【普及奨励事項】
1.課題の分類  分類番号 Ⅰ-a 整理番号 131-1
2.場所名  北海道農業試験場
3.新品種候補系統名  北海60号

4.来歴
 昭和45年北海道農業試験場において「トヨシロ」を母,「北海60号」を父として交配を行ない,昭和51年に「島系516号」,昭和52年に「北海60号」の系統名を付した系統である。
母親の「トヨシロ」は昭和51年に育成された加工食品原料用品種で,還元糖含量低く「エニワ」を父親にもつ品種である。父親の「北海51号」はS.demissumとの種間雑種に戻し交雑を重ねて育成した系統で「トヨシロ」同様に「エニワ」を片親にもつ,極めて還元糖含量は低いが,塊茎が小粒の系統である。

5.特性
 茎長は「トヨシロ」,「農林1号」より高く,草型はやや直立,葉・茎ともに緑色である。萌芽時葉に紫色を帯びる。小葉は「トヨシロ」よりやや大きいが形は「トヨシロ」に似てやや細長い。花は淡紫色で,先端部は表裏とも白である。花数多く自然結果も多い。
 塊茎は長惰円形,皮色は淡褐色でわずかにネットを帯びる。目は浅く,小さい。肉色は淡黄色である。
 茎葉黄変期は「トヨシロ」より20日程度遅い中晩生種に属し,「農林1号」並の枯凋期である。収量は「トヨシロ」より10〜15%多く,澱粉価は「トヨシロ」並である。収穫直後の塊茎の還元糖含量は「トヨシロ」並で,低温貯蔵中の還元糖の増加程度は「トヨシロ」他の品種より少ない。塊茎の渇色心腐れ,中心空洞は大いもにおいてもみられず,フレンチフライの良品歩留まり高い。肉質はやや粘質で調理後黒変は生じない。疫病抵抗性は「トヨシロ」並で,ウイルス病抵抗性はない。塊茎腐敗にはやや強い。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性はもたない。

6.試験成績
 道内試験研究機関における収量調査成績(試験年次平均)
項目 場所/系統名 北農試 中央 上川 十勝 北見 根釧 平均
枯凋期
(月日)
北海60号 9.29 9.29 9.29 9.25 10.4 9.29
農林1号 9.28 9.25 9.24 9.19 10.2 9.26
トヨシロ 9.7 9.14 8.29 9.3 9.19 9.2 9.1
上いも
収量比
(%)
北海60号 128 121 112 123 111 103 116
農林1号 128 93 122 114 104 98 110
トヨシロ 100 100 100 100 100 100 100
中以上
いも収量比
(%)
北海60号 133 104 113 125 112 107 116
農林1号 133 87 131 117 104 105 113
トヨシロ 100 100 100 100 100 100 100
上いも
平均1個重
(g)
北海60号 124 87 102 111 153 124 117
農林1号 134 108 106 97 137 128 118
トヨシロ 107 148 95 98 134 106 115
澱粉価
(%)
北海60号 18.5 15.4 18.8 17.5 16.8 17 17.3
農林1号 18.5 14.4 18.6 17.1 17 16.7 17.1
トヨシロ 18.3 14.8 20.1 17.1 16.9 16.4 17.3


貯蔵中における還元糖含量の変化

7.保有種いも量:1000Kg
8.奨励品種採用予定県:北海道
9.栽培適地及普見込面績:北海道の食品加工原料ばれいしょ栽培地帯,3000ha
10.栽培上の注意
 1)初期生育遅いので,浴光催芽により生育の促進を図る。
 2)多肥は増収するが,密植は小いもが多くなる。加工原料用では,3500株程度で大いもが得られる。
 3)塊茎が大きく,長惰円形で,地表への露出,緑化防止のために畦幅は75㎝程度に広くして,培土を十分に行なうこと。
 4)疫病の防除はトヨシロに準ずる。
 5)シストセンチュウ抵抗性はないので,その発生地帯においては「トヨシロ」など感受性品種と同様の扱いをする。