【普及奨励事項】
| 1 研究課題名 醸造用ブドウ品種「ツバイゲルトレーベ」に関する試験 2 期 間 昭和50年〜55年 3 担 当 北海道立中央農業試験場 園芸部 果樹科 4 予算区分 道 単 5 協力分担 な し |
6 目 的
醸造用ブドウ品種「ツバイゲルトレーベ」の本道に於る適応性を検討する。
7 試験研究方法
(1)来 歴
原 名 「Zweigeltrebe」
育成方法 「ブラウフレンキッシュ(=リンベルガー」×「サンローラン」の交配による(1882)
育成場所 オーストリア クロスターノイブルグ ワイン・果樹栽培学校
導入先 オーストリア クロスターノイブルグ修道院ワイン部
導入年次 昭和48年12月(隔離解除 昭和50年3月)
(2)試験場所、供試樹数及び栽植年次
| 試験場所 | 供試樹数 | 栽植年次 |
| 中央農試園芸部ほ場 | 2 | 昭和50年4月 |
| 仁木町(現地委託) | 2 | 〃 |
| 富良野市(現地委託) | 2 | 〃 |
8 結果の要約(特性の概要)
(1)現在本道において奨励されている醸造用ブドウ品種がないので、国の内外から醸造用品種61品種を導入し、耐寒性、収量、熟期、果実品質等から16品種を選抜し、更に本道における適応性及びその醸造適性を検討した結果、4品種が特に有望であると考えられた。
選抜の基準は、10a当たり1t(本試験の栽植距離で1樹当たり5kg)程度の生産が可能で、完熟し、糖度は15%以上あって、醸造適性のあるものとした。
(2)本品種は欧州種(Vitis vinifera)であり、赤ワイン用醸造専用品種である。
(3)耐寒性は特に高い方ではなく、各地とも年により凍害を受けたが、中央農試、仁木では凍害による減収は少なかった。
(4)樹勢は中位で、葉が大きく、垣根仕立て栽培によく適合する。
(5)灰色カビ病には強い方ではない。
(6)1樹当たり収量は、3ヶ年平均でみると中央農試で約5kg、仁木は6kgを超え、生産性は高い方であるが、富良野ではやや少なく、4kgに達しなかった。
(7)熟期は中央農試10月上旬、仁木では9月下旬である。
(8)果皮色は紫黒色となる。果房は円錐形で有岐であることが多い。粒着は極密着性で、大きい。果粒は円で、中程度の大きさである。花振い、裂果はほとんどない。
(9)糖度は各地とも18%前後である。酸度は中央農試で約1.3g/100mLであり、仁木ではやや低くなる。
(10)果汁歩合は高く、醸造に当たっての問題点は特になかった。酒質については、色調、清澄度とも良く、香りは繊細でやや軽い。味は渋味、コクがやや乏しく、赤ワインとしては淡白であるが、バランスのとれた良質のワインであった。官能テストによる評価は高かった。
(11)本品種の耐寒性は高い方ではないが、中央農試及び仁木では収量が比較的多く、完熟し、果実品質も良く、醸造適性も高いため、道央中部以南における赤ワイン用醸造専用品種としての要望にそうものであると考えられる。
9 主要成果の具体的数字
第1表 凍害被害程度
| 項目/年次 | 中央農試 | 仁木 | 富良野 | ||||||||||||||||||
| 樹 数 |
程度別樹数 | 平均 | 樹 数 |
程度別樹数 | 平均 | 樹 数 |
程度別樹数 | 平均 | |||||||||||||
| 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | |||||||
| 昭和51年 | 3 | 3 | 1.0 | 5 | 5 | 1.0 | 5 | 2 | 3 | 0.6 | |||||||||||
| 52 | 3 | 2 | 1 | 1.3 | 5 | 2 | 3 | 0.6 | 5 | 3 | 2 | 1.4 | |||||||||
| 53 | 3 | 3 | 2.0 | 5 | 3 | 1 | 1 | 1.6 | 5 | 5 | 2.0 | ||||||||||
| 54 | 3 | 2 | 1 | 1.3 | 5 | 1 | 3 | 1 | 1.0 | 5 | 1 | 3 | 1 | 3.0 | |||||||
| 55 | 2 | 2 | 2.0 | 5 | 5 | 1 | 3 | 1 | 2.0 | ||||||||||||
第2表 収量、果実品質
| 場所 | 中央農試 | 仁木 | 富良野 | |||||||||
| 項目/年次 | 採収 月日 |
収量 | 糖 | 酸 | 採収 月日 |
収量 | 糖 | 酸 | 採収 月日 |
収量 | 糖 | 酸 |
| 昭和51年 | 9.28 | kg/樹 0.2 |
% - |
g/100mL - |
9.27 | kg/樹 1.7 |
% - |
g/100mL - |
- | kg/樹 - |
% - |
g/100mL - |
| 52 | 10.7 | 4.0 | 17.2 | 1.20 | 9.22 | 6.2 | 17.2 | 1.16 | 9.26 | 2.8 | 17.0 | - |
| 53 | 9.19 | 4.4 | 18.6 | 1.36 | 9.17 | 3.8 | 19.0 | 1.11 | 9.18 | 3.9 | 18.0 | - |
| 54 | 10.6 | 5.9 | 16.8 | 1.36 | 9.25 | 8.6 | 16.8 | 1.32 | 10.9 | 5.7 | 20.0 | - |
| 55 | 10.6 | 6.0 | 19.0 | 1.35 | 10.8 | 6.8 | 20.0 | 1.16 | 10.2 | 2.0 | 18.2 | 1.43 |
| 平均 | 5.4 | 17.9 | 1.32 | 6.4 | 18.3 | 1.19 | 3.9 | 18.3 | ||||
第3表 醸造適性
1 醸造特性
| 醸造 年次 |
仕込み 区分 |
重量 kg |
果汁 L |
酒母 L |
補糖量 ㎏ |
製成量 L |
果汁歩 合% |
補糖歩 合% |
果実酒 歩合% |
| 昭和53年 | カモシ | 22.0 | 15.1 | 1.3 | 0.83 | 16.0 | 68.6 | 3.8 | 72.7 |
| 昭和54年 | カモシ | 18.2 | 12.7 | 0.6 | 0.96 | 13.2 | 69.8 | 5.3 | 72.5 |
2 果汁、果実酒の特性
| 醸造 年次 |
仕込み 区分 |
果汁 | 果実酒 | |||||||
| 比重 | 糖度 | 酸度 | PH | 比重 | アルコール | エキス | 酸度 | PH | ||
| 昭和53年 | カモシ | 1.082 | 19.64 | 14.67 | - | 0.995 | 12.2 | 3.02 | 10.75 | 3.10 |
| 昭和54年 | カモシ | 1.074 | 17.48 | 14.82 | 3.1 | 0.996 | 12.0 | 3.23 | 13.70 | 3.1 |
10 適央地帯
空知以南およびそれに準ずる地帯
11 栽培上の注意事項
(1)凍害防止、樹勢維持のため、冬期間の枝伏せを実施すると共に、結果過多にならないよう注意する。
(2)灰色カビ病に対しては強い方ではないので、その他の病害虫の発生にも留意し、適切な防除を行なう。
(3)早採りでは品質が劣り、結果過多により熟期が遅れ、品質が低下するので、結果量を適正にし、完熟した果実の収穫を心がける。
(4)フィロキセラに対する抵抗性がないので、栽培に当ってはフィロキセラ免疫台接木苗を用いる。