【普及奨励事項】
1.課題の分類  線虫・花弁
2.研究課題名  花ゆりに寄生するイチゴセンチュウの生態と防除に関する試験成績
3.期  間  昭和54年〜55年
4.担  当  中央農試病虫部害虫科
5.予算区分  
6.協力分担

7.目  的
 本線虫の花ゆりにおける生態と防除法を明らかにする。

8.試験研究方法
 1)発生実態調査:厚田村の10ほ場で線虫寄生数と被害の関連を知る。また他地域での分布を知る。
 2)線虫の寄生状況と被害症状
 3)線虫の消長と被害の推移:高密度ほ場に「明錦」養成球を前年10月に定植し翌春5月より約10日ごとに調べる。
 4)輪作の効果:非寄生生物(秋播小麦)栽培による土壌中線虫の密度変動。
 5)防除法:燐茎の薬液浸漬と土壌処理の組合せ。

9.結果の概要・要約
 1)発生実態調査:葉の褐変の進展した個体ほど分離される線虫数が多く、また葉の症状別では褐変葉からの線虫検出率が極めて高く、健全葉からはほとんど検出されないことからこの葉枯症状の原因がイチゴセンチュウによることが判明した。発生確認町村と品種は、名寄市、真狩村、厚田村、栗山町では「明錦」で、大野町では不明品種から検出された。(図1)
 2)線虫の寄生状況と被害症状:葉には裏面の組織内に寄生する。寄生葉は退緑が進み黄変することが初期には寄生部位が黄色、寄生しない部位が緑色と葉脈により区切られモザイク状を呈するが症状が進むと全体が黄・褐変し枯死に至るが、葉は茎から離れずたれ下る。乾燥葉では長期間生存する。鱗茎、根には内部寄生しない。
 3)線虫の消長と被害の推移:被害葉(黄褐変葉)は6月上旬より増加を続け7月中旬の開花期には約10枚となり10月上・中旬には、ほとんどが被害葉となる。葉内線虫は急増を続け10月には3万頭に達する。5月中・下旬には未展開の生長点付近の密度が高いが、6月上旬から7月中旬には下葉から20葉までがほとんどとなる。8月中旬には40葉以上の上葉にも移行、増殖する。地下の鱗茎内線虫は5月下旬に高まり、地上部の生育につれて葉に移行し減少するが、8月、10月の降雨による葉から遊出のために高まり、鱗茎内に越年し翌年の発生源となる。(図2〜5)
 4)輪作の効果:秋小麦「ホロシリコムギ」栽培で土中線虫密度は殆んど0となった。
 5)防除法:別紙「花ゆりのイチゴセンチュウに対するメソミル水和剤の鱗茎浸漬の効果試験」参照。

10.主要成果の具体的数字

図1 葉の症状と検出虫数(厚田村,8月)


図2 被害葉の推移


図3 葉内線虫数の推移


図4 鱗茎、根、土壌虫の線虫の推移


図5 半旬別降水量

12.成果の取扱い