【指導参考事項】
土壌および作物栄養の診断基準
(昭和54〜55年)
北海道農業試験場
北海道立中央・上川・道南・十勝・根釧・北見・天北農業試験場
北海道農務部農業改良課

目  的
 国の施策の推進もあって、最近は、肥培管理改善のための土壌診断活動が滲透、活発化するとともに、これに対する期待も高まってきている。一方、現場での作物栄養診断の事例もみられるようになった。このような情勢に対応するため、これまでの知見を整理して診断基準を設定し、これら診断活動の適確な運用に資することとした。

検討方法
 「土壌および作物栄養の診断基準」検討委員会で検討。
1 検討委員会の構成
総括検討会 水田部門 検討小委員会
畑部門
園芸部門
草地部門
環境保全部門

2 検討委員
 (総括)北農試農芸化学部長、中央農試化学部長、同環境保全部長
 (委員)北農試土壌肥料関係各研究室長
     道立農試 土壌肥料、環境保全関係各特別研究員、研究科長、専門技術員

検討結果の概要
 1.この基準は、土壌診断、作物栄養診断での測定ならびに分析結果について、その適否判定を行うに当っての基準値を示したものである。
 2.土壌診断基準の作成では既往の「土壌改良目標値(昭和49年農務部)」を基礎とし、土地利用区分をさらに細分化するとともに新たな診断項目も補足追加して基準値を設定した。作物栄養診断基準では、主要作物について三要素のほか多くの要素の基準値設定を図った。環境保全関連の基準についても作成し、参考に供することとした。
 3.基準値は、下限あるいは上限のみでなく、できるだけ適正な範囲として示した。
なお、基準値設定にかかわる基礎資料の出典は参考文献欄に記載した。
 4.既に農業試験会議等において公表された、関連する基準の主なものについては、参考資料として一括して示した。
 5.道内における試験研究成果の蓄積が不充分なため道外の成績を参考として設定した基準値もあり、また、未設定の項目も残されている。したがって、今後の試験研究成果によって逐次、診断項目の補足設定あるいは基準値の改訂等を行うこととしている。

土壌診断基準一覧表(育苗床土を除く)
診 断 項 目 単位 水田 普通畑 野菜畑 樹園地 草地(造成、更新) 草地(維持管理)
造成・更新園 維持管理園 火山性土 非火山性
鉱質土
泥炭土 火山性土 非火山性
鉱質土
泥炭土


作土の深さ cm 15〜20 20〜30 20〜30 30以上 - 20〜30 20〜30 10〜20 - - -
有効土層(有効根域)の深さ cm 50以上 50以上 施設 40以上
露地 50以上
100以上 - 30以上 30以上 30以上 - - -
土壌のち密度 mm 心土
18〜20
心土
18〜20
心土
18〜20
根圏
18〜22
作土
18〜22
有効根域
18〜22
有効根域
18〜22
- 有効根域
24以下
有効根域
24以下
-
作土の周相率 % - 火山性土 20〜30
非火山性土 40以下
鉱質土
- 根圏
35〜45
- 25〜35 40以下 - - - -
作土の粗孔隙 % - 15〜25 15〜25 根圏15〜25 作土
15〜25
15〜20 10以上 - 有効根域
10以下
有効根域
10以下
有効根域
10以下
作土の易有効水容量 mL/100mL - 15〜20 15〜20 - - 15〜20 10〜15 - - - -
作土の砕土率(20mm以下土塊) % - 70以上 70以上 - - - - - - - -
収穫期土壌水分(Ic) - 0.5〜1.0 - - - - - - - - - -
垂直滲透量 mm/day 15〜20 - - - - - - - - - -
透水係数 cm/sec 10-5 10-3〜10-4 10-3〜10-4 10-3〜10-4 - 10-3〜10-4 10-3〜10-4 10-3〜10-4 - - -
地下水位 cm 60以下 60以下 60以下 100以下 - 60以下 60以下 50〜70 60以下 60以下 50〜70
作土の土砂含量 重量% - - - - - - - 50以上 - - -


(対象土層) - (作土) (作土) (作土) (根圏及び
全園作土)
(作土) (耕起層、ただし不耕起法では0〜10cm) (0〜5cm)
pH(H2O) - 5.5〜6.0 6.0〜6.5 6.0〜6.5 6.0〜6.5 5.5〜6.0 6.5 6.5 6.5 5.5〜6.5 5.5〜6.5 5.5〜6.5
電気伝導度(EC) m.mho/cm - - 中粒質土
0.7以下
- - - - - - - -
有効態りん酸(P2O5)* mg/100g 湛水前 10以上
分けつ盛期 20〜40
10〜30 15〜30 10 10〜20 20以上 20以上 30以上 20以上 20以上 30以上
置換性石灰(CaO) mg/100g 粗粒質土80〜150
中 〃 150〜300
細 〃 250〜400
粗粒質土80〜150
中 〃 200〜300
細 〃 300〜600
粗粒質土100〜180
中 〃 180〜350
細 〃 280〜450
中粒質土
200〜350
中粒質土
200〜350
350以上 400以上 700以上 140以上 200以上 400〜800
置換性苦土(MgO) mg/100g 25以上 25〜45 中粒質土
25〜40
25〜40 25〜40 25以上 25以上 40以上 20〜30 20〜30 30〜50
置換性加里(K2O) mg/100g 15〜30 15〜30 中粒質土
15〜30
15〜30 15〜30 15〜20 15〜20 20〜40 18〜30 18〜30 30〜50
石灰飽和度 % 35〜50 40〜50 40〜60 40〜60 40〜60 50〜70 50〜70 50〜70 - - -
塩基飽和度 % 40〜60 60〜80 60〜80 50〜80 50〜80 60〜80 60〜80 60〜80 - - -
石灰・苦土比(Ca/Mg) (当量比) 6以下 6以下 4〜8 4〜8 4〜8 5〜10 5〜10 5〜10 5〜10 5〜10 5〜10
苦土・加里比(Mg/K) (当量比) 2以上 2以上 2以上 2以上 2以上 2以上 2以上 2以上 2以上 2以上 2以上
可給態珪酸(SiO2) mg/100g 15以上 - - - - - - - - - -
遊離酸化鉄(Fe2O3) % 1.5 - - - - - - - - - -
易還元性マンガン(Mn) ppm 100〜1,000 100〜500 - 250以下 250以下 - - - - - -
熱水可溶性ホウ素(B) ppm - 0.5〜1.0 - 0.8 0.8 - - - - - -
可溶性亜鉛(Zn) ppm - 2〜40 - - - - - - - - -
可溶性銅(Cu) ppm - 0.5〜8.0 - - - - - - - - -
*水田、草地ではブレイNo.2法の測定値。普通畑、野菜畑、樹園地ではトルオーグ法の測定値による。

普及指導上の注意事項
 土壌、作物栄養の診断では、目的に応じて診断項目の適切な選定を図ることが必要である。また、採取試料の分析測定結果と併せて、土壌断面、作物の生育状況、栽培管理法等についての現地圃場での調査結果も総合して診断を行う配慮が大切である。