【指導参考事項】
2.研究課題名  水稲の苗質改善
           2)冷害年における成苗ポット苗の効果
3.期   間  昭和52年〜昭和55年
4.担   当  北見農試 普通作物科
5.予算区分  総合助成
6.協力分担  上川農試 中央農試

7.目  的
 寒地水稲機械栽培における安定確収技術を苗質の面から検討する。
8.試験方法
供試品種 「はやこがね」
苗の種類
(播種量)
成苗(250cc/㎡)、成苗ポット苗(3〜4粒/ポット)
型枠苗(100,150cc/枠)、マット苗(150,200cc/箱)
移植期 標準植:53年−5月24日、54年、55年−5月28日
晩 植:53年〜55年−6月5日
育苗日数 35日(成苗ポット苗は晩植で35日と43日)
栽植密度 27.5株/㎡(30.3cm×12.0cm)
施肥量 N:-0.5、P2O5:-0.6、K2O:-0.4(kg/a)

9.結果の概要、要約
 1)出穂の遅速は移植時の苗の葉数と密接な関係を持つ。出穂晩限(8月5日)以前に出穂するためには、5月中に移植が行われた場合(標準値)には葉数3〜3.5枚程度で十分であるが、晩植(6月5日頃)された場合には4葉以下では8月5日以後に出穂する危険性がある。成苗ポット苗は35日程度の育苗日数でも乾物重30mg以上で充実度の高い4葉苗が容易に得られる。育苗日数を43日まで延長すれば、さらに葉数は増え出穂は早くなる。うすまき型枠苗(100cc)、うすまきマット苗(150cc)も4葉に近い苗が得られる。
 2)晩植により減収するが、その主原因は1000粒重、穂数等の構成要素の減少にあると判断される。成苗ポット苗は穂数が多く晩植での減少程度も小さいため、1000粒重、1穂籾数が少ないにもかかわらず収量は最高水準にある。型枠苗の構成要素は中庸であり収量も比較的多い。うすまき苗で更に増加する傾向にある。マット苗は、1000粒重、1穂籾数は多いが穂数が少なく、収量の変動も大きい。すなわち、標準植では比較的安定しているが、晩植すると構成要素の減少が大きく収量は低下する。
 3)穂揃性は晩植で悪化する。成苗ポット35日苗、うすまき型枠苗の穂揃性は、マット苗より良く成苗並であり、晩植による悪化も少ない。成苗ポット43日苗は、55年のような気象条件下では、主稈からの不時出穂が目立ち、穂揃性は著しく悪くなる。
 4)出穂性、収量性、穂揃性から総合てきに判断して、成苗ポット苗は標準植でも晩植でも安定してすぐれている。うすまき型枠苗は成苗並であり有望と思われる。

10.主要成果の具体的数字
 移植時の苗葉質、出穂期および収量
  苗素質 出穂

(月・日)
穂揃
構成要素および収量
葉数
(枚)
乾物
充実
株当
穂数
穂当
籾数
㎡当
籾数
千粒
重(g)
稔実
歩合
収量
(kg/a)


53
成苗 3.5 3.11 2.75 7-21.5 - 26.5 52.6 383 20.1 93 51.2
成ポ 3.7 3.18 3.03 7-19.5 - 27.8 50.3 38.4 19.9 95 54.3
型枠 3.2 2.58 2.24 7-20.5 - 26.2 52.2 37.6 20.1 96 52.0
マット 2.2 2.01 1.27 7-24.0 - 26.9 52.0 385 20.5 96 51.6
54
成苗 3.9 3.51 2.83 8-2.5 5.09 23.5 45.2 292 19.4 69 39.8
成ポ 4.2 3.56 3.10 8-1.0 5.19 26.6 38.3 280 19.0 58 32.4
型枠 3.9 2.59 2.21 8-2.5 - 24.5 42.3 285 19.1 69 39.3
マット 3.4 2.31 1.83 8-5.5 4.75 25.3 40.8 284 19.8 83 45.7
55
成苗 4.3 4.26 2.70 7-25.0 6.88 29.8 42.2 346 19.6 64 40.5
成ポ 4.3 4.49 3.08 7-23.5 5.96 30.9 41.5 353 19.5 70 43.1

100cc 4.0 3.53 2.11 7-25.5 7.20 30.6 42.1 354 19.3 64 41.3
150cc 4.0 2.81 1.71 7-24.0 6.29 30.4 42.3 354 19.5 66 42.4


100cc 3.8 2.43 2.03 7-27.5 6.59 28.8 41.2 326 19.4 73 38.6
150cc 3.7 2.16 1.97 7-29.0 7.08 28.8 42.3 335 19.4 52 37.8

53
成苗 3.8 3.78 3.00 7-22.0 - 23.9 50.6 333 20.9 96 56.3

35日 4.4 3.95 3.80 7-21.0 - 28.1 41.8 323 20.7 97 55.2
43日 - - - 7-20.0 - 26.9 44.8 331 20.2 97 56.7
型枠 - - - 7-21.5 - 26.1 48.9 351 20.7 97 59.0
マット - - - 7-23.0 - 26.4 45.9 333 20.9 97 56.5
54
成苗 4.2 4.85 3.05 8-2.0 4.49 22.5 36.4 225 18.8 66 27.4

35日 4.4 4.50 3.13 8-2.0 4.23 24.7 33.6 22.8 18.7 58 25.8
43日 4.6 4.64 3.71 8-1.0 4.19 25.1 37.5 259 18.7 59 27.6
型枠 3.9 3.21 2.01 8-3.5 - 20.7 40.2 229 19.4 73 31.9
マット 3.8 3.07 2.09 8-5.5 5.52 21.7 39.6 236 19.6 83 39.0
55
成苗 4.2 5.21 3.00 7-30.0 5.70 26.1 42.9 308 19.3 57 34.8

35日 4.6 5.37 3.09 7-29.5 6.40 28.6 41.6 327 19.2 66 35.0
43日 5.1 6.62 3.42 7-29.0 9.03 29.3 39.3 317 19.1 65 31.6

100cc 4.2 3.22 1.82 7-30.5 6.91 26.4 43.9 319 19.1 60 32.8
150cc 4.2 2.79 1.73 8-3.5 7.71 25.0 43.4 298 19.1 42 27.9


150cc 4.2 2.82 1.67 7-30.0 7.10 24.9 44.6 305 19.3 44 29.8
200cc 4.0 2.37 1.31 7-31.5 7.30 22.5 46.6 288 19.2 41 26.9
注)乾物重:茎葉乾物重(g/100本)、充実度:茎葉乾物重/草丈
  出穂期:観察による、穂揃性:株内日別出穂本数の標準偏差
  ㎡当籾数:株当穂数×穂当籾数×27.5×10-2
  成ポ:成苗ポット苗、型枠:型枠苗、マット:マット苗
  (35日、43日は育苗日数、100cc、150cc、200ccは播種量を示す)