすものとは考えられなかった。その他の血液性状では、火山灰採食の影響を認めなかった。
4)一般成分の消化率は、粗灰分が試験区で低下した以外は、火山灰採食によって影響を受けなかった。エネルギーの利用率、N出納も影響を受けなかった。ミネラル出納については、試験区でSiの体内の残留が対照区より多かったが、その他のミネラルの出納は両区の間に著差を認めず、火山灰より摂取したミネラルは大部分、糞と尿中に排泄された。
5)消化管内容物には1%程度の火山灰が混在し、とくに第4胃及び十二指腸部には混在率が高く、消化管全面の粘膜雛襞に少量の火山灰の沈着が認められた。第4胃粘膜の一部に極めて軽度な、びまん性潮紅を認めたが、一般的な解剖所見でも、しばしば発見される程度であり、火山灰採食と関連づけるには疑問がある。

10.主要成果の具体的数字


詳細は下記の資料を参照
 北海道農試研究資料第13号
 北農45巻12号、46巻1,2号(掲載予定)

11.指導上の注意事項
本試験の結果から、乳牛に火山灰を1日1kg採食させると、飼料採食量、乳量の減少が認められたが、その他の障害は認められなかった。しかし、試験期間が30〜40日という短期間であったために、この結果から直ちに火山灰を採食させても安全であると速断することはできない。
火山灰の付着した飼料は、可能な限り火山灰を除去してから乳牛に給与すべきであり、特に硫黄分の多い火山灰の場合には十分に注意すべきである。